なぜレッドソックスはエンカーナシオンに積極的でなかったのか?地元メディアがその理由を分析

Boston Redsox Top Catch

シーズンオフを迎えるにあたってデビッド・オルティーズを失ったボストン・レッドソックスが、エドウィン・エンカーナシオンの獲得に動くのではないかとの予想がありました。

デビッド・オルティーズの素晴らしい2016年の成績を完全に埋めることをできる打者というのは数少ないのですが、エンカーナシオンは多くの部分で補うことができるため、非常にフィットする選手だったので、そのような予想が浮上するのは自然なことでした。

しかし、そのような周囲の予想に反してレッドソックスのフロントは大物野手の獲得に動くことには慎重な姿勢を貫いていました。そしてその言葉どおりに大きな投資を野手には行わず、ミッチ・モアランドに1年550万ドルを費やしたにとどまっています。

資金力においては不安がないレッドソックスのため地元メディアの中には、「ぜいたく税を気にして、必要な投資を行っていない」と批判的な声もありました。

しかし、レッドソックスの現状とこれから数年のロースター、ファームの状況なども考えると、このような方針を選んだ理由が理解できることをボストン・グローブ紙のALEX SPEIER氏が”Why didn’t the Red Sox pursue Edwin Encarnacion?”という記事で指摘しています。

とても素晴らしい分析記事なのですが、長いためその内容を要約して紹介します。

相場から値段が下がっていたエンカーナシオン(3年6000万ドル)に手を出さなかった理由を大きく2つにわけ、さらに2つ目の理由をさらに3つに細分化して以下のように分析しています。

1. プロスペクトの層が薄くなりドラフト指名権を失いたくなかった

プロスペクトをトレードで放出し、ハイレベルの選手の層が薄くなったため、1巡目指名権を失いたくなかった。契約に500万ドルは必要だがメジャーで6年コントロールできること、FA選手に比較すれば年俸が安いことなど、将来を考えると手放せない。

2. ぜいたく税の1億9500万ドル以内におさえてリセットしたかった

ドラフト指名権の問題は、このぜいたく税の次にくる問題。エンカーナシオンを獲得していたら、少なくとも1000万ドルは超過し、その50%がぜいたく税となっていた。

a) 2017年も超過するとレッドソックスは3年連続となり超過分の40-50%のぜいたく税を支払うことになる。エンカーナシオンと契約すれば実際にはさらに500万ドルは負担することになる。

b) それ以上に重要なのは税率を一旦リセットすること。一度ぜいたく税の基準内に抑えれば、次に超過した時には20%、2年連続で30%で済むようになる。

ロースターを見ると大型契約で数年で終了するものはなく、ムーキー・ベッツ、ザンダー・ボガーツ、ジャッキー・ブラッドリーらが年俸調停権を獲得し、年俸が急上昇することになり、クリス・セールも年俸が増えていく。そのため2018年と2019年にぜいたく税の基準内におさめることは事実上不可能なため、2017年に一旦基準を下回る必要がある。

2019年にデビッド・プライスが7年2億1700万ドルの残契約をオプトアウトしたり、ハンリー・ラミレスのオプションが自動更新されなければ、2019年にぜいたく税をパスできる可能性はあるが、2018年の超過はほぼ確実な状況。そして2018-2019年シーズンオフのFA市場が豪華な顔ぶれとなるため、2019年は大きくぜいたく税のラインを超過する可能性が高い。

C) 新労使協定では2017-18のクオリファイング・オファーを拒否したFA選手と契約した場合に新たなペナルティが課されることに。

  • ぜいたく税の基準を超過したチーム:2番目と5番目のドラフト指名権を喪失、100万ドルのインターナショナル契約の枠を失う。
  • ぜいたく税の基準を超過していないチーム:2番目のドラフト指名権喪失、50万ドルのインターナショナル契約の枠を失う。

2017年にぜいたく税の基準以内におさめておけば2017-18シーズンのFA市場でクオリファイング・オファーを受けた選手を獲得しても、アマチュア選手獲得において失うものを最小限にできる。

こういった事情が背景にありレッドソックスはエンカーナシオンの獲得に本腰を入れることはなかったと分析しています。

さらに内容を整理していきます。

レッドソックスはデーブ・ドンブロウスキー社長体制になってからクレイグ・キンブレル、ドリュー・ポメランツ、そしてこのオフにはクリス・セール、タイラー・ソンバーグらの獲得によって多くのプロスペクトを放出しました。

特にクリス・セールのトレードではMLB全体でも3本の指に入る評価を受けていたヨアン・モンカダまで放出したため、MLBトップクラスと評価されていたファームの層が薄くなりました。

クオリファイング・オファーを拒否していたエンカーナシオンを獲得した場合には、1巡目指名権を失いファームを充実させることは難しくなるため、レッドソックスはまずはそれを避けたかったのが理由として上げられます。

そして2番目にはぜいたく税の基準内に抑えることで(1)翌年のぜいたく税500万ドル程度を削減できる、(2)ぜいたく税の基準を50%からリセットして次回に超過しても20%と低い税率にできる、(3) 2017-18シーズンのFA補強で失うアマチュア選手獲得の枠を最小限にできる、というメリットがレッドソックスにあります。

もちろんレッドソックスも無駄な資金は使いたくありませんので、ぜいたく税を回避したいという思いがあることは間違いありません。ただ、ワールドシリーズ制覇を果たせなくても、そこまで進出すればぜいたく税分をペイすることは容易なマーケットとファンベースを持っています。

そのためレッドソックスにとってより重要なのは層が薄くなったファームを再び厚くするための枠を多く確保しておくこととなります。

アマチュア選手の獲得はドラフトにしてもインターナショナルFAの選手の契約にしても、ある程度の資金はいるもののFA選手に比較すれば安いため、ファームに良い選手を抱えていることは、長期的な観点において非常に重要です。

2017年にぜいたく税の基準内に抑えておけば、2017-18シーズンオフにFAとなるジョナサン・ルクロイ、カルロス・サンタナ、エリック・ホズマー、J.D.マルティネスといった選手がクオリファイング・オファーを拒否していたとしても、獲得する際には失うのは「2番目の指名権とインターナショナル契約の枠50万ドル」に抑えることができます。

理想を言えば2018年にぜいたく税のラインを下回ってクレイトン・カーショー、ジョシュ・ドナルドソン、マニー・マチャド、ブライス・ハーパーらがFAとなる見込みの2018-19シーズンオフに大金を注ぐことがベストです。

しかし、2018年はすでに1億3000万ドルがロックされている上に、ザンダー・ボガーツ、ジャッキー・ブラッドリー、ムーキー・ベッツ、スティーブ・ライト、エドゥアルド・ロドリゲス、クリスチャン・バスケス、ブレイク・スワイハートらが年俸調停権を有する状況のため、1億9700万ドルのライン以内に抑えるのは難しいと予想されます。

そのためアマチュア選手の獲得枠の喪失を最小限にとどめながら長期的な観点で戦力を確保し、なおかつぜいたく税の税率を抑えて2018-19シーズンオフに大型補強ができる準備をするには、この2017年で年俸総額を抑制することが必要だったということです。

そういった事情を踏まえると、先発ローテの層を薄くした上に、大きな見返りが得られなかったにも関わらず、クレイ・バックホルツをトレードして1350万ドルを削減することを選んだのも納得できるものがあります。

またこのような事情があることを考えれば、2017年シーズン中に補強を行うとしても年俸の高い選手をトレードで獲得する可能性も低そうです。

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