メジャーリーグの2016年シーズンではウェーバー公示なしのトレード期限が7月31日ではなく8月1日に設定されています。
その期限までいよいよ一ヶ月となりポストシーズンを狙うチームと、それを諦めて選手を売り払うチームの動きが活発化する時期となってきました。
その中で、移籍に関する情報の正確さと多さで知られる前CBSスポーツの記者で、現在はFanRag Sportsに所属しMLB NETWORKの番組にも出演しているジョン・ヘイマン記者が、”Heyman: Yankee intrigue over trade gap, A-Rod”というタイトルの記事で先発投手の補強に動いているチームとして以下の9球団を上げています。
They(Orioles) have some company in the starting pitching market. Other teams looking at starters include the Red Sox, Dodgers, Tigers, Rangers, Blue Jays, Astros, Mariners and Yankees … Adam Jones has started to rake, enhancing the best offense in baseball.
その9球団の現状などを見ていきたいと思います。
トレード市場で先発投手を探している9球団の現状
ジョン・ヘイマンが先発投手の補強に動いていると伝えたチームは以下のとおりとなっています。
- ボルティモア・オリオールズ
- ボストン・レッドソックス
- ロサンゼルス・ドジャース
- デトロイト・タイガース
- テキサス・レンジャーズ
- トロント・ブルージェイズ
- ヒューストン・アストロズ
- シアトル・マリナーズ
- ニューヨーク・ヤンキース
ジョン・ヘイマン記者の情報に加えて、他のメディアの情報も加えて各チームの現状を見ていきます。
1. ボストン・レッドソックス
エースのデビッド・プライス(防御率4.74)本人も不調を認める現状で、リック・ポーセロ、スティーブン・ライト以外は防御率4点台以上の先発投手ばかりのため、先発陣の防御率4.79と悪く両リーグ22位。今年だけのレンタル投手ではなく、数年先もローテを任せられる投手を探していると考えられていて、アスレチックスのソニー・グレイ、ブレーブスのフリオ・テヘランの名前が頻繁に報じられています。
2. ボルティモア・オリオールズ
首位を走っているため隠れがちなのですが、レッドソックス以上に乱れています。クリス・ティルマンが一番良い防御率ですが、それでも3.52とエースとしては物足りない数字で、それに続くのがケビン・ゴーズマンで防御率3.93、それ以外の先発投手の防御率は4.80よりも悪い数字しか残せていません。オリオールズの先発投手陣は防御率4.92でMLB全体では25位とかなり下位で、打線におんぶに抱っこの状態。
3. ロサンゼルス・ドジャース
先発投手陣の防御率3.72は両リーグ7位と良いものの、465.0イニングのうち121.0イニングを投げて防御率1.79のカーショーと92.2回で防御率2.85の前田健太によるところが大きく、ローテに残っているカズミアーは防御率4.67と他の投手は不安定。トッププロスペクトで期待のフリオ・ウリアスは防御率4.09と強烈なインパクトまでは残せず、オールスター明けにはイニング制限がかかる見込み。柳賢振、ブランドン・マッカーシー、アレックス・ウッド、ブレット・アンダーソンはいずれも復帰は見込まれるもののまだ未知数。
4. デトロイト・タイガース
ルーキーのマイケル・フルマーが11試合63回2/3で防御率2.40/7勝2敗/奪三振60/WHIP1.16と活躍しているものの、それ以外は不安定な状態。オフの補強の目玉の一人だったジョーダン・ジマーマンは防御率3.81、エースであるべきジャスティン・バーランダーは防御率4.30、FAでシーズンオフに獲得したマイク・ペルフリーは防御率5.02。アニバル・サンチェスは防御率6.71/WHIP1.65で先発ローテから外されるなど、質と量ともに不足していて、先発投手陣の防御率4.71は両リーグ20位になっています。今年勝ちに行く補強をシーズンオフにしていますので、トレード期限前も活発に動く可能性があります。
5. テキサス・レンジャーズ
先発投手陣の防御率3.62は両リーグ6位と良いものの、先発ローテのうちダルビッシュ、ルイス、ホランドの3人を欠く状態で、10月のポストシーズンを考えると健康面で不安が残ります。そのためすでに補強に動いていてレイズのマット・ムーアに興味を示しているとの情報があります。
6. トロント・ブルージェイズ
先発投手陣の防御率3.82が両リーグ8位と良いものの、アーロン・サンチェス(防御率3.08)にイニング制限をかける予定で、その後のバックアップがドリュー・ハッチソンの一人と少ないため、層を厚くする補強が必要な状況となっています。
7. ヒューストン・アストロズ
先発投手陣の防御率は4.33でメジャー全体で14位と悪くはないものの、ポストシーズンを狙うチームとしてはもうひと押しが欲しい状態となっています。ダグ・フィスターは防御率3.36と期待に応えているものの、昨年の躍進の立役者となったコリン・マクヒュー(防御率4.58/WHIP1.44)とダラス・カイケル(防御率5.13/WHIP1.42)が不振で、安定感を欠いている状態で、打線は機能しているため、先発投手を探していると報じられています。
8. シアトル・マリナーズ
先発陣の防御率は4.25で11位と悪くはないのですが、シーズン当初に比較すると序盤で打ち崩されることが増えています。フェリックス・ヘルナンデスが故障離脱し、まだ正式な復帰の時期は明らかにはなっていません。DLから復帰したばかりのウェイド・マイリーは炎上し、岩隈もここ数年では一番安定感を欠き、ネイサン・カーンズはブルペンにまわり、ジェームズ・パクストンも好不調の波が大きい登板が続いています。現時点ではタイファン・ウォーカーがヘルナンデスに次ぐ成績を残しているものの、先発4番手と5番手に不安が残るため補強を必要としています。
9. ニューヨーク・ヤンキース
売り手になるとの見方が根強いですが、トレード期限前に補強に動く場合には、ターゲットは両リーグ18位の防御率4.71となっている先発投手陣のテコ入れとなります。
サバシアは防御率3.17、田中将大は同3.35ですが、イオバルディは防御率5.19、ピネダは5.51、ノバは5.37と5点台の投手ばかりとなっています。期待されていたセベリーノは防御率7.46とマイナー降格した後も、すぐに昇格できるような状態にはなっていないと報じられています。
これらの球団のうち大型トレードを成立させることが出来るだけのプロスペクトを抱えているチームは、レッドソックス、レンジャーズ、ドジャース、アストロズとなっていますので、これらのチームを中心に繰り広げられるトレード市場での先発投手の争奪戦となりそうです。