前田健太とロサンゼルス・ドジャースとの契約合意が様々なメディアで報じられたものの、なかなか契約合意が正式に発表されない状況が続いています。
岩隈久志は同様に合意が伝えられた後、正式発表まで多くの時間を経た後に、破談となってしまいましたが、現時点では前田健太とアメリカの東部時間で1月8日午後5時、日本時間の1月9日の午前6時までには正式に合意するとの見通しが伝えられています。
ただ、ずれ込んでいるのは肘への懸念が原因であることが、複数のアメリカの記者によって伝えられています。
右肘への懸念が前田健太を不利な立場に
第一報で伝えたのはESPNのジェリー・クランシックでした。Twitterで以下のように伝えています。
Source says #Dodgers-Kenta Maeda deal is taking a while because of concerns over his elbow. Expected to be official in next day or 2.
「関係者からの情報によると前田健太の肘への懸念があるため、正式契約にはもう少し時間がかかる見込みだ。明日か2日後に正式に発表される見込みだ」と現地時間で1月5日時点(日本時間1月6日)でツイートしています。
そのため日本時間でも1月7日、8日に正式に発表されるのではないかということです。
しかし、現地時間の1月6日に正式発表されなかったのは、野球殿堂入りの投票結果が発表される日とバッティングするのを避けるためだったとニューヨーク・ポストの名物記者であるジョエル・シャーマン氏がTwitterで伝えています。
#Dodgers were initially going to do Maeda press conf today but didn’t want to do same day as Hall, so will do it tmrw
「ドジャースは当初、今日前田健太との契約合意の記者会見をする予定だったが、野球殿堂入りの結果発表と同日にはしたくなかったので、明日になった」とのことです。
そしてジョエル・シャーマン氏はこの肘への懸念が小さくないため、インセンティブの比重が大きい契約になっていること、そしてアメリカでも日本の時と同様に投げることが出来れば1年1000万ドルのイセンティブを手にすることができ、1年1300万ドルを手にできるとツイートしています。
#Dodgers saw lots of physical red flags (elbow) which is why deal is 8 yrs, $25M with $10M annually in performance bonuses for GS etc
「ドジャースはフィジカル面(肘)での赤旗(懸念)を多く発見したため、8年2500万ドルに先発試合数などによる1年1000万ドルの出来高をつける契約となった」
Whatever physical red flags, Maeda has pitched a lot and well in Japan and if he does that here will make about $13M annually
「どのようなフィジカル面での不安があるにしても、日本で多く投げてきたようにアメリカでもできれば、1年1300万ドルを手にできることになる」
つまりこのジョエル・シャーマン氏の情報どおりであれば、最低で8年2500万ドル(29.6億円)、最大では8年1億400万ドル(122億円)を前田健太は手にできることになります。
前田健太にとって不利なリスクの高い契約であることは否定できず
「8年の契約が保証されている」というように捉えることもできるのですが、年平均で300万ドル程度の契約であれば自由契約にできる経済力がドジャースにはあります。
2015年シーズンのドジャースは1年950万ドル(約12億円)の年俸だったブライアン・ウィルソンをシーズン開幕前にリリースしました。つまり全く働かない選手に950万ドルを支払っています。
さらにトレードで放出したマット・ケンプの1800万ドル、ダン・ハレンの1000万ドル、ディー・ゴードンの250万ドルの合計3050万ドル(約37億円)も負担しています。
契約にシビアな世界のため、故障をしなくてもパフォーマンスが悪ければ自由契約になったり、中島裕之のように年俸は保証されるものの、マイナーで飼い殺しに近い扱いをされる可能性も否定できません。
そのため前田健太は故障をしないことは大前提で、さらに優勝争いをするチームで必要とされる結果を残し続けることが必要になります。
ドジャースはクレイトン・カーショー、スコット・カズミアー、ブレット・アンダーソンの3人は確定で、柳賢振が開幕に間に合えようであればそこに加わり、前田健太とアレックス・ウッドらが5番手を争うと予想されます。
さらに先発ローテのバックアップもカルロス・フリアス、マイク・ボルシンガーに加えて、ブランドン・ビーチーとも再契約をしています。
そして、シーズン途中にはブランドン・マッカーシーが復帰し、プロスペクトのフリオ・ウリアス、ホセ・デレオンらが昇格する可能性があります。
このような状況のためポスティング費用で2000万ドルを支払いはするものの、この金額はぜいたく税の対象外である上に、年俸も300万ドルから400万ドルとメジャーでは格安なため、ブルペンに回されたりマイナーで過ごす時間が多くなる可能性があります。
これまで松坂大輔、ダルビッシュ有、田中将大が手にした契約より明らかに不利な内容で、右肘への不安に加えて、中4日、硬いマウンド、少し大きいボール、様々な天候など、不慣れな環境で過ごす1年目から激しい競争にさらされることになりそうです。
またメディアの情報では途中で契約を破棄してFAを選択できるオプトアウトは契約に含まれていないとされます。
前田健太のパフォーマンスが良ければ長期間にわたり、上位クラスのFA先発投手としては安いと言える1年1300万ドルでチームのコントロール下におくことができ、故障したり、パフォーマンスが悪かったりすれば年俸を抑制するためにローテから外したり、自由契約にすることもできるドジャースにかなり有利な契約です。
ドジャースのチーム事情に振り回されやすい契約のため、前田健太がメジャーで長くプレーするためには、大きな故障をすることなく、結果を残し続けることが必要となりそうです。