レッドソックス打線の成功がMLBの新たなトレンドを作り出す?

ボストン・レッドソックスはシーズン108勝を上げたものの、同地区で100勝をあげたヤンキースとディビジョンシリーズで対決しました。

ワイルドカードゲームでは、シーズン後半に快進撃を見せていたアスレチックスを完全に封じこめての勝利があったため、ヤンキースに流れがあるかと思われました。

実際に最初のフェンウェイパークでの2試合は互いに1勝ずつをあげた後、ヤンキースタジアムに移動したため、ヤンキースに分があるかとも思われました。しかし、レッドソックスがヤンキースタジアムで3タテを食らわし、リーグチャンピオンシップに進出しました。

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レッドソックス打線の成功が示すもの

アストロズはクリーブランド・インディアンスを完膚なきまでに叩きのめして、リーグチャンピオンシップの初戦もレッドソックスを圧倒しました。しかし、レッドソックスはそこから巻き返し、ワールドシリーズに進出しています。

このレッドソックスの成功の原動力の一つが「ボールをフェアゾーンに飛ばす」ことであり、フライボール革命によってもたらされた本塁打偏重とも言える現在のトレンドに一石を投じることになるかもしれないとニューヨーク・ポストのジョエル・シャーマン氏は述べています。

Is there a sweet spot? Is there a place in which you hit plenty of homers, but do not sell out to the point in which frequent strikeouts become the “acceptable” trade-off?

The Red Sox are at the 114th World Series representing this style. The Dodgers symbolize something more modern and Yankees-esque in which the exchange of power with punchouts is more tolerable.

「たくさんの本塁打を打つスウィートスポット(アングルなど)は重視するものの、その代償として三振が多くなることを受け入れない」というのがレッドソックスのスタイルであると述べ、その一方でドジャースはヤンキースと同様に現在のトレンドである「本塁打量産の代償として三振の多さを許容する」スタイルを有しているとシャーマン氏は指摘します。

この両方のスタイル、攻撃面での方針が成功できるものであることは両チームが証明していることになるのですが、レッドソックスのほうがより優れているのではないかとシャーマン氏は考えます。

I wonder, though, if the Red Sox method becomes not only the more aesthetically pleasing variety, but a more dominant one to try to mimic.

「レッドソックスの方法論は審美的な喜ばしい多様性というだけでなく、模倣すべき他を圧倒する方法論なのではないか」とシャーマン氏は思いを巡らせたようです。

そして現在の傾向について考察しています。

  • クリス・カーター、ペドロ・アルバレスのようは一か八かの打撃スタイルで、守備と走塁で足を引っ張る選手は、すでに敬遠されている。
  • 続いて、ジョーイ・ギャロのように多くの本塁打の代償として、攻撃面で貢献度の低い打席が積み重なる選手を排除しようという動きがある。ジャンカルロ・スタントンはこのカテゴリーに入るのか?
  • レッドソックスは勝負どころで力負けしないJ.D.マルティネスを加えた一方で、ヤンキースはジャンカルロ・スタントンが惨めな打席を積み重ねた

レッドソックス打線は様々なパターンで得点を積み重ねることができましたが、ヤンキース打線は得点圏での打撃に難があり、得点は本塁打に頼ることになりました。レッドソックス打線の方が「バランス」という面で優れていたといえる結果となったディビジョンシリーズでしたが、ドジャースのファルハン・ザイディGMも「バランス」のとれたラインナップの重要性を認めています。

“We are getting to a greater level of sophistication,” Dodgers GM Farhan Zaidi said. “As opposed to the symbiotic relationships in football or basketball, we always thought of baseball as just the hitter versus the pitcher. Is it enough to collect as much offensive talent as possible or should we be thinking about balancing hitters with different elements and skills? It is a fair question to ask and more and more we should be asking it about balancing a lineup.”

「野球を分析する時に投手対打者の対決という構図で常に見てきたが、それは攻撃面での貢献度が高い選手をできるだけ多く集める上で十分なものなのか?様々な要素やスキルを持っているバランスのとれた選手に目を向けるべきなのではないか?といった質問をすることは妥当なことだ。バランスのとれたラインナップなのかということを考える必要がある。」といった内容のことをザイディGMは話しています。

パワーという一側面だけに焦点を当てるのは、攻撃力を高める上で適切なアプローチではないとザイディGMは考えていることが伺えるコメントです。

This should not diminish the importance of homers, especially when velocity and shifts, in particular, have made it harder to successfully put a ball in play. But batting average has been rendered to too low a place. A walk is better than an out, but it is not as good as a hit. A hit can send a runner first to third. It can create an error that advances runners. Getting the ball in play this time of year takes on greater import because defenders under stress are more likely to blunder.

ただ、シャーマン氏は「これだけ投手の球速が上昇し、守備シフトが隆盛する中でヒットを積み重ねるのは容易ではないため、本塁打の重要性は変わるべきではない」と述べる一方で「打率が過小評価」されているともしています。

その理由として「四球はアウトよりも良いが、安打ほどには価値がない」「安打はランナーを一塁から三塁に進めることができるし、ランナーが次の塁に進むエラーが起きる可能性を生み出す」「ボールをフェアゾーンに飛ばすことは守備側に多くのプレッシャーを与え、ミスを起こしやすくさせることができる」などと述べて、安打とフェアゾーンに打つことの価値と意味をシャーマン氏は説明しています。

バランスのとれた攻撃の重要性

本塁打に依存しないラインナップを組むことの価値についてザイディGMは以下のように話しています。

“If you are looking to maximize runs in the season, I don’t think it matters [if you have high-homer, high-strikeout hitters],” Zaidi said. “But if you are trying to maximize consistency of an offense where you, say, score at least four runs as often as possible balance matters.”

「シーズン全体の総得点を最大にしたいのであれば、高い本塁打率で高い三振率の打者を気にする必要はないと思う。しかし、4点以上を奪える試合をできるだけ多くするといったような攻撃面での安定感を最大にしようとするならバランスが重要だ」とザイディGMは話しています。

2試合の平均得点が6点となる場合でも、「1試合が10点で、もう1試合が2点」というケースと、「2試合ともに6点」というケースでは後者の方がチームが勝利する確率が高まります。

MLBでは負け試合になるとあからさまに投手の質を落とすため、打ち放題のような状態になってしまうことが少なくありません。そのような試合での大量得点はシーズン全体の総得点に大きなプラスですが、あくまでも1勝にしかつながりません。本塁打の多いチームは弱い投手の時に徹底的に打ちのめすことで、その数が増えている面もあり、良い投手の攻略に苦労することも珍しくありません。

このようなラインナップは得点力の波が大きくなってしまい、波が底に来た場合には惨めな状態になってしまいます。しかし、レッドソックスの打線はこのような波による不安定感を最小限に食いとどめることができます。

The Red Sox have minimized fluctuations. Consider that during the regular season, the Astros and Yankees pitching staffs had the lowest batting average against (.216) and OPS against (.520 and .523). Boston combined to hit .370 with a 1.152 OPS over the first two rounds to eliminate the Yankees and Astros. These are the game situations when putting the ball meaningfully into play are most valuable. The Red Sox excelled at it during the season and again so far in October.

レッドソックスが対戦したアストロズとヤンキースのレギュラーシーズンの投手陣の数字は素晴らしく、被打率.216、被OPSは.520、.523というものです。しかし、ディビジョンシリーズとリーグチャンピオンシップでレッドソックス打線は打率.370、OPS1.152と完全に打ち崩して進出しています。

これは「レッドソックス打線がボールをフェアゾーンに打つことが重要な場面で、それを実行することに優れていたからだ」とシャーマン氏は述べます。

“We live in an era that hitting .210 and 30 home runs and 70 RBIs is becoming acceptable,” Boston manager Alex Cora said. “We don’t mind strikeouts, but not in certain situations. We want them to put the ball in play. They’ve been having a very humbling approach throughout the series, staying up the middle, fouling off pitches and going the other way, putting the ball in play with two strikes.”

『私たちは「打率.210、30本塁打、70打点という打者」がより受け入れられている時代に生きている。三振することを懸念していないが、特定の状況ではそうではない。必要な場面ではフェアゾーンにボールを飛ばすことを求めている。彼らはシリーズの間、謙虚なアプローチを継続していて、カウントが2ストライクとなった後は、ファウルで粘ること、逆方向へ打つこと、ボールをフェアゾーンに飛ばしている。』とアレックス・コーラ監督は打線全体で状況に応じた打撃をしていることを明かしています。

ボールに角度をつける打撃が重要であることに変わりはないものの、それはカウントが追い込まれるまでの方法論で、2ストライク後は、バットに当てることを優先する打撃に変えていることがレッドソックス打線の強さの理由の一つだということです。

打者の本塁打、投手の奪三振は野球の醍醐味であり、魅力ではありますが、それが度をすぎてしまうと、逆に競技としての奥深さが失われてしまいます。

レッドソックスの攻撃は、勝利する上で有効であるというだけでなく、野球らしい多彩さとダイナミックな面白さがあることはポストシーズンでより際立っています。

フライボール革命でパワー重視のトレンドが隆盛を極めましたが、レッドソックス打線の成功が「揺り戻し」を起こす可能性がありそうです。このようなトレンドの変化はオフの選手の市場評価にも影響を与えるため、今後の推移が注目されます。

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