カッターとスプリットが原因?肘の故障がMLBで増えている理由

MLBが開幕して2週間あまりが経過しました。

スプリング・トレーニングが開始してからこの開幕直後まで、多くの主力級の投手がトミー・ジョン手術を受ける事態に追い込まれています。

スプリング・トレーニング開始から2014年4月15日までにトミー・ジョン手術を受けることになった主な投手には以下のような投手がいます。

  • クリス・メドレン(ATL)
  • ブランドン・ビーチー(ATL)
  • ジャロッド・パーカー(OAK)
  • パトリック・コービン(ARI)

メドレン、パーカー、コービンはいずれもチームのトップスターター、エース格の投手で、離脱することが決定した時には、いずれも大きく報道されていました。

他にもパイレーツのジェイソン・タイヨンなどマイナーのプロスペクトでもトミー・ジョン手術となる投手が少なくありません。

球数制限など日本より多くの制限をかけて肘や肩を守っているはずのMLBですが、日本よりもはるかに多くの投手が肘の靭帯を損傷して、トミー・ジョン手術を受けています。

このことに対する疑問は少なくない人が抱いていることではないでしょうか?

この問題に対して、投手が投げる球種が昔とは変化していることが影響を与えているのではないかと、アメリカのプロビデンスジャーナルの記者のBRIAN MACPHERSONが指摘しています。

そして、なぜ多くの投手が肘を痛めるリスクのある球種を投げるようになっているかという背景にまで踏み込んでいる素晴らしい記事でしたので、紹介したいと思います。

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打者を打ち取るには効果的なカッターとスプリット

この記事のタイトルは“Trends in pitching: cutters, splitters, elbow injuries”というもので、意味は「ピッチングのトレンド:カットボール(カッター)、スプリット、肘の故障」というものです。

現在の投手の傾向は、カットボールとスプリットを多く投げていて、肘の故障が多くなっていると指摘しているものです。

アメリカでは投手の球種などのデータが豊富で充実しています。それらの数字からわかる傾向として、かつてのようなファーストボールとカーブ主体ではなく、カッターとスプリットが増えていると述べています。

レッドソックスであれば、バックホルツがスライダーからカッターに、ジョン・ラッキーがカーブからカッターに、そしてジェイク・ピービが新たにスプリットを持ち球に加えています。

カーブやストレートは主に肩に負担がかかり、カッターとスプリットは、肘にねじる動きが多くなることが明らかになっていると述べて、このカッターとスプリットの隆盛が肘の故障が続出する原因となっているのでは?という指摘です。

では、すでに医学的にスプリットやカッターが肘に負担がかかることがあることが明らかであるにもかかわらず、MLBの投手がそれを選び、なぜ首脳陣がそれを許しているのかという疑問が出てきます。

それについてはいくつかの理由があげられていますが、主にストライクゾーンが以前より狭くなっていること、そしてスカウンティングの技術が向上していることなどが上げられています。

ストライクゾーンの問題は、ストライクゾーンが以前より厳しくなっているとジェイク・ピービが述べていることを引用し、それに加えて打者もボールを振らなくなり、曲がりの大きいカーブやスライダーがボールに判定されやすくなっているとしています。

そして曲がりの大きいカーブやスライダーをコントロールするより、曲がりの小さいスプリットやカッターのほうがストライクゾーンに投げやすいので、好まれているということです。

次にカウンティングの向上したことによる影響ですが、スカウンティング技術の向上により、ビデオはもちろんのこと、球種、そしてその曲がりや角度などの動き、配球をデータ化したレポートが詳細にあり、打者は予備知識が十分にある状態です。

その予備知識を上回るにはカッターやスプリットのほうがより有効なため選ばれているということです。

では、なぜカッターやスプリットがより有効なのかということになりますが、一番大きな理由はファーストボールと非常に見分けがつきにく球種だからです。

カーブやスライダーに比較して、スプリットやカッターは打者の手元で変化するボールで、かつボールの回転数が落ちにくいため、打者にはギリギリまで区別がつきにくく、ミスショットをしやすくなる効果があります。

マリアノ・リベラと日本人投手の活躍も影響

そしてこれらの技術的な面での効果に加えて、カッターはマリアノ・リベラによる成功、スプリットは上原浩治、黒田博樹、岩隈久志の活躍で人気が増しているともしています。

レッドソックスの監督で、元投手であり、投手コーチの経験もあるジョン・ファレルは、「理想はファーストボールとパワーのあるカーブのコンビネーション」だとしていますが、実際には両方を兼ね備える投手はほんの一握りで、打者を上回るためには、肘を痛めるリスクがあっても踏み込まざるを得ないということです。

レッドソックスの投手コーチもカーブやスライダーは時代遅れになりつつあると述べていて、MLBでは、打者を打ち取るためには、このカッターとスプリットは用いざるを得ない状況だということです。

その結果、奪三振率は向上し、与四球は減っているものの、肘の手術も増えているということではないかということがプロビデンスジャーナルによる指摘です。

まとめ

良い投手の条件としてあげられるのは速球と変化球のフォームが変わらないことです。高校レベルでは圧倒的な速球でねじ伏せていても、プロに入って通用しなくなる投手の多くは、変化球の際に肘が下がったり、フォームが緩んでしまっています。

プロの打者は変化球がくるとわかると、いとも簡単に捉えてしまいますし、よほどの速球でなければ、くるとわかっていたら打つことができます。

ダルビッシュがアメリカでかなり高い評価を得ているのは、レベルの高い数多くの変化球を、同じようなリリースポイントと腕の振りで投げ分けれることが、その理由の1つです。

そのため重要なのは球種ごとに投球フォームやリリースポイントが変わらないことですが、カーブやスライダーは多くの投手にとっては微妙な違いまではコントロールしきれない球種です。

一方、スプリット、カッター、そして2シームは、4シームと同じような腕の振りとリリースポイントを実現しやすく、かつ回転も落ちにくい上に、打者の手元で変化しますので、打者には見分けがつきにくくなります。

そのためこれらの球種は打者を打ち取るには非常に有効で、しかも多少甘いコースにいっても、打者の手元で動かすボールのため、ミスショットされる確率が高いボールなので、より好まれているということのようです。

しかし、肘には多大な負荷がかかる球種で、しかもそれを多投することになりますので、故障しやすくなることは避けられません。

打者を効果的に打ち取るには極めて有効な球種であるカットボール(カッター)とスプリットですが、肘を故障しやすいという諸刃の剣という側面があります。

トミー・ジョン手術が続発する原因ではないかというこのプロビデンスジャーナルの記者の考察は、整理されていた記事で非常に興味深いものでした。英語がわかる方は下記のURLで読めますので、一読を。

またこのスプリットについては当ブログでも記事にしていますので、よければ読んでみてください。

また、田中将大のスプリットの肘の故障にかんしては、以下のような投稿があります。

参照元記事:Providence Journal
Title:Trends in pitching: cutters, splitters, elbow injuries

URL:http://www.providencejournal.com/sports/red-sox/content/20140413-trends-in-pitching–cutters-splitters-elbow-injuries.ece

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