直近4年間でワールドシリーズ制覇を2013年に果たしているレッドソックスですが、それと同時に地区最下位を3度も経験しています。
レッドソックスはセイバーメトリクスなどのでデータ分析を重視してチーム編成を行っているチームで、成功例の一つとされてきたのですが、やや困惑するような結果となっています。
このような状況下でレッドソックスの筆頭オーナーであるジョン・ヘンリーは「アナリティクスに強く偏重してしまった」と不振の原因についてコメントしました。
データ分析を重視してきたジョン・ヘンリー筆頭オーナー
このジョン・ヘンリーの発言により、旧来からの人間の目によるスカウトたちは「勝利だ」と喜ぶ声があがっているようですが、かといってレッドソックスがアナリティクスを捨てたわけではないと、ボストン・グローブ紙のニック・カファード記者は述べます。
レッドソックスのチーム内の人事異動でも、セイバーメトリクスを軽視したような動きはなされていないとして、ジョン・ヘンリーは「選手の成績の予想において、レッドソックスはアナリティクスに頼りすぎていた」と話しているにすぎないと説明します。
つまりWAR(Win Above Replacement)といったセイバーメトリクスのデータと同様に、目に見えないものも重要だ述べているに過ぎないということです。
ジョン・ヘンリーはヘッジファンドで財をなした人物で、数字やデータによる分析の重要性を、30球団の筆頭オーナーの中でも一番知っていると言える人物で、アナリティクスをガイドラインとしながら3度のワールドシリーズ制覇を成し遂げているわけですが、そのヘンリーが数字に頼りすぎたと述べていることになります。
その例としてニック・カフォードはカール・クロフォードをあげています。
カール・クロフォードはアナリティクスにおいては素晴らしいプレイヤーだという評価だったかもしれないが、メディアやファンを含めたボストンへのアジャストや良いチームメートかどうかという、パフォーマンスに影響を与える要素があまり考慮されなかったと述べています。
そのためこれまでの数字やデータで良いから獲得するというのではなく、そういった人間の視点から見た要素の比重を高めて判断する方向にシフトしていくとのことです。
アナリティクス重視が問題?それともチームの文化の問題か
ただ、レッドソックスのチーム外部は、アナリティクスの問題ではないとの指摘があるようです。
カフォード記者によると、アメリカンリーグのあるチームの球団幹部が、レッドソックスがアナリティクスを重視していることが、MLBでもベストの1つとされるファームシステムの確立に貢献していて、選手を育成する上での支えとなっていると話しているそうです。
そしてアナリティクスに詳しいMLBネットワークのブライアン・ケニーは以下のように述べていると紹介します。
“A proper reading of analytics would tell you that Hanley Ramirez and Pablo Sandoval were erratic performers and risky investments. A proper reading of Jackie Bradley Jr. and Xander Bogaerts would tell you they would be good major league players even if not on their desired timetable. I think the enemy of the Red Sox is impatience, not analytics.”
内容を要約すると「適切にアナリティクスを利用していれば、ハンリー・ラミレスとパブロ・サンドバルは不安定なパフォーマンスを見せる選手で、リスクの高い投資であることがわかることだった。適切なジャッキー・ブラッドリー Jr.とイグザンダー・ボガーツへの予想は、レッドソックスが望むようなタイムテーブルではないかもしれないが、彼らが良いメジャーリーガーになるというものだった。レッドソックスの敵はアナリティクスではなく、忍耐力不足だ。」とブライアン・ケニーは話しています。
データを分析するメディアの中には、ハンリー・ラミレスやパブロ・サンドバルへの巨額投資の危険性を指摘する声はありました。
サンドバルはポストシーズンの成績は良いものでしたが、レギュラーシーズンはさほどでもありませんでしたし、ハンリー・ラミレスの守備力については多くのメディアが懸念を示していました。
そしてメジャー2年目となるボガーツとブラッドリーに頼る編成をして、ベテランのバックアップを十分に用意しなかった2014年の開幕時のロースターに疑問の声もあったのも事実です。
ただ、ボガーツとブラッドリーともにレッドソックスが期待していたスピードよりは遅いものの、2015年には着実にメジャーでも優秀な選手になりつつありますので、やや性急な見通しをしてしまった面はあります。
ボストンもニューヨークと並んで、ファンもメディアも厳しい批判の声を浴びせることが少なくないため、忍耐強く選手を起用することが難しい環境ではあり、チームの編成に少なからず影響を与えています。
このように低迷に関する分析は、レッドソックス内部ではアナリティクス偏重が原因となっているわけですが、外部は必ずしも同様には捉えず、忍耐力のなさ、不適切なアナリティクスの利用だったとの見解があることになります。
このどちらの分析が正しいのかは、この方向転換なされる2016年、2017年のシーズンで検証されていくことになります。
レッドソックスのこの方針転換は、今回ジョン・ヘンリーが公に話す前にチェリントンGM体制からデーブ・ドンブロウスキー体制に移行したことからも見て取れるものでした。
数字やデータをかなり重視したチェリントンGMから、データを全く見ないというわけではないものの、旧来からのスカウティングも重視するデーブ・ドンブロウスキーを編成のトップに据える決断をジョン・ヘンリーはしていましたので、冒頭のようなコメントはある意味、驚きではありません。
MLBでも最大のデータ分析部門持つとされるレッドソックスのこの方針転換は、シーズン中の補強にも影響を与え、成功すればMLBのトレンドを変えていくことになりますので、今後の動きが注目されます。