球速低下と変化球の精度が不調の原因か?数字で見るジャスティン・バーランダーの不振

Detroit Tigers Top Catch

2011年に34試合251.0イニングを投げて、防御率2.40/24勝5敗/奪三振250/WHIP0.92という成績を残し、その年のア・リーグのサイヤング賞に輝いたジャスティン・バーランダーでした。

そのあと2012年にも33試合238.1イニングで、防御率2.64/17勝8敗/奪三振239/WHIP1.06で、サイヤング賞こそ逃したものの、選考投票では2位となりました。

このようにメジャー屈指の投手としてハイレベルのパフォーマンスを続けていたバーランダーでしたが、2014年は非常に苦しみました。

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メジャー定着後2番目に悪い防御率4.54となったジャスティン・バーランダー

ジャスティン・バーランダーの年度別成績は以下の表のとおりとなっています。

Justin Verlander Stats 2014

2014年は8年連続200イニング登板となる32試合206.0イニングで、防御率4.54/15勝12敗/奪三振159/WHIP1.40と勝敗こそ15勝で勝ち越したものの、防御率は2008年以来の防御率4点台となってしまいました。

ただ、この成績の低下傾向は2014年から始まったことではなく、2013年からゆるやかに始まっていたようです。

ジャスティン・バーランダーは2009年以降、投手の実力を測る指標として用いられれるFIPが2009年から2012年の4年間は2点台を推移するなど、かなり高いレベルを保っていました。しかし、2013年から下落してはじめている兆候が現れています。

【用語】

  • FIP(Field independence Pitching):味方チームの守備力の影響を除外して、投手の実力を測るための指標で、与四死球、本塁打、奪三振、投球イニングを元に算出する擬似防御率。防御率よりもFIPが低ければ味方の守備によって自責点が増えていると考えられ、FIPよりも防御率が低ければ、味方の守備によって自責点が減っていると、一般的に考えられている。

2009年以降のFIPの推移は以下のとおりとなっています。

  • 2009年:2.80
  • 2010年:2.97
  • 2011年:2.99
  • 2012年:2.94
  • 2013年:3.28
  • 2014年:3.74

2013年は3.28と3点台に落ち、2014年はさらに3点台の後半に後退してしまいました。またこの後退の傾向はK/BB(奪三振÷与死球)にも表れていて以下のように推移しています。

  • 2009年:4.27
  • 2010年:3.08
  • 2011年:4.39
  • 2012年:3.98
  • 2013年:2.89
  • 2014年:2.45

この数字は奪三振が多く、与四球が少ないほど数字が大きくなり、投手としての能力が高いと評価できる要素の1つとなるのですが、2013年は2.89に落ち、2014年はさらに2.45まで落ちています。

2014年は防御率4.54はFIPの3.74よりも0.80も悪い上に、運に大きく左右されるBABIPが.317と高く、LOB%が66.8%と低くなっていますので、運や味方の守備にも足を引っ張られたと考えられる1年ではあったのですが、バーランダー自身のパフォーマンスも下落傾向にあったことも否定できません。

不振の原因は球速の低下が原因?それとも・・・

2014年シーズン中にバーランダーが不振に陥っている最中に、球速が低下しているとの指摘がありました。実際に球速が低下していたのですが、見るも無残なというほどの下落ではありません。

MLBのデータ集計をしているブルックスベースボールによるとジャスティン・バーランダーの年度別の球速は以下のとおりとなっています。球速はマイルからキロに換算しています。

Justin Verlander velocity 2015

Pitch FXによるデータでは、2011年にフォーシームが最速で103マイル(166キロ)を計測していたジャスティン・バーランダーでしたが、2014年は159.8キロが最速で、平均球速でも154.1キロから150.1キロに落ちています。

このように一番速い時よりは球速が低下しているものの4-6キロ程度で、先発投手としてはいまだメジャーでもトップクラスの球速を維持しています。

実際にフォーシームは球速こそ落ちていて、球種別の空振り率、被打率、被長打率でも数字が悪くはなっています。

空振り率は以下の表のとおりとなっています。

Justin Verlander Whiff Rates 2015

2014年フォーシームの空振り率は7.4%で、サイヤング賞を獲得した2011年の8.7%より悪いものの、大幅に悪化したわけではなく、そのフォーシームより下落幅が大きい球種がチェンジアップです。

チェンジアップは2011年が22.7%でしたが、2013年には15.1%に、さらに2014年は13.7%まで落ちてしまいました。スライダーやカーブは2011年と大差がないのですが、チェンジアップの数字の落ち込みが大きく、奪三振率(9イニングあたりの奪三振数)が6.95と2007年以降で最低の数字になる原因の1つとなっているようです。

続いて、被打率と以下の表のとおりとなっています。

Justin Verlander Against Batting Average 2015

サイヤング賞を獲得した2011年と2014年の被打率比較するとフォーシーム.221から.283に、チェンジアップが.197から.271に、スライダーが.218から.257、カーブが.133から.265へ落ちています。

球種別の被打率においてはフォーシムが.062、チェンジアップが.074、カーブが.132、スライダーが.039と、それぞれ悪化していることになり、チェンジアップとカーブの下落幅がフォーシームよりも大きくなっています。

被長打率は以下の表のとおりとなっています。

Justin Verlander Slugging Percent 2015

フォーシームは.373から.454(.081低下)、チェンジアップが.326から.483(.157低下)、スライダーが.295から.321(.026悪化)、カーブが.198から.388(.190低下)に、それぞれ悪化しています。

ここでも低下が目立つのはフォーシームもさることながら、チェンジアップとカーブの下落幅の大きさです。

このようにフォーシームは球速が落ちたためか、相手打線につかまえられることが多くなったのですが、それ以上にチェンジアップとカーブを痛打されることも多くなっていることが、以上のようなデータでわかります。

バーランダーの球種の奪三振に占める割合はフォーシームが40%、カーブが34%、チェンジアップが14%、スライダーが12%となっています。

バーランダーが苦しんだのは、全投球の55%を占めるフォーシームの球速が落ちて以前のようには三振を簡単に奪えなくなったこともさることながら、それ以上に全投球のうち30%弱の割合でありながら奪三振のうち48%を占めていたカーブとチェンジアップが何らかの理由で打者にとって打ちやすいボールになってしまったことも、成績が低迷する原因となったと考えられそうです。

バーランダーのパフォーマンスがデトロイト・タイガースの命運を握ることに

バーランダーは30歳となった2013年シーズンから球速が下落し始めていて、32歳となる2015年シーズンにかつてのような球速を取り戻せるかどうかは不透明です。

しかし、2015年からバーランダーの年俸は2014年の2000万ドルから2800万ドルに跳ね上がり、36歳となる2019年までその年俸が続きますので、5年1億4000万ドルが残っている状態です。

デトロイト・タイガースはマックス・シャーザーがFAでチームを去り、リック・ポーセロをトレードで放出していますし、今シーズン終了後にはデビッド・プライスも契約延長交渉が積極的に行われていないようなので、FAとなることが濃厚です。

このような先発投手陣のためジャスティン・バーランダーにかかる期待は大きくならざるを得ません。

2014年は先に述べたように運もなかったため、それよりは良くなる可能性はあるものの、2013年と2014年の内容を見ると2015年も不安が残ることは否定できません。

ジャスティン・バーランダーがエースとしてのパフォーマンスを発揮できないようであれば、打線が強力ではあるもののブルペンに不安が大きいため、ロイヤルズ、インディアンスの後塵を拝する可能性が高まりそうです。

またジャスティン・バーランダーがこのまま衰えていけば、巨額年俸が負担となってしまい、タイガースはプロスペクトも乏しいため、ロースター編成で身動きがとれなくなる可能性が出てきます。

バーランダーの今年のパフォーマンスは、2015年だけでなく数年先のタイガースの動向にも影響を与えることになりそうです。