ベースボールプロスペクタス(Baseball Prospectus)やファングラフス(FanGraphs)などが、チームの戦力、ロースター構成、得失点差、日程などを加味して、メジャーリーグ30球団のポストシーズン進出の可能性について日々データを更新しています。
様々なデータを加味してポストシーズン進出可能性について検討しているため、必ずしもその時点での勝敗、勝率、ゲーム差が反映されたものにならないケースも少なくありません。
ポストシーズン進出の可能性低いチームは7月末のウェーバー公示なしのトレード期限前に”売り手”となるわけですが、先の2つのサイトの予想をベースにしながら2015年のシーズン途中で売り手になりそうなチームをピックアップしていきたいと思います。
2015年シーズン途中にア・リーグで売り手チームになる可能性があるのは?
現地の2015年6月16日時点でのア・リーグのワイルドカードの順位と、ベースボールプロスペクタスとファングラフスのポストシーズン進出の確率をまとめた表は以下のとおりとなっています。
*D-GB:地区での首位とのゲーム差 WC-GB:リーグ内でのワイルドカード圏内までのゲーム差
*FG:ファングラフス *ベースボールプロスペクタス
興味深いのは34勝30敗で首位とは3.5ゲーム差で地区2位となっているツインズがファングラフスとベースボールプロスペクタスともに12-13%と低い評価になっていることです。
ただ、ツインズの戦力には穴があることや得失点差が良くないことなどが原因とはなっていると考えられるわけですが、実際のゲーム差は小さいため、どちらかと言えば、その足りない戦力を補強する方向に傾くと現時点では予想されます。
ホワイトソックスとアスレチックスはともに地区最下位に沈み、地区首位とのゲーム差も大きく、ア・リーグでもワースト3の勝率となっています。
その数字そのままに、ホワイトソックスはファングラフスが4.4%、ベースボールプロスペクタスが4.0%に、アスレチックスはファングラフスが7.0%、ベースボールプロスペクタスが6.0%という評価でかなり厳しい状況となっています。
そのため徐々にこの2チームが売り手になるという前提の話がチラホラと出始めています。ホワイトソックスもパドレス、カブス、レッドソックス、マーリンズと並んで比較的シーズンオフに動いたのですが、うまく機能していません。
個々の能力は高い選手が多く今季終了後にはジェフ・サマージャ、来季終了後にはアダム・ラローシュ、ジョン・ダンクスらがFAとなるため、ホワイトソックスが売り手になると決断すれば、声がかかることになりそうです。
アスレチックスも今季終了後にスコット・カズミアー、タイラー・クリッパード、ベン・ゾブリスト、エリック・オフラハティ、来季終了後にはアイク・デービス、ジョシュ・レディック、ジェシー・チャベスらがFAとなりますので、交換要員となる選手は多く抱えています。
難しい選択を迫られることになるのがレッドソックスです。ア・リーグ東地区は首位でも貯金が2桁にならない状況のため、チャンスが残されているものの、勝率自体はホワイトソックスを下回ってア・リーグで下から2番目となり、6月17日には勝率.418でリーグ最下位まで転落しています。
ラインナップのメンバーの顔ぶれは豪華なのですが、パフォーマンスがイマイチで結果につなげることができていません。
投入した資金を考えると容易には売り手にまわりにくいものの、これから1ヶ月で劇的に改善できなければ、昨年同様に売り手にまらわざるを得なくなります。
レッドソックスは今季終了後にマイク・ナポリ、シェーン・ビクトリーノ、クレイグ・ブレスロウが、来季終了後には上原浩治と田澤純一がFAとなります。
特にレッドソックスが売り手に回れば、上原と田沢への興味が多くなることは確実で、ナポリ、ビクトリーノ以外にも、外野手がだぶついていますので、トレード要員は豊富です。
レッドソックスはこれから1ヶ月でさらに負け越しが増えるようであれば、これらの選手を売ることを検討することになりそうです。
2015年シーズン途中にナ・リーグで売り手チームになる可能性があるのは?
現地の2015年6月16日時点でのナ・リーグのワイルドカードの順位と、ベースボールプロスペクタスとファングラフスのポストシーズン進出の確率をまとめた表は以下のとおりとなっています。
*D-GB:地区での首位とのゲーム差 WC-GB:リーグ内でのワイルドカード圏内までのゲーム差
*FG:ファングラフス *ベースボールプロスペクタス
ナ・リーグはア・リーグよりもポストシーズン進出の可能性という観点では、上位と下位がくっきりと分かれています。
すでにダイヤモンドバックス(FG:3.1%/BP:6.2%)、ブレーブス(FG:1.9%/BP2.8%)、レッズ(FG:0.8%/BP2.1%)、マーリンズ(FG:4.4%/BP:6.5%)、ロッキーズ(FG:0.3%/BP:0.9%)、ブリュワーズ(FG:0.1%/BP:0.1%)、フィリーズ(FG:0.0%/BP:0.0%)と7チームが一桁の可能性と予想されています。
このうちフィリーズは大規模な再建モードに移行していますので、コール・ハメルズ、ジョナサン・パペルボン、ライアン・ハワード、チェイス・アトリー、カルロス・ルイーズ、アーロン・ハラングらを、いかに高い値段で売るのかが焦点となっています。
ブレーブスは31勝34敗で地区首位とは4.5ゲーム差、ワイルドカードも4.5差と諦めるような状況ではありません。
しかし、2017年の真球場完成時に優勝というのが至上命題で、今年は小規模な再建の1年目という位置づけとなっています。
今季終了後にはトレードで獲得したファン・ウリーベ、1年契約のベテランFA選手であるピアジンスキー、ケリー・ジョンソン、ジョシュ・ジョンソン、移籍後ブレーブスで復調しているものの、来季で契約が切れるキャメロン・メイビンらも、チーム再建という目的からすると、プロスペクトと交換したほうが、ファームの層が薄いブレーブスにはメリットが大きいと考えられます。
微妙なバランスではあるのですが、シーズン開幕前にはクレイグ・キンブレルまでトレードに出しています。事実上のGMであるジョン・ハート野球運営部門社長は巧みなトレードを行っていますので、トレード期限前にさらに引き金を引く可能性はありそうです。
マーリンズはファングラフス、ベースボールプロスペクタスともに評価は低いのですが、トレード期限前には、さらに補強に動くというのが米メディアが掴んでいる情報のようです。
トミー・ジョン手術を受けたエースのホセ・フェルナンデスがどの程度の状態で復帰するかに、その動きは左右されることになりそうです。
ブリュワーズはすでにGMが再建モードの移行への可能性に言及していて、レッズとロッキーズはGMやオーナーは否定的ですが、ロースターの構成などからして再建モードへの移行が必要な時期に差し掛かりつつあります。
ブリュワーズでは今季終了後にFAとなるカイル・ローシュ、アラミス・ラミレス、ニール・コッツ、ジェラルド・パーラ、来季終了後にFAとなるカルロス・ゴメスあたりも候補となる可能性があります。
ロッキーズでは来季は相互の同意で更新となるオプションしか残っていないジャスティン・モルノー、来季終了後にFAとなるホルヘ・デラロサなどが候補となりますし、大規模な再建モードであればトロイ・トゥロウィツキーやカルロス・ゴンザレスもその対象となると予想する声もあります。
ダイヤモンドバックスはすでに昨シーズンからロースターを若い選手に切り替えてきているため、ベテランでの交換要員となると乏しく、候補の1人であったマーク・トランボはすでにトレードとなっています。
売り手になろうにも、あまりコマがないと考えられるダイヤモンドバックスで、強いてあげるとすれば来季はチームオプションとなっているジョシュ・コルメンター(SP)、来季終了後にFAとなるアーロン・ヒル(2B)、ジェレミー・ヘリクソン(SP)くらいとなりそうです。
レッズは年俸総額が上限に達しているため、今季終了後に主力選手がFAとなるため、ロースターの組み換えが必要な時期にさしかかっています。
今季終了後にFAとなるジョニー・クエト、マイク・リークの先発投手2人に、来季がオプションとなっているマーロン・バードは有力な候補で、場合によっては来季終了後にFAとなるジェイ・ブルース、アロルディス・チャップマンなどもトレード市場で名前が出る可能性があります。
パドレスもレッドソックスと同様に微妙なラインにあるチームですが、監督交代による効果がこの一ヶ月で劇的に生じないと、ジャスティン・アップトン、イアン・ケネディ、ショーン・ケリー、ブランドン・モローというような今季終了後にFAとなる選手もいるため、決断を迫られることになりそうです。
これらのポストシーズン進出の可能性は、日毎に変動しているため、この時点での予想が当たるわけではありません。また現時点で売り手になることが濃厚なチームもあれば、オールスター前後まで様子を見る必要があるチームもあります。
ですが、確率が低く予想されているチームで、かつ現時点で上位とゲーム差が離れつつあるチームは危険な状況にあり、売り手になる可能性が高いと考えられるのではないでしょうか。