先発ローテーションの補強に動きながらもザック・グレインキー、ジェフ・サマージャ、ジョニー・クエトの争奪戦に敗れ、岩隈久志とはフィジカルチェックでの問題を懸念して破談となり、チャップマンのトレードはDV問題で台無しになるなど補強が進まないドジャースでした。
そのロサンゼルス・ドジャースがFA先発左腕のスコット・カズミアーと4年4800万ドルで合意したことが、チームから正式に発表されました。
スコット・カズミアーの獲得に成功も先発ローテは左腕に偏ることに
スコット・カズミアーは2011年シーズン中に解雇され、2012年は独立リーグでプレーすることを余儀なくされたのですが、2012年12月にインディアンスとマイナー契約を結び、そこから這い上がってきました。
その2013年は開幕から先発ローテに加わり、29試合158.0回で防御率4.04/10勝9敗/奪三振162/WHIP1.32と結果を残し、そのオフにアスレチックスと2年2400万ドルで合意しました。
そのアスレチックスでは2014年に32試合190.1回を投げて防御率3.55/15勝9敗/奪三振164/WHIP1.16と好成績を残し、2015年も109.2回を投げて防御率2.38/WHIP1.09と好調だったため、アストロズにトレードで移籍することになりました。
アストロズでは73.1回で防御率4.17とイマイチでしたが、2015年トータルでは31試合183.0回で防御率3.10/7勝11敗/奪三振155/WHIP1.21という成績を残していました。
シーズン途中に移籍したためクオリファイング・オファーの対象外となり、ドラフト指名権を失うという問題がないこともあり、複数の球団が獲得に興味を示していましたが、ドジャースが競り勝ったことになります。
これでドジャースはクレイトン・カーショー、スコット・カズミアー、ブレット・アンダーソン、アレックス・ウッドという左腕4人で先発ローテが編成されることになりました。
ここに左肩に不安があるものの開幕には間に合うとの見通しがある左腕の柳賢振、トミー・ジョン手術を受けたためオールスター前くらいの復帰が予想される右腕のブランドン・マッカーシーが控えるという状況となっています。
スコット・カズミアーとの契約は変則的です。年俸の内訳は以下のとおりとなっています。
- 2016年:契約金500万ドル 年俸300万ドル
- 2017年:800万ドル
- 2018年:800万ドル
- 2019年:800万ドル
- 2020年:800万ドル
- 2021年:800万ドル
3年契約を終えた後の3年間に2400万ドルを支払う契約となっています。
そしてこの契約内容に加えて2016年シーズン終了後に契約を破棄してFAを選択できるオプトアウトの権利もカズミアー側が持っているようです。
仮に1年でカズミアーがオプトアウトした場合には2017年に800万ドルをドジャースが支払うことになるようで、オプトアウトする場合には実質的に1年1600万ドル(500+300+800)の契約となります。
この契約内容を見る限り、ドジャースは2016年シーズンの年俸総額を大きくしたくない意向を持っていることが伺えます。
2016年のドジャースはぜいたく税のラインである1億8900万ドルを超過することが確実なため、実際には年俸の1.5倍の金額を用意する必要があります。
オーナーグループがシーズンオフ当初に「優勝ができる戦力を維持しながら年俸総額を2億ドル前後に圧縮することが望ましい」という意向を表明していましたが、それに沿った動きとなっています。
もちろんスコット・カズミアーのように新しく獲得する選手の年俸の割り振りを変えることで調整することはできますが、基本的には年俸総額を増やしたくないスタンスであると考えられます。
前田健太との交渉に影響を与える可能性が
このような年俸総額抑制という方向性に加えて、契約が残っている柳賢振、ブランドン・マッカーシーらが2016年シーズン中には復帰します。
さらにプロスペクトとして期待されていて、MLB全体のプロスペクトランキングでNO.4にランクされるフリオ・ウリアスが3Aに昇格していて2016年にメジャーデビューする可能性があります。
他にもMLB全体でNO.23にランクされるホセ・デレオン(Jose De Leon)が2015年を2Aで終えていて、こちらも2016年シーズン中に昇格できる可能性があります。
そしてMLB全体でNO.54にランクされていて、トレードでホワイトソックスから獲得したフランキー・モンタス(Frankie Montas)はマイナーでは先発投手として育成され、メジャーではリリーフ中心ではありますが、すでに登板しています。
そのためモンタスも先発ローテのバックアップとして期待できる状態であります。
これらの選手が遠くない将来に戦力として期待できる上に、他にもプロスペクトを多く抱えているため、先発投手をトレードで獲得できる層の厚さがファームにはあります。
また、ポスティング費用を含めて5年8000万ドルを前田健太に支払うとするならば、それ以下の金額でFA市場に残っていてメジャーで実績のあるイアン・ケネディ、ヨバニ・ガヤルド、チェン・ウェイン、ティム・リンスカム、カイル・ローシュなどを獲得できる可能性もあります。
FAとトレードでの選択肢も豊富で、期待できる若い選手の昇格も近づいているため、前田健太に2000万ドルのポスティング費用を支払って、さらに6年から5年の長期契約を用意し、年俸も6000万ドルから8000万ドルを支払うところまで踏み込むかは不透明です。
交渉は継続されると予想されますが、1月8日までという限られた時間内で合意する必要がありますので、年俸が安く抑えられた契約であれば合意の可能性が高まります。
日本時間では1月9日の午前6時が期限となりますので、そこまでの急展開があるのか注目されます。