「カブスはダニエル・マーフィーをどのようにして獲得できたのか?」ウェーバー・トレードの舞台裏

シカゴ・カブスは8月16日から5試合連続で1得点、しかも、いずれもソロ本塁打と打線の得点力不足が深刻になりかけていたのですが、ダニエル・マーフィーのトレード獲得で息を吹き返しました。

シカゴ・カブスにとって非常にインパクトのある補強となっているのですが、そのトレードの裏側をESPNのジェシー・ロジャース氏が、ジェド・ホイヤーGMの証言をもとに記事にしています。

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いかにしてカブスはダニエル・マーフィーを獲得したのか?

以下はジェシー・ロジャースの記事からの引用です。

“We got the bulletin that we were awarded the claim for Murphy,” Hoyer said earlier this week. “We were surprised, obviously the way he was hitting, and also, it’s been a year, where for the most part, if we put in somewhere between one and eight or nine claims every day, we’ve generally been getting zero.”

『私たちがダニエル・マーフィーをクレームできたとの公示を受け取った時、彼の打撃の状態などを考えると非常に驚いた。』『毎日1回、多いときは8から9回も選手をクレームしているが、基本的に権利を得るに至っていなかった』とホイヤーGMは話しています。

カブスは補強のために積極的に動いたようで、ブライス・ハーパーを含めた他のナショナルズの選手も多くクレームしたようです。しかし、カブスの勝率が高いためクレームの優先順位が低く、相手チームと交渉できる権利を得ることができない状態が続いていました。

ウェーバーで複数のチームがクレームした場合の優先順位の決定は以下のような基準が用いられています。


  • 同一リーグのチームからの申し込みが優先。かつ今季の一番勝率が低いチームが優先され、そのチームが交渉権を獲得
  • 異なるリーグからのみのクレームの場合、その中で今季の一番勝率が低いチームが優先

ダニエル・マーフィーはナショナルズがウェーバーにかけた選手のため、ナ・リーグ側が優先され、その中でも、より勝率が低いチームが権利を勝ち取ることになります。

その当時はナ・リーグの13球団がクレームを見送らないと、ダニエル・マーフィーをカブスがクレームできない状況でした。

そのような厳しい条件下で、実績が十分にあり、なおかつ、最近になって好調のダニエル・マーフィーがクレームでできたので、ジェド・ホイヤーを含めたカブスのフロント陣は驚き、興奮したということです。

“When you put in a claim, you get a bulletin like a half-hour after the waiver period expires, and they tell you who you’re eligible for,” Hoyer said. “It says eligible and not eligible. In this case we were eligible. In most cases we were not eligible.”

『選手をクレームをした場合、ウェーバー期限が過ぎてから30分程度で、権利を得たか、権利を得れなかったについて公示を受けることになる。今回は権利を得ることができた。ほとんどのケースで、私たちに権利は回ってこなかった。』

“Between Aug. 1 and the Murphy deal, we felt like we needed a jolt right there,” Hoyer said. “Our mindset changed a little bit between Aug. 1 and the trade … At that moment, there was a lot of excitement obviously because of the type of player that Murphy is but also because of the way we were struggling.”

『8月1日からマーフィーのトレードまでの期間、私たちはチームに刺激を与える必要性を感じていた。その期間で私達のマインドセットは少々変わっていた。打線が低調であった時に、ダニエル・マーフィーのような選手をクレームきたため、その当時はフロントオフィスは興奮状態となった』ことが明かされています。

カブスはでは、ウェーバー公示の情報が入った日は、メールなどでフロントスタッフに共有され、大抵の場合は午前中のどこかで選手をクレームするかしないかについてミーティングを行い決断しているようです。打線の得点力不足に悩んでいたこともあり、ダニエル・マーフィーをクレームすることに関しては、即座に決断していて、さらに、クレームに成功したことでフロントオフィスは盛り上がったとホイヤーGMは明かしています。

この後の流れについては記事の内容を要約していきます。

  1. 交渉の権利を得ると、トレード成立のために許された時間は48時間のため、日曜日の午後にはナショナルズのマイク・リゾGMとの交渉を開始。
  2. マイク・リゾGMはマーフィーの年俸の負担と選手の見返りを要求
  3. 交渉が本格化したことを受け、カブスの球団幹部はオーナー側とは金銭面などについて、ジョー・マドン監督とは戦力として、クラブハウスにもフィットするかなどを相談。
  4. 月曜日の午後遅くに話し合ったマドン監督は、ダニエル・マーフィーの獲得を行うことを歓迎。
  5. オーナー側との話し合いは焦点が2つに。1つはぜいたく税の基準額との兼ね合い、2つ目はマーフィーが2015年にした同性愛者を蔑視する発言について。
  6. コール・ハメルズのトレードで209万ドルの残り年俸と来季オプションのバイアウト600万ドルをあわせた800万ドルあまりを、レンジャーズから受け取っていて、ダルビッシュの離脱によって保険金も支払われることになり、マーフィー獲得による年俸増はクリアに。
  7. 差別的な過去の発言についてはセオ・エプスタイン社長がMLB機構側の担当者と話し合い、その情報を元にオーナー側と話し合った結果、問題ないとの判断に。
  8. 火曜日の午後12時30分が48時間のトレード期限。その目前の午後12時28分頃に、条件面も含めてトレードが合意に。

ダニエル・マーフィーがクレームされずにカブスまで権利が回ってきたことについてジェド・ホイヤーGMは行かように話しています。

In this case, the Nationals were freeing themselves from Murphy’s contract, which would save them around $4 million to $5 million. That also scared away those 13 other teams. At least that’s how Hoyer and Murphy see it.

“The likely reason he got to us is that’s a big financial bite for a lot of teams to get five or six weeks out of a player,” Hoyer said. “I think that’s the reason he cleared.”

その時点でマーフィーの年俸が400万ドルから500万ドル程度残っていて、ナショナルズはそれを全額負担してもらうつもりでウェーバーにかけていました。そのことがカブスよりも先にクレームできた他の13チームを怯ませたのではないかと、ホイヤーGMとマーフィー本人は推測しているとロジャース氏は伝えています。

さらに「5週間から6週間しか契約が残っていない選手に、その金額を支払うこは多くのチームにとって大きな重荷なので、彼がウェーバーをクリアしてきて、私たちが獲得できたのではないだろうか。」とホイヤーGMが話したことも付け加えられています。

ただ、他のメディアなどでは2015年の差別的な発言も、クレームされなかった理由の1つとして考えられるとも言われています。

ウェーバーのトレードは、下位のチームが上位のチームを追いかけていくのに有利なルールが設定されています。そのため優秀で年俸の負担が小さい選手が、リーグ1位、2位を争う勝率のチームのところまで残ることは稀です。

ただ、今年のダニエル・マーフィーや昨年のジャスティン・バーランダーのように年俸が高額であったり、翌年以降も契約が残っていると話が変わってきます。

ジャスティン・バーランダーは8月のウェーバー・トレードでアストロズに移籍していますが、ア・リーグに優先順位があったため、アストロズよりも勝率の低かったヤンキースがクレームすることもできました。

しかし、2017年の残年俸が500-600万ドルもあるだけでなく、36歳と37歳の2年5600万ドルの契約が残っていることもあり、ヤンキースはクレームすることを見送りました。仮にタイガースが「単に契約ごと引き取ってもらう」ことを選んだ場合には、巨額契約をそのまま引き取ることになるリスクがあったためです。

このヤンキースの決断は合理的なものではあるのですが、結果として2017年のポストシーズンを大きく左右することにもなりました。

ジャスティン・バーランダーはディビジョンシリーズでリリーフも含め2勝をあげ、リーグチャンピオンシップでは2試合16回で防御率0.65、2勝0敗という素晴らしい結果を残し、ヤンキースの前に立ちはだかりました。もしヤンキースがクレームして獲得していれば、そこまでいかなくてもアストロズにバーランダーがいなければ、リーグチャンピオンシップの行方が変わっていた可能性は十分にあります。

昨年のアストロズにとってのジャスティン・バーランダーのように、シカゴ・カブスのダニエル・マーフィーのウェーバーによるトレード補強が、ナ・リーグのポストシーズンに大きな影響を与えるかもしれません。

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