2010年から2013年にかけて4年連続でプレーオフ進出を果たすことができなかったロサンゼルス・エンゼルスでしたが、2014年は98勝64敗とリーグ最高勝率でポストシーズンに進みました。
大きな期待を集めた久々のポストシーズンでしたが、シーズン終盤にギャレット・リチャーズ、タイラー・スガックスらの主力投手の離脱による戦力ダウンもあったため、ロイヤルズに3連敗しディビジョンシリーズで敗退しました。
レギュラーシーズンとポストシーズンの落差が大きくなってしまったエンゼルスでしたが、大部分の主力選手をキープした状態で2015年にのぞみます。
そのロサンゼルス・エンゼルスの2015年シーズン開幕前の戦力分析です。
エンゼルスの2014年のチーム成績とオフの主な戦力の加入・流出の一覧
2014年シーズンのエンゼルスのチーム全体の打撃陣と投手陣の成績は以下のとおりとなっています。
*SP:先発投手 QS:クオリティスタート RP:リリーフ投手 SV率:セーブ成功率
2014年打撃陣成績 |
得点 773(MLB:1位/AL:1位) 打率 .259(MLB:6位/AL:3位) 出塁率 .322(MLB:7位/AL:4位) 長打率 .406(MLB:5位/AL:4位) |
---|---|
2014年投手陣成績 |
防御率3.58(MLB:15位/AL:7位) SP防御率3.62(MLB:13位/AL:6位) QS80(MLB:23位/AL:11位) RP防御率3.52(MLB:14位/AL:7位) SV率74.19%(MLB:7位/AL:3位) |
2014年投手陣成績 |
DRS -16(MLB:20位/AL:7位) UZR +26(MLB:7位/AL:3位) |
アルバート・プホルス、マイク・トラウトを中心とする打線は強力で両リーグトップの773点を叩き出しました。しかし、これは予想されていたとも言えるパフォーマンスであった一方で、その攻撃力を十分に活かせる投手力が揃ったことで、レギュラーシーズンを独走することができました。
投手陣全体だけでなく、先発投手陣、リリーフ投手陣ともにリーグ中位につけるパフォーマンスで圧倒的な強さまではなかったものの、得点力があるチームが勝つためには十分な結果を残しました。
特にシーズン中に獲得したヒューストン・ストリートの貢献度は高く、セーブ成功率はリーグ3位となる74.19%を記録しました。シーズン前半はクローザーに座っていたアルネスト・フリエリの不安定な投球が、チームが伸び悩む原因となりましたが、移籍後の19度のセーブ機会で17セーブ(成功率89.5%)を上げたストリートは大きなエンゼルスの強みとなりました。
続いて、エンゼルスのシーズンオフにおける主な戦力の加入・流出の一覧は以下のとおりとなっています。
*TR:トレード FA:フリーエージェント
主な戦力加入 |
トレード:アンドリュ・ヒーニー(SP) トレード:ニック・トロピアーノ(SP) トレード:ジョシュ・ラットリッジ(2B) トレード:マット・ジョイス(OF) トレード:ドリュー・ブテラ(C) トレード:ジョニー・ジアボテラ(2B) |
---|---|
主な戦力流出 |
トレード:ハウィー・ケンドリック(2B) トレード:ケビン・ジェプセン(RP) FA:ウェイド・ルブラン(SP/RP) Non-FA:ゴードン・ベッカム(UT) トレード:ハンク・コンガー(C) FA:ジョン・バック(C) 引退:ジョン・マクドナルド(3B) FA:ジェイソン・グリーリ(RP) FA:ランディ・ウルフ(SP) FA:ジョー・サッチャー(RP) FA:デビッド・カーペンター(RP) |
主な戦力流出としてはセカンドを守り、シーズン終盤にはプホルスの後の4番を打つことが多かったハウィー・ケンドリックをトレードで放出して、プロスペクトして評価の高いアンドリュー・ヒーニーを獲得しました。
またリリーフ投手として良い働きを見せていたケビン・ジェプセンと交換要員としてレイズからマット・ジョイスを、バックアップ捕手を務めていたハンク・コンガーを交換要員としてニック・トロピアーノという若い先発投手をトレードで獲得しています。
資金力があるチームのため、大物FA選手の獲得競争において頻繁にメディアによって名前が上がり続けたものの、贅沢税にかかるラインに到達することをオーナーサイドが嫌っていることもあり、積極的に外部からの補強には動かず、内部からのオプションで対応する、もしくはトレードで戦力を整える動きが続いたオフのエンゼルスでした。
エンゼルスの打撃陣の予想スターティングメンバーと分析
予想されるスターティングメンバーと打順、ベンチメンバーの候補は以下のとおりとなっています。
【予想スターティングラインナップ】
- (RF)コール・カルフーン
打率.272/本塁打17/打点58/出塁率.325/長打率.450 - (CF)マイク・トラウト
打率.287/本塁打36/打点111/出塁率.377/長打率.561 - (1B)アルバート・プホルス
打率.272/本塁打28/打点105/出塁率.324/長打率.466 - (LF)マット・ジョイス
打率.254/本塁打9/打点52/出塁率.349/長打率.383 - (DH)C.J.クロン
打率.256/本塁打11/打点37/出塁率.289/長打率.450 - (3B)デビッド・フリーズ
打率.260/本塁打10/打点55/出塁率.321/長打率.383 - (C)クリス・アイアネッタ
打率.252/本塁打7/打点43/出塁率.373/長打率.392 - (SS)エリック・アイバー
打率.278/本塁打7/打点68/出塁率.321/長打率.379 - (2B)ジョシュ・ラットリッジ
打率.269/本塁打4/打点33/出塁率.323/長打率.405
【予想ベンチメンバー】
- (C)ドリュー・ブテラ
打率.188/本塁打3/打点14/出塁率.267/長打率.288 - (2B)ジョニー・ジアボテラ
打率.216/本塁打1/打点5/出塁率.268/長打率.324 - (OF)コリン・カウギル
打率.250/本塁打5/打点21/出塁率.330/長打率.354 - (UT)グラント・グリーン
打率.273/本塁打1/打点11/出塁率.282/長打率.354 - (UT)エフレン・ナバーロ
打率.245/本塁打1/打点14/出塁率.302/長打率.340
ジョシュ・ハミルトンが薬物乱用の問題で出場停止処分を受けることが濃厚で、さらにハウィー・ケンドリックをトレードで失いましたので、トラウト、プホルスの後を打つ打者が問題となります。
シーズン開幕前の時点では、出塁率の高いマット・ジョイスを2番にいれて、3番トラウト、4番プホルスという並び、もしくは2番トラウト、3番プホルス、4番にジョイスという並びも有力視されています。
打線の得点力に影響を与えそうなのがハウィー・ケンドリック(率.293/本7/点75/出塁.347)とジョシュ・ハミルトン(率.263/本10/点44/出塁.331)がラインナップに入らないことです。
ですが、79試合で11本塁打・37打点を記録したC.J.クロンがフルシーズンプレーすることと、オースター以降に打率.267/出塁率.315/長打率.429と成績が向上したデビッド・フリースがそのパフォーマンスをキープできれば、新たに加入したマット・ジョイスとの3人で十分に補えると見みられています。
ジョシュ・ハミルトンはどの程度の出場停止処分になるのかは不透明ですが、幸いなことに2014年の好成績がハミルトンのパフォーマンスに依存したものではありませんので、ダメージが少なくなりそうです。
セカンドに関してはトレードで獲得したジョシュ・ラットリッジなど内部からのオプションで補う方針ですが、どの選手もハウィー・ケンドリックの穴を埋めるには物足りない選手ばかりのため、状況次第ではシーズン中のトレード補強するポイントの1つとなりそうです。
エンゼルス投手陣の予想先発ローテーションとリリーフ陣の分析
エンゼルスの予想される先発ローテーションとブルペン陣の編成は以下のとおりとなっています。
【予想される先発投手陣】
- (SP)ジェレッド・ウィーバー
213.1回/防御率3.59/18勝9敗/WHIP1.21 - (SP)ギャレット・リチャーズ
168.2回/防御率2.61/13勝4敗/WHIP1.04 - (SP)C.J.ウィルソン
175.2回/防御率4.51/13勝10敗/WHIP1.45 - (SP)マット・シューメイカー
136.0回/防御率3.04/16勝4敗/WHIP1.07 - (SP)ヘクター・サンティアゴ
127.1回/防御率3.75/6勝9敗/WHIP1.36 - (SP)アンドリュー・ヒーニー
29.1回/防御率5.83/0勝3敗/WHIP1.33 - (SP)ニック・トロピアーノ
21.2回/防御率4.57/1勝3敗/WHIP1.29
【予想されるリリーフ陣】
- (CL)ヒューストン・ストリート
26.1回/防御率1.71/17SV/WHIP1.18 - (SET)ジョー・スミス
74.2回/防御率1.81/15SV/WHIP0.80 - (SET)マイク・モーリン
59.0回/防御率2.90/0SV/WHIP1.19 - (RP)フェルナンド・サラス
58.2回/防御率3.38/0SV/WHIP1.09 - (RP)ビニー・ペスタノ
9.2回/防御率0.93/0SV/WHIP0.93 - (RP)シーザー・ラモス
82.2回/防御率3.70/0SV/WHIP1.36 - (RP)コーリー・ラスムス
56.0回/防御率2.57/0SV/WHIP1.05
トミー・ジョン手術を受けたタイラー・スガックスは2015年は復帰させないことがチームの方針として明らかにされています。
昨シーズン終盤に左膝蓋腱を痛め手術を受けたギャレット・リチャーズは、開幕には間に合わないものの、順調に回復して4月中旬には復帰する見込みのため、先発を飛ばしても3回程度におさまるのではないかと予想されます。
そのギャレット・リチャーズが復帰するまでは、ハウィー・ケンドリックのトレードで獲得したトッププロスペクトのアンドリュー・ヒーニーとベテランのヘクター・サンティアゴが務める予定で、復帰後はどちらかがブルペンにまわることになりそうです。
また先発投手のバックアップとしてアストロズから獲得したニック・トロピアーノ、ロングリリーフとスポット先発をこなせるシーザー・ラモスも控えるなど、層も厚くなっていて、多少の故障者であれば十分にカバーできる布陣となっています。
昨年の躍進を支えたブルペン陣はクローザーのヒューストン・ストリートとセットアップのジョー・スミスのコンビが健在で、試合の終盤に安定感をもたらしてくれそうです。
ケビン・ジェプセンを失ったものの、ブルペンのバックアップも、マイナー契約のマット・リンドストロムがいます。マット・リンドストロムはかつては優秀なリリーバーとして活躍した投手のため、復活すればさらなる安定感をチームにもたらすことになります。
投手陣は同地区のライバルであるマリナーズほど強力ではありませんが、打線の援護を活かすには十分な力量を持っていると考えられるエンゼルスです。
総括・まとめ
投打ともに98勝を生み出した戦力をキープできていると考えられます。そして、これだけの戦力に加えて、2度の最優秀監督賞を受賞したマイク・ソーシアが指揮を執りますので、2015年もア・リーグ西地区の優勝候補の最右翼であると言えるエンゼルスです。
ジョシュ・ハミルトンがどのくらいの出場停止処分を受けるのか、または薬物のリハビリテーションプログラムに入るのかによっても変わってくるのですが、2540万ドルのいくらかを負担しなくて良くなると見られていて、600万ドル程度は削減できるのではないかという試算もあります。
またオーナーのアルトゥーロ・モレノは、そのハミルトンの件とは全く別に1000万ドルから1100万ドル程度の資金を、シーズン中の補強のために保留していると述べていて、柔軟な補強をする準備も怠っていません。
ジョシュ・ハミルトンは3年9020万ドルという巨大な契約が残っているため、2015年シーズンにバウンスバックすることが願われてはいましたが、昨年も89試合のみの出場で、成績も図抜けたものではありませんので、そのパフォーマンスをカバーすることができないものではありません。
マイク・トラウトは2014年にさらに凄みが増し、年齢的にもこれからピークがやってくると考えられ、アルバート・プホルスも2014年にかつてほどではないものの、良い状態に戻りつつあることを感じさせる成績を残し、この主軸2人はア・リーグ西地区では最強の並びと言えます。
ファームのプロスペクトの層が薄いため、数年先にはやや不安があるエンゼルスですが、2014年と違い2015年はシーズン前半から信頼できるクローザーを抱えていますので、仮に優勝はできなくてもワイルドカードでポストシーズンを確保する可能性が高そうです。