読売ジャイアンツの2015年の先発ローテーションをFIPとLOB%を使って分析

初回投稿日時:2015/02/08 9:30
最終更新日時:2015/02/08 9:30

このページでは日本プロ野球の読売ジャイアンツの投手陣の分析をしています。

先発ローテーションでの起用が予想される選手を、2014年までの年度別成績などを元に分析しています。あくまでも前年までのデータに基づくもので、キャンプ、オープン戦での成績はあえて考慮していません。

また新人、新外国人は日本プロ野球での過去データがありませんので、対象から外しています。

なお、セ・リーグ6球団の先発ローテーションの分析は以下のページにそれぞれまとめています。

巨人 阪神 広島
中日 DeNA ヤクルト

続いて、東京読売ジャイアンツの主要な先発ローテ候補投手の分析です。

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ジャイアンツの先発ローテーションの主力候補を分析・予想

まずこの分析をしていく前に、FIPとLOB%の簡単な説明を記載しておきます。

  • LOB%(残塁率):LOB%が高いと残塁が多くなるため失点が少なくなり、逆に低いと残塁が少なくなり失点が多くなる。投手のがコントロールすることが難しい指標で、運の影響を受けやすい。投手のタイプに関わらず、多くの投手がリーグ平均前後に落ち着くとされていて、そこから大きく外れた場合は、翌年以降にその平均値に戻る傾向がある。MLBでは70%から72%、近年のNPBでは72%-75%程度。
  • FIP(Field independence Pitching):味方チームの守備力の影響を除外して、投手の実力を測るための指標で、与四死球、本塁打、奪三振、投球イニングを元に算出する擬似防御率。防御率よりもFIPが低ければ味方の守備によって自責点が増えていると考えられ、FIPよりも防御率が低ければ、味方の守備によって自責点が減っていると、一般的に考えられている。
  • FIP+:日本プロ野球全体の平均FIPよりもどれだけ傑出しているかを示す。平均を100で、100以上が平均以上となり、100より小さくなると平均以下となる。FIP+が120であれば平均よりも20%傑出していることになる。
  • ERA+:リーグ平均の防御率よりもどれだけ傑出しているかを示す。平均を100で、100以上が平均以上となり、100より小さくなると平均以下となる。ERA+が120であれば防御率がリーグ平均よりも20%傑出していることになる。

先発ローテ候補として西村健太朗、宮国椋丞、マイコラス、ポレダなどがいますが、参考となるデータが乏しいため、この分析では除外し、菅野智之内海哲也杉内俊哉大竹寛小山雄輝の5人を分析しています。

先発ローテーション1:菅野智之

菅野智之の年度別成績は以下の表のとおりとなっています。

Tomoyuki Sugano Stats 2014

2013年は防御率3.12/13勝6敗/WHIP1.15。2年目の2014年は防御率2.33/12勝5敗/WHIP1.10という成績で、MVPとなりました。最優秀防御率のタイトルも獲得したものの、成績としては、やや物足りない面があったためか、本人も受賞の際に、満足感を漂わせることはありませんでした。

2014年の菅野智之は防御率は3.12から2.33と向上しているのですが、FIPでみた場合には2.57から3.12に下落しています。

またNPB全体の平均FIPを上回っているものの、21%傑出(FIP+:121)しているだけで、絶対的なエースが残すようなFIPとは、まだ差がある状態です。

球界を代表するような絶対的なエースは、2013年の菅野智之のように平均を40%上回るようなFIPを、数年続けています。

菅野智之のFIPが低下した原因となっているのが奪三振率の低下(7.93→6.92)、被本塁打率の上昇(0.51→0.68)、与四球率の上昇(1.89→2.04)です。

LOB%(残塁率)という指標は高いほど失点が少なくなり、低いほど失点が多くなる傾向があるのですが、投手がコントロールすることが難しく、運や味方の守備などの大きく影響されます。

菅野智之は2013年はLOB%がリーグ平均よりも低かったのですが、防御率3.12だったのに対して、2014年はLOB%がリーグ平均よりも高めである上に、FIPが防御率よりも悪い数字になっています。

さらに先出の奪三振率、被本塁打率、与四球率など「投手が実力でコントロールできる要素が強い指標」が軒並み落ちていながらも、防御率は向上していますので、これらの指標を見る限りでは、防御率2.33はめぐり合わせも良く、味方の守備にも助けられた側面があったと推測されます。

ただ、FIP自体は防御率より悪いというだけで、FIP3.12は90イニング以上投げた両リーグの投手の中で10本の指に入りますので、NPBでトップクラスの実力を持つ先発投手であることは間違いありません。

しかし、球界を代表するようなダルビッシュ、田中将大、岩隈久志、金子千尋、前田健太らのようなレベルの投手に達するにはまだ物足りない面があります。

圧倒的な力量をもつエースは、リーグ平均のFIPよりも40%から50%以上を記録しますので、2015年に成長し、FIPの向上がともなった好成績を残せるか注目したいところです。

先発ローテーション2:内海哲也

内海哲也の年度別成績は以下の表のとおりとなっています。

Tetsuya Utsumi Stats 2014

ここ近年のジャイアンツのエースとして重責を担ってきた内海哲也ですが、2014年は144.2回で防御率3.17/7勝9敗/奪三振105/WHIP1.21と物足りない成績に終わってしまいました。

特に規格外の統一球が使用されていた2011年の防御率1.70/18勝5敗/WHIP1.08、2012年の防御率1.98/15勝6敗/WHIP1.15などの数字から比較すると物足りない面があります。

ただ、2011年と2012年の好成績は、飛ばない統一球に加えて、幸運にも恵まれていたと考えられる要素があります。

2011年は防御率1.70でしたがFIPは2.97と差が1.27もあります。さらにこのFIP2.97は、2011年のNPB全体の平均FIPと比較すると、わずかに1%上回る程度にどどまっています。そして運の影響を受けやすいLOB%は87.4%と非常に高い数字で、NPBの平均である73-75%を大きく上回っています。

内海哲也のLOB%は2013年と2014年にリーグ平均値に近づいたのですが、これはLOB%の性質上起こることで、これにともない、先の2年のような圧倒的な成績は残せませんでした。

飛ばない統一球は、三振でアウトを取る投手よりも、打たせてアウトをとるタイプの投手のほうが恩恵が大きくなるのですが、内海は後者のタイプである上に、残塁率を見る限り、内海にとってツイている年であったことも助けとなっての、好成績だったと言えます。

ただ、このことにより内海哲也が並以下の投手だという評価になるわけではありません。

防御率とFIPともにリーグ平均を上回る数字を残していて、キャリア全体のFIP3.31も良い数字です。これらの数字からも、安定した内容のある投球ができる実力の高い投手であることは間違いありません。

内海哲也は2011-14年の4年間に防御率こそシーズン毎に大きな変動があるものの、FIPはNPBの平均より1%から12%程度上回る範囲(FIP+:101-112)で推移していて大きな変動がありません。

そのため2014年は勝敗こそ7勝9敗となったものの、大きく実力が落ちているというわけではないと考えられます。

また、2015年には33歳となり、年齢による衰えも出始めるため、その面での不安はあるものの、ここ数年のFIPには衰えを感じさせるものはないため、急激に成績を落とすことはないと予想されます。

しかし、2011年と2012年のような数字は、いろいろな要素がうまく噛み合って生じた結果で、同様のパフォーマンスを期待するのは、やや過大と考えられます。

先発ローテーション3:杉内俊哉

杉内俊哉の年度別成績は以下の表のとおりとなっています。

Toshiya Sugiuchi Stats 2014

杉内俊哉は2005年から2010年の6年間に防御率2点台が4シーズンもあり、この期間で81勝をあげています。このようにある一定期間にわたって数字を残せたのは、杉内俊哉の投手としての実力が高かったからに他なりません。

その6年間では投手の実力を示す指標の1つであるFIPは2点台が5回と非常に安定していた上に、2006年を除いてNPB全体の平均的な投手よりも、34%から60%高いFIPを記録するなど、抜きん出た実力をキープしていました。

ところが統一球の問題が整理された後の2013年と2014年は防御率が3点台というだけでなく、FIPも3点台中盤という数字に低下してしまいました。

2013年は防御率3.35に対してFIPが3.62、2014年は防御率3.16に対してFIPが3.53と、いずれも防御率よりもFIPが悪い状態が続いています。

さらにこのFIPは、NPBの平均的な投手よりも、それぞれ1%(FIP+ 101)と7%(FIP+ 107)しか傑出していないという数字で、以前のような図抜けた数字ではありません。

落ちたと言っても平均的な投手を上回るレベルをキープしているのはさすがとも言えるのですが、34%から60%も傑出していた2005年から2010年よりは、力が落ち始めていると考えられる数字になっています。

巨人移籍後3年間の平均投球回数も158イニング程度と、ソフトバンク在籍時よりも、明らかに少なくなっていますので、年齢による緩やかな降下が続いている可能性が懸念されます。

2015年は34歳という年齢となりますし、4年契約の最終年ともなりますので、正念場を迎える1年となりそうです。

ただ、かつてのような数字を残せるかは疑問があるというだけで、いまだに実力は平均以上があると考えられるため、一定の成績を残すと予想されます。

先発ローテーション4:大竹 寛

大竹 寛の年度別成績は以下の表のとおりとなっています。

Kan Otake Stats 2014

大竹寛はキャリアの中でベストと呼べるシーズンの候補となるのが、2009年(185.2回/防御率2.81/10勝8敗/WHIP1.28)と2012年(144.2回/防御率2.36/11勝5敗/WHIP1.29)です。

しかし、2012年は飛ばない統一球が使用されていた時の成績のために、参考とはしにくいものがあり、2009年がキャリアベストの成績と考えられます。

その2009年は防御率2.81に対して、FIPは3.29となるなど、FIPのほうが悪くなっています。

またキャリア全体を見ても、FIPはだいたいリーグ平均、もしくは平均以下というシーズンが多くなっています。

規定投球回数に到達した7シーズンのうち大竹寛のFIPがNPBの平均的な投手を上回っているのは、2009年(FIP+:115)の1シーズンのみで、2012年と2013年が平均レベル(FIP+:100)となっている以外は、平均より下の数字しか残せていません。

つまり大竹寛はフルシーズンを投げた場合には、FIPという投手の実力、能力を測る指標においてはNPBの平均以下となるシーズンが多いというデータが残っています。

奪三振率はキャリア全体を通しても6.34と高くなく、特に近年5年間では5.32と低いため、自分の力で相手打線を封じ込めることはなかなかできず、アウトをとるのに、味方の守備に依存せざるをえません。

このような打たせてとる投手は、三振でアウトをとる投手よりも、飛ばない統一球の恩恵を受けやすく、実際に大竹寛は2011年が防御率1.71、2012年が2.36となっています。

幸いなことに巨人の内外野に守備はコールデングラブ賞級の選手が多いため、カバーしてもらえる可能性が高いものの、投手としての脆さがあることは否定できません。

ただ、巨人の場合は、菅野、内海、杉内に次ぐ4番手の位置づけであり、NPBの平均的な投手の力量はキープしていますので、その役割を担うことは十分に期待できる投手ではあると言えそうです。

先発ローテーション5:小山雄輝

小山雄輝の年度別成績は以下の表のとおりとなっています。

Yuki Koyama Stats 2014

澤村拓一がリリーフに回ったことで、先発投手陣がさらに高年齢化することが懸念される中で、期待されるのが2014年に93.1回を投げて、防御率2.41/6勝2敗/WHIP1.21という成績を残した小山雄輝です。

一軍での通算防御率が2.63であるのに対してFIPは3.21で、FIPのほうが悪く、LOB%(残塁率)もリーグ平均よりもやや高めのため、防御率通りの実力があるとまではいえませんが、先発5番手として期待するには十分なポテンシャルを持つと考えられる小山です。

小山雄輝の通算でのFIP3.21は、菅野智之の2.83や杉内俊哉の2.87には及ばないものの、内海哲也の3.31、大竹寛の4.03よりも良い数字となっています。

先発ローテでフルシーズンを投げ切ったことがありませんので、通算成績も割り引く必要があるものの、将来的には先発ローテの2番手から3番手になれる可能性を秘めていると考えられるため、2015年のパフォーマンスが注目されます。

仮に2015年にフルシーズンを先発ローテで投げきって、キャリア通算と同様のFIPを記録できるようであれば、菅野智之とともに巨人の先発投手陣の軸となっていく存在となる期待ができそうです。

総括

菅野智之がエースとしての階段を着実に登ってはいるものの、ダルビッシュ、岩隈久志、田中将大、金子千尋、前田健太クラスのエースとは、数字を見る限りまだ差があります。

ただ、より勝利数の積み上げを期待できる存在として菅野が成長しつつあることは大きな意味があります。

さらに、その周りを平均もしくは平均以上の力量を持つ投手4人が固める期待ができ、そこに新外国人2人と他の若い投手を競わせることができることは、巨人のアドバンテージの1つと言えそうです。

圧倒的な迫力があるとまでは言えないかもしれませんが、安定感層の厚みは随一と考えられ、優勝をするには十分な先発ローテと考えられます。

欲を言えば内海、杉内が急激に衰えてもおかしくない年齢にさしかかりつつありますので、数年先を見据えて若い投手の育成ができれば、というところになるのではないでしょうか。