殿堂入りが確実視され、新らたなクローザーのための賞の名前にもなったマリアノ・リベラが、ライターの助けは借りているものの、自身の著者として出版した“The Closer”が話題を集めています。
その話題を集めている理由が、ヤンキースを去って、マリナーズに移籍したロビンソン・カノについてマリアノ・リベラが言及した内容があるためです。
一番最初はニューヨーク・デイリーニュースが記事にしているのですが、そこからYahooにも記事にされるなど、話題になりつつあります。
今回は、リベラの著書に関するニューヨーク・デイリーニュースやYahooなどの記事の内容を紹介します。
マリアノ・リベラが元チームメートを批判?
リベラは敵味方を問わず、自分以外の誰かを悪くいうことはなく、常に正しいことを言うというイメージが定着しているため、今回のカノに対する記述が大きく注目されています。
少しあおり気味の表現ではありますが、「マリアノ・リベラがヤンキー・スタジアムのブーイングの列に加わっではいないだろうが、彼にとってカノはメジャー全体だけでなく、ア・リーグ東地区の中でも最も好きなセカンドベースマンではなかった」と先日マリナーズがヤンキー・スタジアムでの試合をした際に、カノに浴びせられたブーイングを引き合いに出して、リベラの著書の内容をニューヨーク・デイリーニュースは伝えています。
その著書の内容とは「この男は素晴らしい才能を持っている。野球殿堂入りできる選手だ。ただ、そこに至るために駆り立てるものを持っているかどうかという問題がある。Robby(ロビンソン・カノの愛称)はベストであるために燃えていないように思える ― 多くのエリートプレーヤーが持つような熱い情熱を彼から見ることがない」とリベラが書いているものです。
さらには、リベラは自身の好きなセカンドベースマンのリストのトップとしてダスティン・ペドロイアの名前を上げ、「彼は誰より激しくプレーし、勝つことに飢えている。そして27個のアウトをとるために激しくプレーしていて、それを見るのは特別なことだ」と最大のライバルであったレッドソックスのセカンドベースマンを賞賛しています。
つまりダスティン・ペドロイアで、勝つためにプレーしていて、その情熱が素晴らしい。一方のカノは才能はあふれんばかりにあるが、それを十分に発揮するほどの情熱がないと指摘しています。
そのためYahoo.comでは”Mariano Rivera disses Robinson Cano in new book, while praising Dustin Pedroia”(カノを無礼に扱う一方、ダスティン・ペドロイアを賞賛する)というタイトルで、この内容を伝えています。アメリカのメディアも電子版では途中で記事のタイトルを変えることがあるのですが、5月7日の午前7時ではこのタイトルです。
リベラの指摘は批判ではなく愛情ある苦言ではないか?
ただ、これもアメリカのメディアがややあおっている印象はあります。
リベラはカノの才能のことを高く評価していることがわかるためです。野球殿堂入りするような力量の選手だという記述がある時点で、そのことは明らかです。
ロビンソン・カノは一生懸命にプレーしていない、怠慢なプレーが多いと批判されることが、ニューヨーク時代に少なくありませんでした。
全力でプレーした結果でのミスというよりも、楽にアウトをとろうとしたためか、集中力を欠いていることによるミスが、カノには多く見られることは否定できません。
マリナーズに移籍して、一生懸命にプレーするようになったとはされていますが、先日もカノの軽率なプレーで、マリナーズの負けにつながったことがありました。非常に高い技術がある一方、軽率なミスがあるもの事実です。
そのためリベラが指摘するように、勝つことへの献身、勝つことへの情熱、ベストであることへのエネルギーがやや欠けているということを否定出来ない面があります。
それでも年間200安打を2度記録して、毎年のように3割を超え、25本から30本の本塁打を打ち、90打点から100打点をコンスタントに記録するわけですから、その才能と実力は図抜けたものがあると言えるロビンソン・カノです。しかし、殿堂入りをするとなると、あともう1つ上の数字を残してほしい状況ではあります。
そのカノの才能と実力を高く評価し、知っているからこそ、マリアノ・リベラにとって、カノがもったいないことをしているように映っているのではないかと考えられます。
ダスティン・ペドロイアは、チームの勝利へ献身的で、投打とも全力でプレーし、特に守備の技術が高いため、私も好きなプレーヤーの1人で、リベラの指摘には共感せざるを得ませんでした。
しかし、この内容があるからといって、リベラがカノを「diss」しているという表現をメディアが使うのは、リベラの本意を取り違えているか、もしくは煽っているだけではないかと感じられます。
確かに一見だけでは、ペドロイアを賞賛し、カノを批判しているようにもとれます。しかし、実際にはロビンソン・カノが、殿堂入りできるような、メジャーのトップのトップになれる選手だと評価しているからこそ、自分の能力を最大限に発揮する情熱を持ってほしいと願って、苦言を呈しているようにも読めるからです。
著書全体やその記述のあるセクションがどのような構成になっているのかまで読まないと、リベラの本意は汲み取れません。しかし、リベラの現役時代のプレーやコメントからして、ただ単純にペドロイアを賞賛して、カノを批判したかったのではないと、受けとめるのが自然ではないでしょうか。