2012年にワイルドカードからディビジョン・シリーズに進出し、2014年は地区優勝を果たし、ディビジョン・シリーズでタイガースを下し、リーグチャンピオンシップまで進出したオリオールズです。
その立役者となっているのがレッドソックスでGMを務めて、2011年11月からオリオールズのGMに就任したダン・デュケットと、2010年7月に監督についたバック・ショーウォルターの2人です。
ダン・デュケットがGMとして、編成を行っているのですが、そこにバック・ショーウォルターも密接に関わっていて、FAとなる選手とも去就について話し合いを行うなど、現場の指揮だけでなく、編成面でも影響を与えています。
そのオリオールズが2015年に向けて、どのようにロースターを構成していくのかについて、来季の年俸総額やメディアからの情報を元にまとめています。
オリオールズの2014年の年俸総額と来季に向けての展望
スポンサーリンク
[googlead]
2014年のオリオールズの年俸総額はESPNによると1億01,33万4,943ドルで全体で16番目の規模となっています。
しかし、地元メディアによると金額はもう少し大きいようで、開幕時点では1億700万ドルに到達し、アンドリュー・ミラーやニック・ハンドリーなどのシーズン中の獲得があったため、さらに増加していて、球団史上最高規模になったと伝えられています。
そのオリオールズは62万人余りのボルティモアを本拠地としているため、マーケットの規模が小さいこともあり、予算に大きな余裕がある状況ではありません。
そのオリオールズで2015年の契約が確定している選手と年俸の一覧は以下のとおりとなっています。
- アダム・ジョーンズ(29歳・CF) $13,000,000
- ウバルド・ヒメネス(31歳・SP) $12,250,000
- J.J.ハーティ(32歳・SS) $11,500,000
- チェン・ウェイン(29歳・SP) $4,750,000
- ダレン・オデイ(32歳・RP) $4,250,000
- ライアン・ウェブ(29歳・RP) $2,750,000
確定している年俸は4,875万ドルと、2014年の予算総額までは5000万ドル以上余裕がありますが、若いチームのため年俸調停の選手も多く、ここにその金額が加わります。
続いて、年俸調停権を有する選手と、メディアによる予想年俸は以下のとおりとなっています。
- クリス・デービス(29歳・1B) 1,100万-1,200万ドル
- バド・ノリス(30歳・SP) 700万-870万ドル
- トミー・ハンター(28歳・RP) 400万-440万ドル
- ブライアン・マティス(28歳・RP) 270万-350万ドル
- スティーブ・ピアース(32歳・1B/OF) 160万-220万ドル
- マット・ウィータース(29歳・C) 790万-800万ドル
- ライアン・フラハーティ(28歳・UT) 75万-100万ドル
- クリス・ティルマン(27歳・SP) 250万-540万ドル
- ザック・ブリットン(27歳・RP) 150万-320万ドル
年俸調停権を有するアレハンドロ・デアザ(31歳・OF)は550万ドルから600万ドルに到達する見込みで、オリオールズが契約を提示せずに戦力外とする、ノンテンダーFAとなるが有力と予想されています。
*ノンテンダーFAとは、自由契約と同様の状態で、球団が契約が終了している選手に対して、新たな契約を期限前に提示しなかった場合にはFAとなります。2014年は12月2日が期限です。
少ない金額で見積もると3895万ドル、大きい金額で見積もると4840万ドルとなります。計算上はその中間をとって4360万ドルとした場合でも、年俸総額は9,235万ドルに到達することになります。
ここにMLB最低年俸の選手の支払いも加わりますので、2014年の1億700万ドルまでほぼ余裕がない状態と考えられます。
主力選手がFAで流出する2014年シーズンオフ
しかも、この状態でチームから以下の選手がFAとなります。
- ネルソン・クルーズ
- アンドリュー・ミラー
- ニック・マーケイキス
- ニック・ハンドリー
- デルモン・ヤング
- ケリー・ジョンソン
- ジョー・ソーンダース
チームのキーとなる選手が多く含まれるため、これらの穴を埋めるのは容易ではありませんが、予算上の制約があるため、引き留めたくとも引き留めることができないジレンマがオリオールズにはあります。
ここに1750万ドルのチームオプションは破棄したものの、再契約を交渉中で複数年で合意の可能性があると見られているニック・マーケイキスの金額が加わった場合には、、すでに2014年と同規模の年俸総額に達することになります。
このような予算上の制約があることはデュケットGMとショーウォルター監督双方が認めていて、「チャレンジングではあるが、道を見つけるために、話し合っていく」と述べています。
デュケットGMは、これからオーナー側と交渉することになると断りはあるものの、「年俸総額を増やせる」との見通しだとも述べています。
デュケットGMは、ここ数年に渡りオリオールズは年俸総額を増やしてきたが、ファンはそれに応えてチームをサポートしてくれたと述べて、オーナー側を説得できる自信を見せています。
オリオールズの観客動員は2011年の175万5,461人(26位)とMLB全体でも下位の動員力でしたが、2012年は210万2,240人(20位)、2013年が235万7,561人(18位)、246万4,473人(13位)と、70万人余りも増えるなど、チームの成績向上とともに観客動員も増えています。
それらの好材料があるため、年俸総額は増やせる見込みではあるようですが、予算に制限が多いことには変わりがなく、戦力を整えるためには、知恵と工夫が必要なオリオールズの状況です。
FAとなる選手との再契約の可能性は?
地元メディアの中には、26本塁打・79打点は良いものの打率.196と低迷したクリス・デービスをトレード、もしくはノンテンダーFAとするのではないかとの憶測も流れました。
年俸の制限があるチームにとって、この成績に1035万ドルを支払うのは大きな負担の上、このオフに確実に1100万ドル以上になる見込みのクリス・デービスをチームにとどめるのはリスクが大きいためです。
しかし、40本塁打を打ったネルソン・クルーズを失う上に、3年間で112本塁打・295打点を記録した選手を失うことは致命的なダメージになる可能性が高いので、それはないだろうとの見解で、現在は落ち着いています。
そうなると2015年はクリス・デービスが一塁に戻ってくることになり、今年ブレイクしたスティーブ・ピアース(率.293/本21/打点49/OPS.930)はどこを守るのか?という問題が生じてきます。
そのスティーブ・ピアースの来季のポジションは、FAとなる選手の動向に左右されることになります。
FAとなったニック・マーケイキスの残留に関してはバック・ショーウォルター監督が手応えがあると語っていること、流出の可能性が高い場合に出すとされていたクオリファイングオファーがなかったこと、代理人もマーケイキスがチームとボルティモアを気に入っていると語っていること、などから残留の見込みが強いようです。
残りの主力FA選手では、本人は希望しているものの、高額の複数年を他球団からオファーされるであろうネルソン・クルーズの流出は確実です。
そのためネルソン・クルーズが抜ける外野と指名打者をポジションとして、スティーブ・ピアースはプレーすることになるだろうと予想されています。
アンドリュー・ミラーは3年3000万ドルが交渉のスタートラインとも予想されていますので、オリオールズの予算では厳しいものがあり、こちらも流出が確実です。
オフの補強のポイントと課題は?
地元メディアのボルティモア・サンのDan Connollyは2015年にオリオールズが再び勝つためには5つの課題をクリアする必要があると分析しています。
- 出塁率の高い野手を獲得する
オリオールズのチーム本塁打211本は両リーグで唯一200本塁打以上で、2位以下に25本も引き離している一方で、得点705は両リーグ8位にとどまる。その原因は明らかでフリースインガーが多たいめ三振が多く、チーム出塁率.311が両リーグ17位と低いため。
それでもレギュラーシーズンであればカバーできるが、ポストシーズンでは脆さにつながるため、改善が必要。そのため出塁率の高いマーケイキスを連れ戻して2番を打たせ、さらに1番に出塁率が高く、スピードのある選手を獲得して、得点力の底上げをすべき。 - エースを獲得する
マイク・ムシーナ以来、オリオールズには「真のエースがいない」とし、トップスターターを獲得して、ティルマンとチェンをNo.2とNo.3に回せるようにしたほうが良いと指摘。ただ同時に、4年5000万ドルで獲得したウバルド・ヒメネスがひどいシーズンを送ったため、さらにFA投手に投資する可能性は低いだろうとも予測。 - 選手層を厚くする
代打として使うことができ、その後に守備にもつけるレベルのベンチプレーヤーとアンドリュー・ミラーが流出するため、左のリリーフが必要。この分野はシーズン中にミラー、ハンドリー、デアザを獲得するなどダン・デュケットの得意とする分野だから可能だろうと予想。 - マニー・マチャドとマット・ウィータースを保護する
2015年に向けて大きな戦力アップにつながると考えられているのがマニー・マチャドとマット・ウィータースの復帰。両者ともスプリングトレーニングに間に合い、来季は戦力として期待できる。ただ、両者ともに故障あがりのため、負担を軽減するようなバックアップ策が必要。 - ウバルド・ヒメネスとクリス・デービスを見極める
チームで最高年俸の投手と2013年の二冠王が、「並のシーズンの成績」を残してくれれば、ア・リーグ東地区で優勝できる可能性がある。その一方で、年俸の負担をを考えると良い相手が見つかればトレードなども検討すべき。
オリオールズは12ゲームを引き離して独走しての地区優勝でしたが、万全の状態で残したものではなく、主力を欠いた手負いの状態でのものでした。
捕手のマット・ウィータースと三塁手のマニー・マチャドという主力2人が2014年シーズン中は、ほぼ不在といえる状態でした。
さらに、主砲のクリス・デービスが不振と出場停止、No.1スターターとして期待されたウバルド・ヒメネスもローテから外れて、リーグチャンピオンシップの時にはロースターにすら入っていませんでした。
それでも独走で地区優勝していますので、ショーウォルター監督の手腕に加えて、オリオールズのチームそのものの地力がアップしていることとは間違いありません。
先に上げたような選手が、2015年に大活躍しなくても、例年通りの成績を残せば、再び独走する可能性があります。
このようなチーム状況のため、オフに動くとしても大規模な補強よりも、必要なパーツを埋めていく補強になると予想されます。そのためFA市場では、過去に実績があっても、現在は低い評価を受けているような年俸が抑えられる投手や野手を獲得することになると予想されます。
またロースターでは先発投手と捕手が余っています。
特に先発やクリス・ティルマン(防3.34/13勝6敗/WHIP1.23)、チェン・ウェイン(防3.54/16勝6敗/WHIP1.23)、バド・ノリス(防3.65/15勝8敗/WHIP1.22)、ケビン・ゴーズマン(防3.57/7勝7敗/WHIP1.31)、ミゲル・ゴンザレス(防3.23/10勝9敗/WHIP1.30)に加えて、ウバルド・ヒメネスがいる状態です。
この先発ローテの余剰を利用し、トレードを成立させることで戦力を整えることも選択肢となりそうです。
またバック・ショーウォルター監督は、予算の制限があることもよく理解しているので、スティーブ・ピアースのようなくすぶっている選手を拾いだしてくるだろうとボストン・グローブのNick Cafardoなどは予想しています。
また、ウォルター監督自身も、具体的な選手名をあげることは控えているものの、候補となる選手がいることをほのめかしています。そのためにメディアやファンも気づかないうちに、必要な選手をひっそりと獲得してしまう可能性もあります。
まとめ・総括
レイズ時代のアンドリュー・フリードマンとジョー・マドンの関係を、ビートルズのジョン・レノンとポール・マッカトニーのようだったとメディアに評されることがあります。
ジョン・レノンとポール・マッカトニーという傑出した才能のある2人が融合して、素晴らしい作品を生み出していたわけですが、レイズ時代のアンドリュー・フリードマンGMとジョー・マドン監督の2人も、互いの才能を活かしながら素晴らしいチームを作り、結果を残しました。
ダン・デュケットとバック・ショーウォルターの関係も、メディアで2人がそれぞれに語っている内容を読んでいると、それと似たような雰囲気を感じさせるものがあります。
バック・ショーウォルターは、過去に2度受賞している、マネジャー・オブ・ザ・イヤーのア・リーグ最終候補3人にうちの1人に、2014年も選ばれています。
このダン・デュケットGMとバック・ショーウォルター監督がどのようなロースターとチームを、このオフからシーズン開幕まで作り上げてくるのか楽しみなオリオールズです。