解任された投手コーチはスケープゴート?レッドソックスのフロントの責任と補強の生み出した現状について

Boston Redsox Top Catch

31試合を終えた時点で14勝17敗と負け越しているレッドソックスです。その原因として先発投手陣の不振に注目が集まることが多いのですが、5月に入り得点力が低下していることも低迷の一因となっています。

4月の22試合では115点と1試合平均5点以上をたたき出していたのですが、5月10日のブルージェイズ戦で6点を奪ったものの、それでも9試合では20得点しか奪えず、不安定な投手陣をカバーできていません。

投手陣に関してはフアン・ニエベス投手コーチと解雇し、エドワード・ムヒカをDFAとした後に、アスレチックスとトレードを成立させて、ロースターを入れ替えました。

しかし、これらの動きに対して編成をしたフロントが責任を負うのではなく、投手コーチを1人に責任を押し付けることに対して疑問を呈する声もあり、スケープゴートにされてしまったとの声もあります。

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FOXスポーツの名物記者が指摘する問題点

FOXスポーツの名物記者であるケン・ローゼンタールは、レッドソックスは以下のような考えでロースターを編成したとしています。

  • エースは必要ない
  • パワーリリーバーは必要ない
  • 余剰となっている外野手を減らす必要はない
  • ハンリー・ラミレスがレフトの守備に対応できるか心配する必要がない

しかし、このようなアプローチがうまくいくかに関して、当初から疑わしかったし、シーズン開幕後1ヶ月の状況を見れば不安さが増していると語っています。

そして、もしレッドソックスのフロント2013年の優勝に酔いしれてしまった結果、本来やるべきことを見失い、さらに勝率が5割を切ってシーズンを終えるような状況になった場合には、オーナー側は誰に責任をとらせるのだろうか?と問いかけます。

開幕から1ヶ月で投手陣の不振の責任を問うかたちで、投手コーチのフアン・ニエベスを解雇したレッドソックスでしたが、ライバルチームのGMが、ニエベスの手腕を評価していて、このようなやり方はベン・チェリントンGMのこれまでの方針やスタイルとは合致しないものだと話していることをローゼンタール記者は伝えます。

そしてオーナー側がこのような措置を求めたのかどうかはわからないと前置きした上で、本拠地フェンウェイ・パークでのヤンキース戦では見過ごすことのできない数の観客席の空きがあったことを伝え、オーナー側が危機感を抱いているのではないかと、暗にほのめかしています。

そしてケン・ローゼンタール記者は、一般的に言われている投手陣の不安定さの他に、以下のようなフロント陣の行ったロースター編成の問題点を指摘しています。

  • ジョン・ラッキーのトレードで獲得したアレン・クレイグとジョー・ケリーのパフォーマンスが良くない
  • 3Aに降格しているルスネイ・カスティーヨとアレン・クレイグの2人の外野手に計1600万ドルを費やしていて、なおかつ残契約が7500万ドル
  • レギュラーシーズンで投げていないのにリック・ポーセロとウェイド・マイリーの2人と契約延長

レッドソックスは30歳以上の選手との長期契約を嫌い、1年辺りの年俸を高く設定して契約期間を短くするという戦略をとっています。

その方針の下でシェーン・ビクトリーノ、マイク・ナポリ、スティーブン・ドリュー、ジョニー・ゴームズらを獲得し、2013年には、それらの選手がワールドシリーズ制覇に貢献したことを認めた上で、その時の成功体験に囚われてしまったことが、不運な決断につながってしまったのではないかと分析しています。

ケン・ローゼンタールはその記事の最後には、”Faulty assumptions. Disturbing questions. The 2015 Boston Red Sox.(間違った仮説・前提、気がかりな疑問。それが2015年のレッドソックス)”と結んでいます。

2014年シーズン中から2015年にかけての一連の補強の現状

レッドソックスはシーズン開幕前に今シーズン終了後にFAとなるはずだったリック・ポーセロと4年8250万ドル、2017年シーズン終了後にFAとなるウェイド・マイリーと3年1925万ドル+1年1200万ドルのチームオプションという内容で契約延長をしました。

しかし、ウェイド・マイリーは28.2回を投げて防御率7.22という惨状で、味方の守備の影響を排除した擬似的防御率であるFIPでは良くなるものの4点台となる4.31です。

リック・ポーセロはエース価格で契約延長したにも関わらず、39.0回で防御率4.38、FIP4.28と期待はずれとなっています。

ウェイド・マイリーの契約延長内容は以下のとおりとなっています。

  • 2015(28歳) 366万6000ドル
  • 2016(29歳) 616万7000ドル
  • 2017(30歳) 891万7000ドル
  • 2018(31歳)* 1200万ドル(Team Option)

ウェイド・マイリーは年俸調停権を持っていましたので、年俸が高くなる可能性はありました。しかし、契約延長していなければシーズン終了後に契約を提示しないノンテンダーとして一旦契約解除し、あらためて再契約することで年俸を抑えたり、来季以降の年俸負担もなくチームから放出することもできました。

ところがレッドソックスは契約延長しているため、成績不振を理由に契約解除をしても2016年と2017年の合計1508万4000ドルを支払う義務が残ることになりました。

リック・ポーセロの契約延長の内容は以下のとおりとなっています。

  • 2015(26歳) 1250万ドル(年俸調停最終年)
  • 2016(27歳) 2012万5000ドル
  • 2017(28歳) 2012万5000ドル
  • 2018(29歳) 2112万5000ドル
  • 2019(30歳) 2112万5000ドル

リック・ポーセロに至ってはMLB史上でも年平均の年俸(2062万5000ドル)でトップ15に入るMLBトップクラスの年俸負担を2015年から2018年まですることになっています。

しかもポーセロの獲得のために放出したヨエニス・セスペデスは打率.274/本塁打4/出塁率.300/長打率.476でOPS.776とまずまずの成績を残しています。レッドソックスの規定打席に到達しているプレーヤーでOPSがセスペデス以上の選手は3人しかいないことや、セスペデスの勝負強さを考えると、やや惜しまれるところがあります。

キューバから亡命してきたルスネイ・カスティーヨと7年7250万ドルと大型の契約を結んだのですが、その契約内容は以下のとおりとなっています。

  • 2014(26歳) 87万1429ドル
  • 2015(27歳) 1127万1000ドル
  • 2016(28歳) 1127万1000ドル
  • 2017(29歳) 1127万1000ドル
  • 2018(30歳) 1177万1000ドル
  • 2019(31歳) 1177万3142ドル
  • 2020(32歳) 1427万1429ドル

契約金額を見てもわかるとおり、大きな期待をして大金を注いだルスネイ・カスティーヨですが、現在は3Aでプレーし11試合43打数で打率.256/出塁率.333/長打率.302で、本塁打0、打点3という昇格させることのできない数字で苦戦しています。

ジョン・ラッキーは2014年シーズンのレッドソックスの勝ち頭でした。ジョン・ラッキーは契約の内容上、肘の問題で長期離脱した場合に2015年の年俸がMLB最低年俸(50万7000ドル)となる項目がありました。

その項目に該当したため2015年は非常に安い年俸で契約できたのですが、ラッキーを交換要員としてジョー・ケリーとアレン・クレイグの2人を獲得しました。

アレン・クレイグは2012年と2013年はナ・リーグMVP投票でも票を得、オールスターにも2013年に出場するなど、カージナルスの主力として活躍し、2017年までの契約延長を手にしたのですが、足の故障後、その歯車が狂い始めました。

昨シーズンは打率.128/出塁率.234/長打率.191と非常に低迷したのですが、今季も打率.135/出塁率.237/長打率.192と変わらずに悪い状態です。ですが契約は2017年まで残っています。

アレン・クレイグの契約内容は以下のとおりとなっています。

  • 2015(30歳) 550万ドル
  • 2016(31歳) 900万ドル
  • 2017(32歳) 1100万ドル
  • 2018(33歳)* 1300万ドル(Team Option/バイアウト100万ドル)

この契約はセントルイス・カージナルスが結んだものを引き継いだのですが、バイアウトの100万ドルも含めると2016年と2017年の2年間で2100万ドルを最低でも支払う必要があります。

ジョー・ケリーは年俸は60万3000ドルと安いのは良いのですが、防御率6.35/FIP4.48では、マイナーの他の投手を試した方が良いと判断されるレベルの成績にとどまっています。

そしてトレードで交換要員となったジョン・ラッキーは年俸50万ドルで6試合32.0回を投げて防御率3.20・2勝1敗・WHIP1.17で、FIPも3.16と安定した成績を残しています。

ハンリー・ラミレスは打率.270/本塁打10/打点22/出塁率.324/長打率.570/OPS.894と攻撃面で貢献しています。しかし、WAR(Win Above Replacement:同じポジションの代替可能な選手(Replacement)に比べてどれだけ勝利数を上積みしたか)は+0.1にとどまり、チームの勝利に大きく貢献していないことになります。

ショートの守備に難があるため、レフトにポジションを変えたのですが、そのレフトでもレンジファクター(アウト寄与率)が1.59で規定イニングに到達している左翼手19名中14位、守備防御点(DRS)は-7となるなど足を引っ張っています。

攻撃面でのプラスを重視して外野手が余っている状態であるにも関わらずハンリー・ラミレスを獲得したのですが、守備まで含めた全体で見れば大きく貢献してはいない状態です。

ちなみにトレードでタイガースにいったレフトをポジションとするヨエニス・セスペデスはWARが+0.6、レンジファクター(アウト寄与率)が1.97で両リーグ6位、守備防御点(DRS)も+1となっています。

パブロ・サンドバルも攻撃面では打率.302/出塁率.372/長打率.448と、2014年よりも良くなりそうな気配を見せていますが、守備面ではやや落ちていると考えられる出だしとなっている現状です。

契約延長したばかりのベン・チェリントンGMとジョン・ファレル監督は安泰なのか?

上記の選手たちは、これから調子を上げてくる可能性もあるため、シーズンの早い段階でジャッジしてしまうのはフェアではありません。

ただ、年俸総額は1億8740万7202ドルでドジャースとヤンキースに次ぐ3番目となるところまで膨れ上がっている状況での現在のパフォーマンスは、それに釣り合いがとれているとは言いがたくなっています。

冒頭で紹介したケン・ローゼンタールはアンドリュー・ミラーのトレードで獲得したプロスペクトのエドゥアルド・ロドリゲス1人ではローテーションの問題を解決できはしないし、クローザーの上原浩治もどこまで身体が持つかわからないと述べ、多くの不安要素があることを指摘しています。

ジョン・ファレル監督は2017年まで契約延長したばかりで、今年契約がきれることになっていたベン・チェリントンGMでしたが、契約年数は明らかにされていませんが契約延長をしています。

ただ、多くの資金を投入したにも関わらずチームが低迷し、さらに観客動員も減るようであれば、責任問題に発展する可能性は否定できません。もし投手コーチの解任がオーナー側が主導したものであれば、なおさらです。

ケン・ローゼンタールは2013年に成功したアプローチ、戦略にこだわりすぎてしまったことが、現在の状況を招いているのではないかと指摘していますが、ベン・チェリントンGMを中心とするレッドソックスのフロントが、どのようにチームを立て直すためにテコ入れしていくのか、今後も注目していきたいと思います。