なぜアスレチックスは大型補強に踏みきったのか?米メディアと専門家の分析

アスレチックスは先発投手陣の防御率がリーグトップであるにもかかわらず、チームのトップ2プロスペクトを放出してまで、ジェフ・サマージャとジェイソン・ハメルを獲得しました。

先発投手が足りないならまだしも、整っている状態でありながら、メジャー全体でも高く評価されている内野手であるアディソン・ラッセルを放出してまでの補強でした。

では、なぜここまでの思い切った補強にアスレチックスのビリー・ビーンGMは動いたのかという疑問が湧いてきます。

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なぜトップ2プロスペクトを放出してまで投手陣を補強したのか?

この疑問は多くの人が抱くもので、当然のことながら米メディアやライターもいろいろと分析をしています。

まずは現役のプレーヤーでサイ・ヤング賞投手であるデトロイト・タイガースのジャスティン・バーランダーがこのアスレチックスのトレードに反応した内容ですが、以下のように述べたと伝えられています。

「彼らがそのトレードをしたのは私たち(タイガース)が理由だろう。彼らがワールドシリーズを勝ち取りたいなら、我々を倒さないこといけないことに思いを巡らすだろう」として、ポストシーズンを視野にいれたものだろうとバーランダーは分析しています。

アスレチックスは、ディビジョン・シリーズで2年連続でデトロイト・タイガースに敗北していますので、バーランダーはそのことを踏まえて先のような見解を示したと考えられます。

そしてアメリカの専門家も同じような分析をしているのが、多数見受けられます。

しかし、ビリー・ビーンGMはインタビューで、この時点で「ポストシーズンのために補強をしたとするのは少々傲慢だ」としてあくまでも「地区優勝のための補強だ」としています。

このビリー・ビーンGMのコメントが伝えられる前に、著名なライターであるPeter Gammons氏もポストシーズンも視野にあるだろうが、”ア・リーグ西地区を勝ち抜くための補強でもある”と分析していました。

ア・リーグ西地区はハイレベルな争いになりつつある

Peter Gammons氏はアスレチックスが得失点差で両リーグトップ(+129)だが、2位と3位はマリナーズ(+64)とエンゼルス(+60)で、ア・リーグ西地区がハイレベルな争いの最中であることを指摘していました。

アスレチックスの53勝33敗(勝率.616)で両リーグトップの貯金20で最高勝率ですが、2位のエンゼルスは49勝36敗(勝率.576)で他地区であれば首位でもおかしくない数字で、マリナーズも47勝39敗(勝率.547)でくらいついてきています。

そのためトレードが成立する前の時点で、アスレチックスは貯金が20あるにもかかわらずエンゼルスに4ゲームしか差をつけることができていませんでした。

シーズン終盤に向けて展望すると、エンゼルスは打線が強力で、昨年より先発投手陣が安定し、すでにマリナーズはアスレチックスのチーム防御率3.18と遜色のない3.25となるなど、決して侮れない状態となっています。

マリナーズはヘルナンデス、岩隈に加えて、新人のエリアス、ベテランのヤングが奮闘し、そこにMLB全体でも評価の高いタイファン・ウォーカーがローテに加わり、さらにプロスペクトのジェームズ・パクストンも7月中にはローテに戻る見込みで、手強い存在になりつつあります。

これらのア・リーグ西地区のライバルを引き離して、地区トップの座を確保しておきたい意図が、アスレチックスにあることは間違いありません。

同じポストシーズンに進出でも、ワイルドカードと地区優勝には大きな違いがあります。ワイルドカードゲームにまわった場合には、わずかに1試合で勝負を決することになりますので、戦力通りに結果が出ない確率が高く、ワールドシリーズ制覇を狙うにはリスクが高いと言えます。

MLBではシーズンの勝率6割(97-98勝)で優勝できる圏内となりますが、それでも4割は負けてしまうことになります。強いチームであっても負ける確率が高いのが野球というスポーツの性質でもありますので、まして1試合勝負ではまったく見通しがたちません。そのため地区優勝しておくことはワールドシリーズ制覇の確率を高めることにつながると考えられます。

またFOXスポーツのKen Rosentalは先発ローテの不安を、大型補強の理由の一つとしてあげています。アスレチックスの先発ローテの成績は良いが、軸となっているのが初のフルシーズンとなるソニー・グレイと故障がちなスコット・カズミアーというのは、やや不安なのもだと指摘しています。

さらにKen Rosentalの分析に付け加えれば、今シーズン活躍しているジェシー・チャベスはキャリアのほとんどがリリーフのため、これも不安材料ではあります。

そのためアスレチックスはまずは地区優勝を確保するために、先発投手を補強しておきたいというのは念頭にあったと言えそうです。

ポストシーズンが視野に入った補強であることは確実

しかし、ビリー・ビーンGMが地区優勝のためにとコメントしても、ポストシーズンを全く考えていないはずがありません。

Ken Rosentalは同じ記事の中で、ビリー・ビーンGMが今シーズンがワールドシリーズのチャンスだと捉えているだろうとと分析しています。

その理由としてレッドソックスとヤンキースがイマイチのチーム状態で、タイガースも不安定だからだと述べています。

アスレチックスはバーランダー、シャーザーなどの強力な先発投手とミゲル・カブレラを中心とする強力打線を擁するタイガースに、2年連続で敗れました。しかし今シーズンは、復調してきてはいるものの、バーランダーやシャーザーも今までほどシャープではなく、ダグ・フィスターもいなくなりました

そしてヤンキースは大型補強にもかかわらず打線が十分に機能せず、先発投手が足りていません。レッドソックスはプロスペクトが活躍できず、故障者続出が追い打ちをかけています。

このようにア・リーグをリードしてきたチームがイマイチの状態のため、アスレチックスにとって、2014年が大きなチャンスであることは間違いなさそうです。

またビリー・ビーンGMは1ヶ月前からカブスに打診をしていたようですが、先日のタイガースとの3連戦3連敗も補強を後押ししたのではないかという分析も米メディアには流れています。

その3連戦(6/30-7/2)ではアニバル・サンチェス、リック・ポーセロ、ジャスティン・バーランダーと先発したタイガース投手陣に3試合で7点に抑えこまれ、逆に、カズミアー、ミルズ、チャベスと並べたアスレチックス投手陣は16失点と打ち込まれました。

この3連戦の結果が、タイガースに勝つためには、強力な打線をある程度封じ込めることができる先発投手が必要で、そのためには多少の出血はやむ得ない、との決断を後押しした可能性は十分にありそうです。

プロスペクトを重視する今のトレンドの一歩先をビリー・ビーンは走るのか?

またKen Rosenthalはビリー・ビーンが「プロスペクトを過大に評価することが、ワールドシリーズ制覇のチャンスを危うくする」と考えていると指摘しています。

そしてKen Rosenthalも「残念ながらすべてのプロスペクトがマイク・トラウトのようになるわけではない」として、レッドソックスのボガーツやナショナルズのブライズ・バーパーなどの名前を上げて、期待されたパフォーマンスを見せていないと述べています。

マリナーズなどもプロスペクトと評価されてきた選手を多く抱えていましたが、現在、しっかりと階段を登っているのはカイル・シーガーとマイク・ズニーノくらいと言えます。

プロスペクトへの過剰な期待はチームの状態をアンバラスにすることがあるのは、これらの状況からも否定出来ない事実です。

FAの大物重視から、若い選手を重視する育成の時代に移りつつあると考えられるMLBの全体的な傾向ですが、アスレチックスは今回のトレードでチーム内のトップ2のプロスペクトである2012年と2013年のドラフトの1巡目指名のプレーヤーを放出しました。

“マネーボール”でMLBのトレンドを変えたビリー・ビーンGMは、またしてもトレンドの一歩先を走っているのかもしれません。

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