松坂大輔は日本で再び結果を残すことができるのか?メジャーと日本でのデータから検証

2006年以来の日本復帰となった松坂大輔ですが、多くのファンの関心事は『日本プロ野球で結果を残すことができるのか?』ではないでしょうか。

メジャーで通算56勝しているものの、直近の2年間では6勝しかできていないこともあり、その実力の衰えを指摘する声はなかなか消えません。

またキャンプが始まると、練習内容、投球フォーム、体型などで「やはり活躍は難しいのではないか」との評価も聞こえてきます。

そこで、これまでの松坂大輔の日本プロ野球(NPB)とメジャーでのデータなどを見ながら、活躍できるのかどうかを分析していきたいと思います。

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渡米前の松坂大輔の年度別成績による分析

これから様々な分析をしていくにあたって使用される用語の簡単な解説を記しておきたいと思います。

【用語】

  • LOB%(残塁率):LOB%が高いと残塁が多くなるため失点が少なくなり、逆に低いと残塁が少なくなり失点が多くなる。投手のがコントロールすることが難しい指標で、運の影響を受けやすい。投手のタイプに関わらず、多くの投手がリーグ平均前後に落ち着くとされていて、そこから大きく外れた場合は、翌年以降にその平均値に戻る傾向がある。MLBでは70%から72%、近年のNPBでは72%-75%程度。
  • FIP(Field independence Pitching):味方チームの守備力の影響を除外して、投手の実力を測るための指標で、与四死球、本塁打、奪三振、投球イニングを元に算出する擬似防御率。防御率よりもFIPが低ければ味方の守備によって自責点が増えていると考えられ、FIPよりも防御率が低ければ、味方の守備によって自責点が減っていると、一般的に考えられている。
  • FIP+:日本プロ野球全体の平均FIPよりもどれだけ傑出しているかを示す。平均を100で、100以上が平均以上となり、100より小さくなると平均以下となる。FIP+が120であれば平均よりも20%傑出していることになる。MLBのデータではさらに球場ごとの特性に拠る補正をかけますが、NPBのデータでは除外しています。
  • ERA+:リーグ平均の防御率よりもどれだけ傑出しているかを示す。平均を100で、100以上が平均以上となり、100より小さくなると平均以下となる。ERA+が120であれば防御率がリーグ平均よりも20%傑出していることになる。MLBのデータではさらに球場ごとの特性に拠る補正をかけますが、NPBのデータでは除外しています。

松坂大輔の日本プロ野球での年度別成績は以下の表のとおりとなっています。

Daisuke Matsuzaka NPB Stats 2014

プロ入り後1年目に防御率2.60/16勝5敗/WHIP1.17と素晴らしい成績を残しましたが、FIPは3.74と防御率よりも1.14も悪く、さらにLOB%が82.2%と非常に高いため、運と味方守備に助けられたことも重なっての好成績でした。

しかし、高卒1年目の投手がFIPでNPB全体の平均を7%も上回る(FIP+ 107)というのは驚異的で、プロとして平均を上回る実力もあってこその新人1年目での活躍であったことは間違いありません。

LOB%(残塁率)は率が高いと残塁が多くなるため失点が少なくなるのですが、運にも大きく左右されるため投手がコントロールすることが難しいので、投手のタイプに関わらず、平均の範囲内におさまる傾向があります。

そのため平均値を大きく外れた年があると、その翌年以降に平均値に近づくような揺り戻しが起こります。

松坂は1年目にLOB%が82.2%と高かったことの揺り戻しが2年目に起こり、68.2%と低くなった結果、FIPは2年目に3.97と前年の3.74大きく変わらなかったにも関わらず、防御率は3.97に低下しました。

勝敗や防御率はどうしても味方の守備や打線の援護など運にも左右されるため、投手の実力がそのまま現れないことが多くあります。

そのためプロ入り後の4年間(1999年から2002年)では防御率や勝敗には年ごとにバラつきがあるもの、FIPは3.74、3.97、3.96、3.86とあまり変わっていませんでした。

その松坂大輔が内容の伴った名実ともに球界のエースとなったと考えられるのが2003年以降の4年間です。

防御率は2.83、2.90、2.30、2.13と高いレベルで推移するだけでなく、投手の実力を示すFIPは2.87、3.03、2.59、2.31と高水準を保っていました。

さらにこのFIPは4年連続でNPB平均の投手を50%以上上回る(FIP+ 153/150/158/158)など圧倒的で、日本プロ球界のエースと呼ぶに相応しい状態でした。

特に渡米直前の2006年は防御率2.13/FIP2.31に加えて、与四球率(9イニングあたりの与四球数)は1.64と低く、奪三振率(9イニングあたりの奪三振数)が9.66と高いため、K/BB(奪三振÷与四球)5.88と圧倒的な数字を残していましたので、ポスティングで巨額の金額が動き、メジャー移籍を果たすことになりました。

メジャー移籍後の松坂大輔の年度別成績による分析

メジャー移籍後の松坂大輔の年度別投手成績は以下のとおりとなっています。

Daisuke Matsuzaka MLB Stats 2014

メジャー移籍後1年目に防御率4.40/15勝12敗/WHIP1.32という成績を残し、2年目の2008年に防御率2.90/18勝3敗/WHIP1.32という成績で優勝に貢献するだけでなく、サイヤング賞の投票でも4位に入りました。

ただ、この2年目の成績は打線の援護、味方の守備、運に助けられた面が大きくありました。

投手の実力を示すFIPは4.23から4.03と大きな向上がないにもかかわらず、防御率は1.50と前年より大幅に向上しました。

さらに防御率2.90もFIPは4.03で1.13も悪く、味方の守備に助けられた考えられる数字で、LOB%(残塁率)はMLB平均の72-73%と本人の平均である72%を大きく上回る80.6%で、運にも助けられていました。

2009年はWBCの登板のために早く仕上げたことなどの影響もあり、故障者リスト入りを繰り返し、その翌年の2010年には153.2回を投げて9勝をあげるも、防御率4.69/WHIP1.37と不本意な成績に終わります。

しかし、この年は防御率よりもFIPが0.64も良いため、味方の守備に足を引っ張られていたと考えられる上に、LOB%は前年の2年の揺り戻しが起こり67.2%と平均値を大きく下回るなど、運にも恵まれていませんでした。

表面の成績は低下したたものの、2010年のFIPは4.05と好成績を残した2008年のの4.03とほとんど差がありませんので、実力に大きな変動があったわけではなく、運に大きく左右されて成績が低迷することにもなりました。

その後の、2011年と2012年の2年間はトミー・ジョン手術を受け、大半がリハビリに費やされましたので、やや参考にしにくい成績です。

メッツ移籍後の2年間(2013-14年)は防御率4.42、3.89と推移しましたが、FIPは4.32、4.21とやや落ちはしたものの、2007年から2010年までと大きな差がない水準をキープしています。

2014年は先発とリリーフの両方を務めた松坂大輔ですが、ブルペン待機をしながら、故障者が出た時に急遽先発が決まるという調整がしにくい1年でした。その中で先発としての成績は46.2回で防御率4.24/2勝3敗/FIP3.88というものでした。

この防御率は40イニング以上を投げた先発投手が196人いる中で128番目、FIPは106番目となっています。この順位では良い成績はないではないかと考えるかもしれませんが、30球団もあり平均で10人前後各チーム先発していることを考えれば、トップクラスではないものの、悪い順位ではありません。

松坂大輔の先発投手としてのFIP3.88は、防御率3.54/16勝6敗の成績を残した元中日のチェン・ウェインの3.89とほぼ同じですし、マイク・リーク、ダグ・フィスター、ヨバニ・ガヤードなどメジャリーグの先発ローテの3番手クラス以上の投手よりも良い数字となっていますので、メジャーで投げ続けるのに、十分なクオリティを松坂大輔は維持していたことがわかります。

2014年は制球面で難がある上に、年齢が34歳となることもあり、アメリカに残ったとしても、先発投手としてメジャー契約のオファーが合った可能性は低かったのは間違いありません。

しかし、2014年同様に先発兼ロングリリーフであればマイナー契約は確実に提示され、場合によってはメジャー契約となっていた可能性もあったと考えられます。

メジャーでは先発ローテを5人で回しますが、故障者などが必ず出るため、どのチームも10名前後を先発登板させています。

そのため多くのチームは先発とリリーフの両方ができるベテランを必要としていますので、松坂もその役割を受入れていれば、メジャーのマウンドに立てたのではないかと考えられます。

本人が先発投手であることに対してのこだわりもあり、日本を選んだのであって、アメリカで全くオファーがないから帰ってきたというレベルに落ちていたわけではありません。

松坂大輔が日本プロ野球で二桁を勝てる実力があると考えられる3つの理由

結論から先に述べると、2014年のデータやこれまでの成績の推移を見る限り、2015年に活躍が期待できるのではないかと予想しています。その理由は以下の3つです。

(1) FIPで見ると投手としての実力は大きく落ち込んでいない

これまで見てきたように、2014年に投手の実力を示すFIPは大きな落ち込みもなく、かつメジャーでも十分なレベルを維持していて、全盛期ほどではないというだけで、一定の実力をキープしています。

2014年に日本移籍後1年目に防御率3.89/FIP3.03という成績で、規定投球回数に到達した日本プロ野球の投手の中で8番目に良い数字を残したのが日本ハムのルイス・メンドーサです。

メンドーサは7勝しかできませんでしたが、2014年にLOB%が平均より低い69.3%と運に恵まれず、防御率がFIPが0.86も良いことからわかるように、味方守備や打線の援護にも恵まれなかっただけで、力量的には2桁を十分に勝てる投手です。

そのルイス・メンドーサはメジャー通算のFIPは4.69で、日本移籍前の直近2年間のFIPは4.28と4.75となっています。FIPでの比較という限定されたものではありますが、松坂大輔はそのメンドーサのFIPよりも良い数字を直近の2年間でも、メジャー通算でも残しています。

このレベルの成績を残しているメジャーリーグの投手はなかなか日本には来てくれないことを考えると、黒田博樹ほどではないですが、松坂大輔は十分な実力をキープしていると考えられます。

(2) 球速に大きな落ち込みがない

球速は渡米直後よりも落ちてはいるものの、日本の先発投手としては十分な水準を2014年もキープしていました。

投球の球速や軌道などをトラッキングしているPitch FXのデータを元に集計・分析している「ブルックスベースボール」よると、松坂大輔の渡米後の球速の推移は以下のとおりとなってます。単位はキロです。

Daisuke Matsuzaka  Pitches 2014

渡米直後1年目のデータの正確性は怪しいのですが、それ以降に関してはしっかりとしたデータではないかと思われます。

松坂大輔は2014年の球速でも、フォーシームは最速152.6キロ、平均147.7キロ、ツーシームは最速153.4キロ、平均145.7キロ、スプリットは最速140.3キロ、平均130.3キロを記録したデータが残っています。

アメリカの粘土質の硬いマウンドと比較すると3キロから4キロほど落ちる可能性はありますが、それでも先発投手としては十分な球速ではないでしょうか。

(3) 球種別被打率が良くボールの質は悪くない

2014年に投げた球種はブルックスベースボールの集計によるとフォーシーム(.200)、ツーシーム/シンカー(.276)、スライダー(.243)、カーブ(.240)、カットボール(.139)、スプリット(.111)ですが、いずれも被打率が.300を下回っています。

与四球が多く、ランナーを背負うことが多かったため失点がある程度あったものの、奪三振率(9イニングあたりの奪三振数)も8.43と高く、どの球種も被打率も低いため、ボールの質自体は高いレベルをキープしていたと考えられます。

制球は良くなかったのですが、メジャーでは長打の圧力が段違いなことも影響を与えたと考えられます。ダルビッシュが「日本では失投がヒットになっていたが、こちら(メジャー)ではホームランになる」と語るほどの違いで、下位打線であろうと甘ければスタンドインさせるパワーを持っています。

そのメジャーに比較すれば、日本のプロ野球は一発の怖さが段違いに減ることは、否定出来ない事実です。

さらに日本プロ野球は、松坂がプレーしていた頃よりも本塁打数が減少しています。1999年から2005年にかけて、毎年10名以上が30本塁打以上で、しかも2001年は17名、2006年は18名もいたのですが、2014年はわずかに5名しかいません。

ヤフオクドームは改修により小さくなってしまいますが、パ・リーグは基本的に投手有利の球場が多く、一発のリスクが低いため、大胆な投球をしやすく、制球面でも改善されることが期待できます。

渡米前の成績やその時の姿と比較した場合に、物足りなく感じる人も少なくないとは思いますが、2014年のデータを見る限り、無残なレベルに落ちた状態で日本に出戻ってきたわけではないと考えられます。

かつてのような球速はないものの、それをカバーできる投手としての駆け引きのうまさなど、投手としてのレベルの高さが見られる登板が2014年のメジャーでも幾度かありました。

渡米前の日本最高レベルだった時と同様のものを求めるのは酷ですが、少なくとも2015年に二桁勝利以上という結果を残してくれるのではないかと予想しています。