なぜ盗塁数が減っているのか?MLBのトレンドを米メディアが分析

メジャーリーグの歴史の中で唯一、通算1000盗塁を達成しているのがリッキー・ヘンダーソンです。

リッキー・ヘンダーソン130、108、100と3度の100盗塁以上を記録するなどして、1979年から2003年の25シーズンでこの数字を達成しているのですが、これから更新される可能性の低い記録の一つになりつつあります。

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盗塁数が減っている原因は?

以下は米大手メディアのEPSNに掲載されたメジャーリーグ全体での盗塁数の変遷です。

  • 1987年:3585盗塁
  • 1997年:3308盗塁
  • 2007年:2918盗塁
  • 2017年:2527盗塁

30年間で1000強の盗塁数減となっています。しかも、チーム数は1993年に2球団、1998年にさらに2球団が増えています。

1球団あたりに換算すると1987年は137.9盗塁だったのに対し、2017年は84.2盗塁となり、その減少率は38.9%とかなり急激です。

2017年シーズンで40盗塁以上を記録したのはディー・ゴードン、ビリー・ハミルトン、トレア・ターナーの3人だけにとどまるなど、盗塁数で突出した選手も減少傾向が強まっています。

このようなメジャーリーグのトレンドについてESPNのバスター・オルニー氏が原因を分析しています。

以下はその内容の要約です。

1. 長打を打つことのほうが重視される時代に

2017年は20本塁打以上の選手が117名いたのに対し、20盗塁以上の選手は29名。カブスとレイズなどのチームはスプリングトレーニングで、選手たちにボールに角度をつける方法をカウンセリングするなど、長打を打つことを重視する傾向が強まっている。盗塁で一つ先の塁に進んでもらうと、投手が打者に集中しやすくなったり、歩かせやすくなったりするため、それよりも、一塁にいてもらって本塁打や長打でホームまで返すという攻撃が戦略として重視されるように。

2. 盗塁は故障のリスクが高い

リッキー・ヘンダーソンがヘッドスライディングで1406もの盗塁を記録したが、指、手、手首などの大きな故障を回避していた。しかし、基本的には故障のリスクが高いもので、マイク・トラウトとカルロス・コレアは走塁で指を痛めて長期離脱している。盗塁の名手であるホセ・アルトゥーベも「以前のような盗塁数を記録することはないだろう」と話すなどしていて、故障を避けることのほうを重視している。

3. チャレンジ制度の導入

ビデオによる様々な角度とスロープレーによるリプレー検証の導入により、タイミングとしてはセーフでも、スライディングしたあとに常にベースに体が触れ続けることが要求されるように。
スライディングの勢いでベースから離れる瞬間が生じてしまうことがあるため、野手がグローブを体につけ続けることでアウトになることがビデオ判定の導入により増加。そのため盗塁の際のスライディングの後にベースに体が離れないようにスピードを調整する必要が生じ、盗塁へのハードルが高くなっている。

4. 高い盗塁成功率を要求されるようになった

数字によるデータ解析が発達したことにより、盗塁成功率が80%を越えないと、攻撃として効率的ではないと評価されるように。
この結果、カージナルスのトミー・ファムは32回盗塁を試みて25回成功させているものの成功率は78.1%となり、基準となる数字に達しないという評価に。
ブレット・バトラーが19年のキャリアで40盗塁に5回成功しているものの、1991年には66回試みて28回刺されている。今の時代であればフロントから首脳陣に「盗塁させないように」という指示が出されるだろう。

5. 走者を牽制することへのためらいが減った

走者を繰り返し繰り返し牽制することが有効な方法手段であることは明白であるものの、昔は続けにくい環境だった。
以前は走者を何回も牽制するとブーイングを浴びることになり、そういった動きを続けることへのハードルが高かったが、現在は有効な方法論を実行することを重視する時代となり、繰り返し牽制がなされるようになった。

6. クイックモーションなどの投手の盗塁阻止技術の向上

スティーブン・ストラスバーグはランナーに癖を見破れらない投球フォームを身に着けている。2012年には16回のうち14回も盗塁を許していたが、この3年間では23回試みられたうち14回しか成功を許していない。
ビデオによる投球フォームの解析が発達した結果、牽制と投球の違いが出にくいフォームを身につける投手が増えている。2017年にダイヤモンドバックスのザック・グレインキーは14回中5回、カージナルスのカルロス・マルティネスは8回中4回しか成功を許していない。

7. 捕手には打撃よりも守備力を重視するようになった

以前はスピードがないもののパワーのある選手を捕手として起用する時代が長く続いた。その結果、本塁打数は期待できたものの、動きが鈍いため盗塁を刺すという面では穴に。
しかし、現在は捕手というポジションには攻撃力ではなく守備力を重視するようになり、機敏な動きができる選手が重宝されるように。その結果、170センチのオースティン・バンズ(ドジャース)のような、体の小さい内野手からコンバートされた選手もメジャーに現れるようになった。

以前は体が大きく、動きは鈍いもののパワーがある選手は、一塁もしくは捕手で起用するという時代が長く続きました。
しかし、守備のメトリックスが導入された結果、いくらパワーがあって本塁打が打てても守備面でのマイナスが大きければ、本塁打によるプラスを打ち消してしまうと考えられるようになりました。

そのため一塁手、捕手にも機敏な動きができる運動能力の高い選手が重宝されるようになり、パワーに偏った選手は指名打者としてしか評価されない時代となっています。そのことが2017-18シーズンオフのFA市場でパワータイプの選手が契約に苦労する理由の一つとなっています。

このような捕手の守備力が重視されるようになったことで、盗塁成功率は低下することになり、結果として盗塁数の減少につながっていると考えられます。

さらに現在は、投手は「打者を抑えていればいい」という時代ではなくなり、「盗塁をされにくい技術」をもっているかどうかも評価されています。
打者を抑えることだけに集中するのであればクイックモーションなどは必要なく、以前のメジャーではその傾向が強くありました。しかし、データによる分析が進むことにより、必要な技術として身につける投手が増えることになり、結果として盗塁へのハードルを高くしていると考えられます。

以前は盗塁成功率はさほど重視されることはなく、盗塁数ばかりに注目が集まっていました。ただ、現在は最低でも75%、効率的な攻撃と呼ぶためには80%という数字が要求されるようになっています。

メジャー記録である1406盗塁のリッキー・ヘンダーソンの盗塁成功率は80.76%、日本記録の1065盗塁の福本豊でも成功率は78.1%にとどまることを考えれば、かなり高いハードルが要求されていると言わざるを得ません。

ちなみにリッキー・ヘンダーソンは74盗塁をしているシーズンでも成功率が72.97%、福本豊は53盗塁も67.92%にとどまっているシーズンもあります。

このようなバッテリーの盗塁阻止技術の向上、データ解析によって高い盗塁成功率が要求されるようになる、リプレー検証により盗塁に必要とされる技術の難易度が上がる、なおかつ故障のリスクも高いため、どの球団の首脳陣、フロントも盗塁に積極的な評価を与えなくなっていると考えられます。

ただ、本塁打数が減り、長打が出にくい時代となれば、単打を活かすことが重要になりますので、盗塁が再評価される可能性は残っています。

しかし、長打が重視され、実際に本塁打が出やすい時代が続くようであれば、「盗塁」という攻撃方法は「奇襲作戦」としての評価にとどまることになりそうです。

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