フェリックス・ヘルナンデスのチェンジアップがMLB最高の球種の1つである理由

21試合151.1回を投げて、防御率2.02・11勝2敗・奪三振163・WHIP0.90・被打率.197。

2014年7月20日終了時点で、防御率、WHIP、クオリティスタート数(19回)、クオリティスタート率(90%)がリーグ1位、奪三振、勝利数、投球回数、被打率がリーグ2位。

これらの数字を残しているのが、シアトル・マリナーズの”キング”フェリックスことフェリックス・ヘルナンデスです。2014年はフェリックス・ヘルナンデスのキャリアの中でも最高の1年になるのではとの声も聞こえるほどの、素晴らしい投球を続けています。

さらに、最近の投球は素晴らしくクオリティスタートの基準である6回以上自責点3以下をはるかに上回る、7回以上自責点2以下を12試合連続で続けています。

そのため最近12試合では92回を投げて、防御率1.37・奪三振103・WHIP0.76と圧倒的な内容で、なおかつ1試合平均7回2/3を投げているフェルナンデスです。

そのフェリックス・ヘルナンデスの最大の武器となっているのが、現在のMLBで最高の球種の1つとも言われるチェンジアップです。

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なぜフェリックス・ヘルナンデスのチェンジアップは素晴らしいのか?

まずは、論より証拠ということで、フェリックス・ヘルナンデスのチェンジアップの動画です。

この動画では89マイル(143.2キロ)を記録しています。もはやチェンジアップとは言えないほど高速で、しかも打者の手元で急激に沈む動きにMLBの強力打線もフェルナンデスの前には沈黙してしまう今シーズンです。

そのフェリックス・ヘルナンデスのチェンジアップの凄さを分析した素晴らしい記事がありましたので、それをまずは紹介したいと思います。

フェルナンデスのチェンジアップについて知っておくべき9つのこと

FOXスポーツのウェブサイト内のコラムに、スタッツの集計と分析で定評のあるFan Graphsが記事を提供しているのですが、そのFan Graphsが“NINE THINGS TO KNOW ABOUT THE BEST CHANGEUP IN BASEBALL”というタイトルでフェリックス・ヘルナンデスのチェンジアップの素晴らしさを分析していました。

タイトルを日本語に訳してみると「ベースボール(MLB)で最高のチェンジアップについて知っておくべき9つのこと」というものです。

その記事では以下のような9つの観点でヘルナンデスのチェンジアップを分析しています。

  1. ずっと投げていたわけではない。
    本人のコメントによると、「2005年から08年はほとんど投げていない。投げても1試合2,3球。2009年に遊びながらチェンジアップの握りを試しながらキャッチボールしていたら、とても良かったので使い始めた。」
    彼はMLBのデビューからしばらくは100マイルに到達しようかというファーストボール、”ロイヤルカーブ”と言われるほどのブレーキングボールで知られていた。スライダーも持っていたが、チームが故障を恐れて多く投げさせなかった。
  2. 他のプレーヤーはそれをどう呼べば良いのかわからない
    クレイトン・カーショウは「フェリックス自身がどう呼んでいるかはわからないが、彼のチェンジアップは最も驚くべきボールだ」として先発投手の球種として、MLBで最高のものかもしれないと述べる。
    エリオット・ジョンソンは「何とでもそのボールを呼べが良いが、ファーストボールのように見えて、最終的にはブレーキングボールか、スプリットのように動くチェンジアップだ。」
    ニック・ハンドリーは「なんと言えばよいかわからないが、スプリットもしくはチェンジアップだ。」
    など、チェンジアップとはされているものの、その特殊な動きのため、他の選手がチェンジアップと呼んでいいのか戸惑うほど。
  3. 三振とゴロを奪える
    キャリア全体でチェンジアップは37%の空振り率、またバットにあたっても65%がグラウンドボール(ゴロ)。さらに今シーズンはそれぞれ46%、71%に上昇していて、バットに当てること自体が難しいし、当たっても大半がゴロになってしまうため、極めて長打を浴びにくい。
  4. ティム・リンスカムのファーストボール並の球速
    リンスカムはかつてのようなスピードを失い、最近は90マイルを少し越える程度で、ヘルナンデスのチェンジアップとほぼ同じ球速。そのため打者はファーストボールとチェンジアップの見分けがつかない。またヘルナンデスのファーストボールの球速は落ちているが、チェンジアップの球速は変わらない。そのためこの2つの球種の球速差がなくなり、見分けがつかなくなっている。
  5. コマンド(制球)が素晴らしい
    縦三分割の下のゾーンから下に制球する割合が2008年には55%だったが、年々向上し、昨年は77%、今シーズンは82%となっていて、チェンジアップの8割強が打者の膝付近から下の高さに制球されている。
  6. ボールゾーンに動いているが空振りを打者がしてしまう
    ストライクゾーンから外れるチェンジアップでも、その50%を打者が振っている。
  7. どの場面でも信頼がおける球種となっている
    打者の左右を問わず、カウントが良くても、悪くても使えている。
  8. 頼りになる武器
    年々、チェンジアップによる奪三振率が向上していて、17%→21%→32%→42%→38%→36%→51%となっている。
    2014年の三振の半分はチェンジアップ。ブレーキングボールは少ないほど、肘や肩に負担が少ないとされるので、これが彼のコンスタントでかつ故障のないキャリアにつながっている。
  9. Fan Graphsの集計による評価でベスト
    ストライク判定で向上、ボール判定で低下、奪三振で向上、被安打で低下というpitch run valuesという指標などで分析すると、ヘルナンデスのチェンジアップがベスト。

以上のような観点でベースボールで最高のチェンジアップとして、フェリックス・ヘルナンデスのチェンジアップを評価しています。

もう少し簡単にまとめると、チェンジアップのはずだが高速で、ファーストボールと区別がしにくく、沈むというよりも急激に落ちるために、他の選手はチェンジアップと呼んでいいのかわらかないほどで、かつ低いゾーンに制球もされている上に、空振りを奪え、当てられても大半がゴロになるという、極めて攻略が困難なボールであるということです。

ファーストボールと球速差がないチェンジアップ

Fan Graphsの集計によると2007年以降のフェリックス・ヘルナンデスの球種の割合と平均球速は以下のとおりとなっています。

フェリックス・ヘルナンデスの年度別の球種の割合と平均球速

2009年頃からチェンジアップの握りを試しながらキャッチボールをしていたとのことですが、本格的に使い始めたのは集計された数字を見ると、2010年からとなります。

それまでは4シームとスライダーが主体の投球ですが、この2010年以降は2シームとチェンジアップが増えています。この2010年にフェリックス・ヘルナンデスはサイ・ヤング賞を受賞しています。

そして、このチェンジアップが使える球種となる前後の成績を比較してみると、チェンジアップがヘルナンデスがMLB最高クラスの投手となる武器のひとつなったことがわかります。

2008年までと2009年以降の成績を比較すると以下のようになっています。

  • ~2008年:防御率3.80/WHIP1.32/奪三振率8.01
  • 2009年~:防御率3.11/WHIP1.18/奪三振率8.75

このようにチェンジアップが配球の中で増えるとともに成績が向上していることがわかるスタッツが残っています。

2014年の球種の内訳はチェンジアップが29.0%、2シーム/シンカーが29.1%、そして4シームが17.0%となっています。4シームは4マイル、2シームも1マイルほど一番速いときよりも落ちてきている(意図的に抑えている可能性も)のですが、それがチェンジアップをより効果的にしています。

平均球速では4シームが92.4マイル(148.7キロ)、2シームが92.2マイル(148.3キロ)、そしてチェンジアップが89.5マイル(144キロ)となっていて、4キロから5キロほどの差しかありません。

このわずかな球速差では、打者がファーストボールかチェンジアップかを見極めるのはかなり難しくなります。さらにヘルナンデスのチェンジアップは打者の手元で急激に動いて沈みますので、余計に打者には区別がつきにくくなっています。

またファーストボールは球速こそ落ちていますが、キレと動きが素晴らしいので、それだけでも十分に手強いのですが、このチェンジアップがあるため、余計にファーストボールを捉えることが難しくなっています。

その証拠に決してMLBでは速い部類とはならないヘルナンデスのファーストボールにも関わらず、997球のファーストボールのうち1球も本塁打にされていません。

このファーストボールとチェンジアップに加えて、メジャーレベルで一級品とされるブレーキングボール(カーブ・スライダー)がありますので、打者からすると手に負えない状態です。

各チームがヘルナンデスの対策を講じて、1試合うまく攻略に成功しても、どの球種も一級品のため、次戦で配球を変えることによって、再び打者を幻惑しています。

そのため各チームが徹底的にデータを集めて、マーク・研究しているにもかかわらず、圧倒的なパフォーマンスを発揮することができている今シーズンのフェリックス・ヘルナンデスです。

ア・リーグの”キング”から”絶対君主”へ

フェリックス・ヘルナンデスが6月8日のレイズ戦で15個の三振を奪った試合では、以前にヘルナンデスに完全試合を喫したレイズのジョー・マドン監督をして、“完全試合の時よりも良かった”と言わしめています。その時の動画が以下のものです。

キングと言われて久しいフェリックス・ヘルナンデスですが、最近はバーランダーが不調なこともあり、ヘルナンデスがア・リーグの”monarch”(絶対君主・統治者)になりつつあると評するメディアもあるほどです。

2014年は被打率も.197と1イニングあたりの投球数(P/IP)の14.3がともにリーグ2位で、効率的な上に、打たれていません。奪三振率もキャリアハイのペースとなる9.69と、さらに凄みを増しつつあるフェリックス・ヘルナンデスです。

今シーズンははチェンジアップのキレと動きが抜群のため、フェリックス・ヘルナンデスのキャリア最高のシーズンとなるかもしれません。

最後に同地区のライバルであるアスレチックスの一塁手で22本の本塁打を放ち好調なブランドン・モスの言葉で締めくくりたいと思います。

「素晴らしいファーストボールにブレーキングボールがある。だがフェリックスのようなチェンジアップは誰も投げることができない。誰一人として。」

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