「カーブによるピッチング革命」MLBで重要度を増す最古の変化球

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野球において「カーブ」が誕生したのは、ちょうど150年前とされていて、「カーブ」は最も古く、最も歴史の長い変化球となっています。

その後、シュート、ナックル、スライダー、スプリットなど様々な球種が誕生し、ツーシーム、カットボールと行った打者の手元で動かすムービングボールが隆盛を極めました。

しかし、MLBが導入しているPITCH FX、Statcastといった最先端の科学技術の導入により、ピッチングの常識が変わりつつあるようです。

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誕生から150年を迎える最古の変化球が再評価

スポーツイラストレイテッド電子版のTom Verducci氏がピッチングにおいて、ファーストボールの球速以上に、カーブの重要度が増しつつあることを記事にしています。

This season marks the sesquicentennial anniversary of the first curveball (and its first controversy). So it’s fitting that McCullers and the red-hot Houston Astros are at the forefront of a revolution in pitching. Spin is in. Thanks partly to technology and the ubiquity of high velocity, the curveball is enjoying a very happy 150th birthday.

『今シーズンはカーブが誕生してから150周年記念となっているが、「ピッチング革命」のフロントランナーとなっているランス・マッカラーズ・ジュニアと好調なヒューストン・アストロズが、それに相応しい』と述べています。

その内容について続いて以下のように説明しています。

The Astros soared to the best start in franchise history (29–15) by throwing 14.1% curveballs, a regimen exceeded only by the White Sox (16.6) and the Red Sox (14.6) and Indians (14.2%). Houston ranks next to last in percentage of fastballs thrown (47.3).

『アストロズはホワイトソックス(16.6%)、レッドソックス(14.6%)、インディアンス(14.2%)に続く高い頻度となる14.4%の割合でカーブをチーム全体で投げ、29勝15敗という球団史上最高のスタートを切っている』こと、そして『ファーストボールの割合は47.3%と2番目に低い頻度になっている』とのことです。

これだけでは、カーブを多く投げることと好成績に強い因果関係がないようにも見えるのですが、アストロズはチーム全体の方針としてカーブの割合を増やしているようです。

ジェフ・ルフノーGMが以下のように話しています。

“It’s easier these days to find guys with good fastballs, because there are a lot of guys who throw in the mid-90s and high 90s,” says Houston general manager Jeff Luhnow. “But finding a guy who can actually spin a ball, it’s a skill teams are looking for more now because it’s a differentiating factor. If you can find a guy that can throw hard and spin a ball, that usually bodes well.”

『最近は多くの選手が90マイル中盤から後半の球速を出すことができるので、良いファーストボールを持っている投手を見つけるのは容易になっている』『しかし、ボールに多くに回転を加えることができる選手は、ゲームに違いをもたらすことができるため、そういうスキルを持つ選手を探している。ハードにスピンの効いたボールを投げることができる選手を見つけることができれば、それはとても良い前兆だ』とルフノーGMは話しています。

ハードにスピンを効いたカーブを投げることができることは、大きなアドバンテージとなり、大きな違いを生み出すことができるため、アストロズはそのような投手を探しているとのことです。

アストロズがこのような判断をしているのは感覚的なものではなく、数字やデータに基づいた分析から生み出された方針であり、指針です。

カーブとファーストボールのミックスを重視するMLB球団

それを裏付けるようにナ・リーグのあるGMが以下のように話していることを、Tom Verducci氏は伝えています。

Said one NL general manager, “Three teams have become big, big believers in the combination of high fastballs and curveballs: the Astros, Dodgers and Rays. Those teams are heavy into analytics. The game is changing away from the sinker/cutter/slider guys.”

『3チームが「高速のファーストボール」と「カーブ」の組み合わせへの強い信奉者になっている。その3チームとはアストロズ、ドジャース、レイズだ。それらのチームはデータ分析に大きく傾倒している。野球はシンカー、カットボール、スライダーを投げる選手たちから離れ始めている。』

シンカー(ツーシーム)、カットボール、そしてスライダーが隆盛したメジャーリーグでしたが、カーブを重視する方向にシフトしつつあり、その先陣を切っているのがデータ解析、スタッツ解析を重視しているアストロズ、ドジャース、レイズの3球団とのことです。

PITCH FXやStatcastによって、以前とは比較にならないほど球種別の詳細なデータが収集されるようになりました。

それらのデータを重視するドジャース、レイズ、アストロズは、打者の手元でボールを動かすシンカー(ツーシーム)、カットボールよりも、カーブの方が打者を仕留めることにおいて、より効果的、より強力であるという結論に至ったからこそ、こういう方針をとっていることは間違いありません。

ただ、カーブが投球に占める割合がMLB全体で増えているわけではありません。しかし、特定のチームと特定の選手がカーブの割合を増やしていることが紹介されてます。

Among veteran pitchers throwing a career-high percentage of curveballs (which includes the knuckle curve) are Drew Pomeranz of Boston (45%), Alex Cobb of Tampa Bay (36%), José Quintana of the White Sox (32%), James Paxton of Seattle (20%), and Rick Porcello of Boston (19%).
They have followed the recent lead of pitchers such as Clayton Kershaw and Rich Hill of
the Dodgers and McCullers, who have found success by throwing more breaking balls and
fewer fastballs.

『ドリュー・ポメランツ、アレックス・カッブ、ホセ・キンタナ、ジェームズ・パクストン、リック・ポーセロらはキャリアハイの割合でカーブを投げている』こと。そしてこれらの投手は、『ファーストボールの割合を減らし、ブレイキングボールを増やすことで成功しているクレイトン・カーショー、リッチ・ヒル、ランス・マッカラーズ・ジュニアらの後を追っている』と伝えています。

カーブの割合を増やすることで成功したカーショー、ヒル、マッカラーズらの後を追うように、カーブを多く投げる投手が増えつつあることになります。

リック・ポーセロとドリュー・ポメランツを先発ローテに抱えているレッドソックスのジョン・ファレル監督は以下のように話しています。

“The data is showing, if the curveball is your best pitch, use it more often,” says manager John Farrell of the curveball-mad Red Sox. “It used to be that if you threw less than 60%
fastballs, you were not going to start. That’s gone out the window.”

『カーブがベストの球種だとデータ示しているのなら、その割合を増やすべきだ。過去にはファーストボールの割合が60%を切る投手は先発させることができないと考えられていたが、今はその考えは古くなっている。』とファレル監督が話しています。

効果的な球種だが、教えることが難しいカーブ

このように最古の変化球であるカーブが見直されつつあるのですが、問題なのは他の球種と異なり教えるのが難しい球種であることです。最も打てないカーブを投げるとされているクレイトン・カーショーは”It’s tough to teach people.(人に教えることが難しい)と話しています。

カーブを教えることが難しいとなると重要になるのが、元々、スピンの効いたカーブを投げることができる投手を探すことになります。

So inscrutable is the magic of a curveball that it is accepted wisdom in the game that, while pitchers can learn to sink a baseball (with a two-seamer) and cut it (with a cutter or slider), they generally cannot learn how to throw a great curve. It is not a projectable pitch.
Organizations have learned that if someone does not show an aptitude to spin the baseball as an amateur, it’s foolish to expect him to acquire the skill.

『カーブのその威力が計り知れないものがあることが常識として受け入れられた。しかし、投手はシンカー、カットボール、スライダーの投げ方を学ぶことはできるが、一般的に「素晴らしいカーブ」の投げ方は学ぶことができない。身につけることを想定できない球種だ。そうなると、アマチュア時代にボールにスピンを加えることができなければ、それをプロで身につけることができると予想するのは愚かなことになる』

シンカー、カットボール、スライダーはプロに入っていから教えることで身につけることができるため、アマチュア時代に投げれなくても、さほど大きな問題ではありません。

その一方で、カーブは教えられて身につけることができないもので、ある面、天性で身につけるものであるため、アマチュア時代に得意でなかった投手に教えたとしても、そこそこのカーブにしかならないということになります。

そのような考えを受け入れると、アマチュアをスカウトする上で注目すべきるポイントが変わることに繋がります。

スピンの効いた鋭い曲がりをもつカーブが最も効果的な変化球であるにも関わらず、教えるのが難しいのならば、カーブが得意なアマチュアを探して、獲得することが重要になるのは自然なことです。

その考えについてアストロズのジェフ・ルフノーGMは以下のように話しています。

Says Luhnow, “Yes, I agree, which is why there’s a lot of focus in the amateur world on finding guys who can spin a baseball. It becomes the differentiating factor. It’s not impossible to teach, but it is harder to teach than a slider.”

『私はその考えに賛成だ。なのでアマチュアの選手をスカウティングする際に、ボールにスピンをかけることができる投手が注目されている。それが違いを与える要因となっているからだ。教えることが不可能なわけではないが、教えるのはスライダーよりも難しい。』

「カーブによるピッチング革命」が選手の評価を変えることに

アストロズの先発投手陣はカーブを得意とする投手が多く抱えています。ダラス・カイケルのスライダーは79マイルと球速が遅く実質的にカーブのような動きをしています。

ランス・マッカラーズ・ジュニアはナックルカーブがかなり高速で、この球種がブレイクの兆しを支える要因となっています。そして先発ローテを構成するチャーリー・モートン、マイク・フィアースらはカーブを持ち球としているだけでなく、高い割合で投げています。

現在は故障者リストに入っているコリン・マクヒューは2014年までパッとしない投手でしたが、シンカーを投げるのをやめさせてフォーシーム、カットボール、そしてカーブだけを投げるようにさせて2015年に19勝7敗とブレイクさせています。

記事を書いたTom Verducci氏によると、昨年ワールドシリーズ制覇目前まで行ったインディアンスは、ポストシーズンにおいて、非常にカーブに頼る配球をしていたとのことです。

ドジャースのリッチ・ヒルは毎年のようにチームが変わるジャーニーマンでしたが、レッドソックス在籍時にカーブを多く投げる投球スタイルに変えたことでブレイクし、アスレチックスと1年600万ドルを結んだ後、ドジャースとは3年4800万ドルの大型契約を結ぶに至っています。

この最古の変化球である「カーブによるピッチングの革命」は着実に進行しつつあります。そしてこのトレンドはリッチ・ヒルの契約に反映されているようにFA市場での投手の価格に影響を与えています。

そして、このトレンドは、今季終了後にFAとなるダルビッシュに大きくプラスに働く可能性があります。

アストロズがチャーリー・モートンに2年1400万ドルを提示したことに、首を傾げる専門家が多く、リッチ・ヒルに対しても同様の反応があり、ドジャースは大盤振る舞いをしたというような評価が多くありました。

しかし、これらの2チームはカーブを投げる能力を重要視していたため、今までの実績が素晴らしくなくても、それなりの金額の複数年契約を提示したと考えられます。

ダルビッシュのファーストボールの平均球速は94マイルを超えるなど上昇し、さらに多くは投げていないもののカーブはメジャー通算で被打率.096と驚異的な数字を残すなど、現在のトレンドに合致する投手です。

この「カーブによるピッチング革命」がドラフト、インターナショナル、プロスペクト、FA選手の評価にどのような影響を与えていくのか注目されます。

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