阪神タイガースの2015年の先発ローテーションをFIPとLOB%を使って分析

初回投稿日時:2015/02/10 11:00
最終更新日時:2015/02/11 21:00

このページでは日本プロ野球の阪神タイガースの投手陣の分析をしています。

先発ローテーションでの起用が予想される選手を、2014年までの年度別成績などを元に分析しています。あくまでも前年までのデータに基づくもので、キャンプ、オープン戦での成績はあえて考慮していません。

また新人は日本プロ野球での過去データがありませんので、対象から外しています。

なお、セ・リーグ6球団の先発ローテーションの分析は以下のページにそれぞれまとめています。

巨人 阪神 広島
中日 DeNA ヤクルト

続いて、阪神タイガースの主要な先発ローテ候補投手の分析です。

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タイガースの先発ローテーションの主力候補を分析・予想

まずこの分析をしていく前に、FIPとLOB%の簡単な説明を記載しておきます。

【用語】

  • LOB%(残塁率):LOB%が高いと残塁が多くなるため失点が少なくなり、逆に低いと残塁が少なくなり失点が多くなる。投手のがコントロールすることが難しい指標で、運の影響を受けやすい。投手のタイプに関わらず、多くの投手がリーグ平均前後に落ち着くとされていて、そこから大きく外れた場合は、翌年以降にその平均値に戻る傾向がある。MLBでは70%から72%、近年のNPBでは72%-75%程度。
  • FIP(Field independence Pitching):味方チームの守備力の影響を除外して、投手の実力を測るための指標で、与四死球、本塁打、奪三振、投球イニングを元に算出する擬似防御率。防御率よりもFIPが低ければ味方の守備によって自責点が増えていると考えられ、FIPよりも防御率が低ければ、味方の守備によって自責点が減っていると、一般的に考えられている。
  • FIP+:日本プロ野球全体の平均FIPよりもどれだけ傑出しているかを示す。平均を100で、100以上が平均以上となり、100より小さくなると平均以下となる。FIP+が120であれば平均よりも20%傑出していることになる。本来は球場ごとの特性に拠る補正をかけますが、ここでは除外しています。
  • ERA+:リーグ平均の防御率よりもどれだけ傑出しているかを示す。平均を100で、100以上が平均以上となり、100より小さくなると平均以下となる。ERA+が120であれば防御率がリーグ平均よりも20%傑出していることになる。本来は球場ごとの特性に拠る補正をかけますが、ここでは除外しています。

先発ローテ候補としては金田和之、秋山拓巳、岩貞祐太、横山雄哉、石崎剛などがいますが、参考となるデータが乏しいため、この分析では除外し、能見篤史、メッセンジャー、藤浪晋太郎、岩田稔、岩崎優の5人を分析しています。

先発ローテーション1:能見篤史

能見篤史の年度別成績は以下の表のとおりとなっています。

Atsushi Nomi Stats 2014_1

飛ばない統一球が使用されていた2011年と2012年は除外すると、キャリアハイと言えるのは2009年の防御率2.62/13勝9敗/WHIP1.13となりそうです。

その2009年から2012年までの4年間のFIPは2009年が2.85(平均より33%上)、2010年が2.69(同50%)、2011年が2.27(同32%)、2012年が2.35(同26%)と高いレベルを維持して、日本プロ野球の平均を大きく上回り、エースと呼ぶにふさわしい力量を持っていたと考えられます。

ところが2013年は防御率2.69/11勝7敗/WHIP1.08と表面上の成績に大きな変化はなかったものの、FIPは3.43に低下し、NPB平均のFIPよりも6%傑出するところまで落ちていました。

この2013年はFIPが落ちているにも関わらず、防御率などが良かったのは、LOB%(残塁率)が81.4%と本人のキャリア全体の平均やリーグ平均よりも高かったことに助けられたと考えられます。

LOB%は投手が実力でコントロールすることが難しい数字で、平均値よりも大きく外れた場合には、翌年以降に平均値に戻る、揺り戻しが起こる傾向があります。

能見篤史は81.4%となった2013年の翌年となる2014年のLOB%は、70.5%と平均値を下回る数字で、2013年の分を取り返すかのような揺り戻しが起こっています。

その結果、投手としての実力と能力を示す指標であるFIPでは3.43から3.37とほぼ横ばいであるにも関わらず、防御率は2.69から3.99に悪化してしまいました。

つまり2013年はそれまでよりやや力が落ちてきたが運にも助けられ成績が落ちなかったが、2014年は逆に運が良くなかったため、実力よりも悪い成績になったと考えられます。

2009年から2012年の4年間に比較すると、近年2年間は年齢による衰えもあるのか、FIPではNPB全体の平均よりやや上というところまで落ちてきています。

2015年は36歳という年齢であることを考えると、大きな上積みが期待しづらく、衰えの幅を小さくしていくことが焦点となってきます。

能見篤史は30歳から成績を上げた遅咲きの投手のため、年齢は35歳で10シーズンを経ていながらも、これまで投げてきた総イニング数は1156.2回と多くはありませんので、勤続疲労による衰えは出にくいと予想されます。

そして2013年から2014年に防御率は低下したものの、FIPは横ばいで、奪三振率は6.33から8.03に回復し、被本塁打率も0.90から0.85に改善されているため、急激な衰えが生じてはいないように見受けられます。

そのため2015年は36歳と年齢は高くなり急激な衰えに直面する可能性はあるものの、直近2年に近い成績は期待できるのではないかと予想されます。

先発ローテーション2:メッセンジャー

メッセンジャーの年度別成績は以下の表のとおりとなっています。

Randy Messenger Stats 2014_1

近年4年間の勝敗は52勝36敗と、チームの勝ち頭となっているのがランディ・メッセンジャーです。

メッセンジャーは近年の4年間の防御率が2.88(2011年)、2.52(2012年)、2.89(2013年)、3.20(2014年)と推移しています。

32歳となった2014年に防御率が3点台に落ちているものの、投手の実力・能力を示す指標の1つであるFIPは2.57(2011年)、2.36(2012年)、2.79(2013年)、2.83(2014年)と横ばいに近い推移をしていています。

さらに、飛ばない統一球の問題が整理された後の2013年と2014年はそれぞれNPB平均のFIPよりも30%(FIP+ 130)、33%(FIP+ 133)も傑出するなど、セ・リーグトップクラスのため、能力や実力の衰えが起きているとは考えられません。

飛ばない統一球の恩恵は三振でアウトをとる投手よりも、打たせてアウトをとる投手のほうが大きいと考えられるのですが、メッセンジャーは前者に該当するため、統一球が規格値に戻ることにより、その能力の高さが際立つ結果となっています。

気になるのは、球速とボールの力に頼るタイプのため、年齢による衰えが大きくなりやすいことです。2015年は33歳と微妙な年齢にさしかかるのですが、それにも関わらず、キャンプに体重オーバーで現れているという現状が気になるところです。

ただ、元々の実力が高く、2014年もFIPがセ・リーグで3番目になるなど高いものがありますので、仮に年齢による衰えが生じたとしても、平均よりやや上、もしくは平均程度にはなると予想されます。

そのため例年通りの成績、もしくはリーグ平均よりやや上の成績は期待できそうです。

先発ローテーション3:藤浪晋太郎

藤浪晋太郎の年度別成績は以下の表のとおりとなっています。

Shintaro Fujinami Stats 2014_1

2013年は137.2回を投げて防御率2.75/10勝6敗/WHIP1.18の成績を残し、2年目は163.0回で防御率3.53/11勝8敗/WHIP1.31で、高卒2年目としては優秀な成績を残しています。

プロ2年目は勝ち星とイニング数は増えているものの、防御率やWHIPなどは落ちています。

しかし、数字の中身を見れば、投手としての実力や能力は高まっていると考えられます。

投手の実力や能力を測る指標であるFIPは2.99から2.77に向上しています。

さらに2014年のFIP2.77は、防御率よりも0.76も良いため、味方守備に足を引っ張られた可能性が否定できません。そして運に大きく左右され、低いと失点が多くなるLOB%(残塁率)は67.4%とリーグ平均より低いため、運にもあまり恵まれていたと言えない2014年でした。

LOB%は平均値を大きく外れた場合には、翌年以降に揺り戻しのように平均値に近づくように数字が変動する傾向があるため、藤浪晋太郎は2015年以降にLOB%の数字が高くなり、失点が減る可能性があると考えられます。

FIP2.77は、2014年の日本プロ野球の90イニングを投げた投手の中で金子千尋、大谷翔平、則本昂大に続く4番の数字で、前田健太、メッセンジャー、菅野智之を上回り、平均的な投手よりも36%も傑出しています。

さらに奪三振率は8.24から9.50に、被本塁打率は0.65から0.33に向上していて、投手として打者を封じ込める能力は向上していると考えられるため、2015年の藤浪晋太郎の活躍が期待されます。

リーグを代表するような投手はFIPで平均より30%以上傑出したシーズンを3シーズン以上続けていますが、藤浪晋太郎がその階段を登り始める可能性がありそうです。

先発ローテーション4:岩田 稔

岩田稔の年度別成績は以下の表のとおりとなっています。

Minoru Iwata Stats 2014_1

2014年は9勝8敗と二桁勝利には届かなかったものの、148.2イニングを投げて防御率は2.54とセ・リーグ2位になりました。

焦点は2015年にこのパフォーマンスを維持できるか?ということになります。

2014年は防御率2.54である一方で、投手の実力を示す指標とされるFIPは3.48で、防御率よりも0.94も悪い数字になっています。

そのため守備にも大きく助けられての好成績だったことが否定できません。

そして運に左右されるLOB%(残塁率)がリーグ平均(72.4%)よりも高く、本人のキャリアの中でも一番高い数字となった78.8%になるなど、運にも助けられて、失点が少なくなった面があります。

2014年は防御率こそ良いものの、FIPそのものはリーグ平均から8%程度傑出しているだけで、大きく実力が向上したわけではありませんので、普通に考えれば2015年は成績が低下すると考えられます。

ただ、2014年よりも成績が低下する可能性があるだけで、FIPがリーグ平均以上(FIP+が100以上)となっているシーズンが多く、投手としての実力は高いと考えられるため、健康でさえあれば、先発ローテを守って、一定の成績を残すことが期待できます。

阪神は先発ローテの前3人が安定した実力を持っているため、岩田稔は4番手を務めることになり、その役割には十二分な実力を持っているため、その点は阪神の強みとなりそうです。

先発ローテーション5:岩崎 優

岩崎優の年度別成績は以下の表のとおりとなっています。

Suguru Iwasaki Stats 2014_1
2014年がシーズン1年目であり、フルシーズンを投げ切っていないのですが、90イニングを投げて防御率3.50/5勝4敗/WHIP1.23という成績を残しました。

フルシーズンを投げていないこと、規定投球回数に到達していないこと、プロとして1シーズンしか過ごしていないこと、などがの要素あるため”参考程度”という意味あいが強いのですが、FIPは3.09と90イニング以上を投げた投手の中では9番目という良い数字を残しています。

奪三振率(9イニングあたりの奪三振数)は際立って高くないものの7.60と及第点の数字で、被本塁打率(9イニングあたりの被本塁打数)は0.60と低く、与四球率(9イニングあたりの与四球数)は2.60と制球面でも大きな不安がないなど、投手としてのバランスが良く、能力は高いと考えられます。

問題は研究される2シーズン目に同様のパフォーマンスが出来るかどうかで、仮に2015年にFIPやこれらの数字で同程度、もしくはやや落ちる程度の数字を残せるようであれば、将来的に藤浪晋太郎と左右のエースになることが期待できそうです。

まだ1年しか投げていないので、参考程度にしかならないのですが、ポテンシャルは感じさせる岩崎優です。

総括・まとめ

阪神の場合は1番手から4番手まである程度計算できる投手が揃っていて、メッセンジャーの体重増による影響がなければ、1番手から3番手の強さは、オリックス、巨人と並ぶものがあります。

その一方で、先発ローテの後半である5番手と6番手が課題となっています。

その候補として岩崎優、金田和之、秋山拓巳、2013年と2014年のドラフト1位の岩貞祐太、横山雄哉、ドラフト2位の石崎剛らが争うようですが、個人的に注目しているのは岩崎優です。

秋山拓巳はこれまでの一軍での成績や数字の中身を見る限り、かなりの成長がないと難しそうな印象です。

金田和之は先発が2試合しかなく、リリーフとしての成績しかないため参考にしにくい面があるのですが、防御率3.61/FIP3.87と先発6番手になりうるポテンシャルはあると考えられますので、注目したい1人です。

またドラフト1位コンビは蓋を開けてみないとわかりませんが、横山雄哉は前評判も高いためキャンプ、オープン戦での内容次第では、面白くなりそうです。

オフは2年連続で思ったような補強はできなかった阪神ですが、それがかえって良い方向に働いているようにも見受けられます。

結果として岩崎優のようなポテンシャルを持つ投手を発掘することができているからです。

金子千尋などの獲得など、このオフの補強自体は失敗だったとなりますが、数年先を考えれば、逆の評価になる可能性もあります。

5番手、6番手を固定できればベストですが、そうできない場合には、調子の良い投手を試すことで、育成しながらローテを埋めることもできる可能性があります。

首脳陣がうまく起用すれば、十分に機能し、両リーグでもトップクラスの先発ローテとなるのではないでしょうか。