田中将大が真のエースと呼ばれるためにはいくつかの課題があります。
まずその一つはシーズンを通して先発ローテを守る、そして200イニング以上を投げ、防御率などにおいてトップクラスの数字を残す。
そしてそれを数シーズンにわたり続けることができなければ、エース格とは言われても、真のエースというカテゴリーには入ることができません。
その田中将大にとって克服すべきことが、中4日でパフォーマンスが低下するという問題であることは広く知られているところです。
今季は中4日ではパフォーマンスが低下してしまう田中将大
ニューヨーク・ポストのKen Davidoffは2016年7月6日付の”Joe Girardi avoids obvious answer to Masahiro Tanaka dilemma”というタイトルの記事で、以下のように中4日と中5日ではパフォーマンスに違いあることを伝えています。
On five days’ rest this season, in seven starts, the right-hander is now 4-0 with a 1.05 ERA in 51 ¹/₃ innings, striking out 38 and walking five.
On four days’ rest, in which he also has made seven starts, Tanaka has a 1-2 record and 5.28 ERA in 44 ¹/₃ innings, striking out 33 and walking eight. (He’s also 1-0 with a 3.78 ERA in three starts on six days’ rest.)
For his career? He’s 7-6 with a 3.69 ERA, 113 strikeouts and 21 walks in 20 starts on four days’ rest and 17-7, 2.74, 184 and 33 on five days’ rest (and 7-1, 3.36, 71 and 14 on six or more days’ rest).
内容をまとめると以下の様なものとなります。
- 今季は中5日では7試合51回1/3で防御率1.05、4勝0敗だが、中4日では7試合44回1/3で防御率5.28、1勝2敗(中6日では3試合で防御率3.78、1勝0敗)
- キャリア通算では中4日は20試合で防御率3.69、7勝6敗、奪三振113、与四球21、中5日では33試合で防御率2.74、17勝7敗、奪三振184、与四球33(中6日以上では防御率3.36、7勝1敗、奪三振71、与四球14)
キャリア通算では中4日だと数字は落ちてはいますが、今シーズンほど極端なものではありません。そのためジョー・ジラルディ監督は「中4日でも良い時がある」などと話しています。
以下はジョー・ジラルディが話した内容を起こしたNJ.comの記事からの引用です。
“This is a question that I answer every day. I can’t pitch him on the sixth day every time. I can’t do it. You cannot — don’t have an extra guy to put in the bullpen. I know they’re different. But it’s something he has to adjust to. And that’s the bottom line. We talk about this all the time and he’s had a lot of good starts on regular rest. I know he’s better with an extra day. A lot of guys are. But we go though his every time and there’s not a whole lot I can do here because the schedule doesn’t allow me to.
ジョー・ジラルディはこの質問に辟易としているようで、映像で話している姿はフラストレーションを感じていることがうかがえます。
When you ask joe girardi about tanaka pitching on five days rest vs four days rest. pic.twitter.com/UnTXyNDX9Z
— Larry Fleisher (@larryfleisher) 2016年7月6日
中4日よりも長い間隔で投げさせたほうが数字が良いのは知っているが、スケジュールがそれを許さない。そしてregular rest(中4日)でも良い登板をしている時があると述べています。
ヤンキースが中5日以上のほうがパフォーマンスが良いことを把握していることは明らかで、通算61試合で中4日が20試合にとどまることからもうかがえます。
すでにヤンキース首脳陣は田中将大にかなり配慮していますので、これ以上は彼が中4日にアジャストすることが必要だとジラルディ監督は述べていることにもなります。
現実のMLBの日程、無制限の延長戦、ロースター構成などの制約を考えると、これ以上の特別扱いは簡単にはできないと言えます。
通常メジャーのロースターはダブルヘッダーの日に26人に広がる時、9月1日以降にアクティブロースターが40人枠に広がる時以外は25人編成となっています。
多くのチームは先発投手5人、リリーフ投手7人、野手13人で25人枠(アクティブロースター)構成しますが、長い延長戦があったり、先発投手が序盤に崩れることが多かった時には、臨時的に野手を12人して、リリーフ投手を8人に増やす措置をとることがあります。
ただ、これはあくまでも臨時的な措置であって、通常は投手の枠は12人のため、中5日を基本にする先発投手6人制にすると、リリーフ投手が6人となってしまいます。
メジャーリーグは長期の連戦が多く、ハードなスケジュールとです。
ヤンキースのオールスター後のシーズン後半のスケジュールは以下のとおりとなっています。
- 07/15-17 レッドソックス(3連戦)
- 07/18-21 オリオールズ(4連戦)
- 07/22-24 ジャイアンツ(3連戦)
- 07/25-27 アストロズ(3連戦)
- 07/28 休養日
- 07/29-31 レイズ(3連戦)
- 08/01-04 メッツ(4連戦)
- 08/05-07 インディアンス(3連戦)
- 08/08 休養日
- 08/09-8/11 レッドソックス(3連戦)
- 08/12-14 レイズ(3連戦)
- 08/15-17 ブルージェイズ(3連戦)
- 08/18 休養日
- 08/19-21 エンゼルス(3連戦)
- 08/22-24 マリナーズ(3連戦)
- 08/25 休養日
- 08/26-28 オリオールズ(3連戦)
- 08/29-31 ロイヤルズ(3連戦)
- 09/01 休養日
- 09/02-04 オリオールズ(3連戦)
- 09/05-07 ブルージェイズ(3連戦)
- 09/08-11 レイズ(4連戦)
- 09/12-14 ドジャース(3連戦)
- 09/15-18 レッドソックス(4連戦)
- 09/19 休養日
- 09/20-22 レイズ(3連戦)
- 09/23-26 ブルージェイズ(4連戦)
- 09/27-29 レッドソックス(3連戦)
- 09/30-10/02 オリオールズ(3連戦)
13連戦、10連戦、9連戦、6連戦、6連戦、17連戦、13連戦と80日で74試合を消化するスケジュールです。
リリーフ投手にも過度な連投はさせないために休養日をもうけることを考えれば、先発投手6人制は継投策にかなりの制約が生じることになります。
日本のプロ野球のように二軍に降格させても10日間で何度も昇格させることができるのとは異なり、メジャーには降格させることができる回数などに制限があります。
その降格オプションの回数が残っていない選手の場合には、ウェーバー公示してからでないとマイナー降格できません。
つまり他球団が獲得できる状態に一度晒してからでないと降格させることができないことになりますので、日本の一軍と二軍のように気軽には選手の入れ替えはできません。
このような現状のスケジュールとロースターの制約を考えれば、このようなルールに変更がないかぎり、ジラルディ監督が話すように田中将大がアジャストするしかありません。
現在の田中将大の年俸は年平均で2214万2,857ドルで先発投手してメジャー史上13番目に高い数字です。
今でこそ13番目まで落ちましたが、契約を結んだ当時はメジャー史上8番目で、紛れも無く”真のエース”という評価でのオファーでした。
しかし、中4日で勝てない状態ではメジャーでは真のエースとまでは言い難いものがあります。
中5日以上の成績であれば、この年俸でも大きな批判を受けないであろう数字になっていますので、シーズンを通して投げ切ることに加えて、中4日でも結果を残し、名実ともにメジャートップクラスの投手となってくれることを期待しています。