例年よりもかなり動きが鈍く、メジャーレベルの主力クラスの選手が動いたのはマリナーズがアスレチックスからリオン・ヒーリーを獲得し、エミリオ・パガンを放出したくらいにとどまります。
シーズンオフの大型トレードや巨額のFA契約もメジャーリーグの醍醐味の一つであることを考えれば、2017-18シーズンオフの序盤の動きはかなり退屈なものとなっているのは否定できません。
これからウインターミーティングに向けての期間は、さすがにそろそろ動きが具体化することが予想されるのですが、このシーズンオフを盛り上げてくれる可能性がある5球団をMLB公式サイトのリチャード・ジャスティス氏がピックアップしています。
その5球団とコメントの要約は以下のとおりとなっています。
1. セントルイス・カージナルス
- 2年連続でカブスの後塵を拝し、フロントは戦力アップとクラブハウスに違う雰囲気をもたらそうとしている
- 野球運営部門のトップであるモゼリアックは大きな動きを過去にもやってきている
- 補強に動ける資金力も交換要員にできるプロスペクトがある
2. ボストン・レッドソックス
- 野球運営部門のデーブ・ドンブロウスキー社長はミゲル・カブレラ、クレイグ・キンブレル、クリス・セール、デビッド・プライス、マックス・シャーザーなど大型トレードの実績があり、大きい動きにひるむことはない。
- 中軸の打者を必要としていて、ジャンカルロ・スタントンという完璧にニーズにマッチする選手が市場にいる。
3. アトランタ・ブレーブス
- 大型トレードを成立させることできるプロスペクトを質と量ともに抱えている
- 再建から勝負する球団になるための転換期にある
- 新しくGMに就任したアレックス・アンソポロスはブルージェイズ時代にもジョシュ・ドナルドソン、R.A.ディッキー、デビッド・プライス、トロイ・トゥロウィツキーと大型トレードを成立させている
- アレックス・アンソポロスはロイ・ハラデーをフィリーズに放出したこともある
4. サンフランシスコ・ジャイアンツ
- 32年間でワーストのシーズンを終えたものの、2018年には勝ちに行く姿勢。
- チーム総得点が両リーグ29位で得点力アップが必要。
- スタントン獲得に動く上でのネックはプロスペクトが乏しい。
- ロレンゾ・ケイン、J.D.マルティネス、マイク・ムスターカスなどがフィットするが、そのうち1人と契約するだけで年俸総額は2億ドルを越えてしまうのもネック。
- ブランドン・クロフォードのような選手をトレードしない限り、多くの選択肢はない現状
5. シアトル・マリナーズ
- ジェリー・ディポトはマリナーズのGMとなった2年間で95選手がからむ37のトレードを成立させている
- すでにアスレチックスからリオン・ヒーリーを獲得する良いスタートを切っている
- 大谷翔平の獲得に全力を傾けることを明言している
- もし大谷翔平を獲得できれば、ジェリー・ディポトGMは残りのシーズンオフを休養しても大丈夫になるが、そうはしないだろう
以上のようなチームをリチャード・ジャスティスは大きく補強に動く可能性があるチームとして選んでいます。
この5チームの中でも、もっとも大きく動くことができるのがセントルイス・カージナルスです。FA市場、トレード市場のどちらでも大きな動きができる状態となっています。シカゴ・カブスとの力関係をひっくり返すためには大幅なテコ入れが不可欠で、それが可能な資金力とプロスペクトが揃っていますので、今後の動きが最も注目される球団の一つであることは間違いありません。
ボストン・レッドソックスは大型トレードを連発してきたこともあり、以前ほどには質の高いトレード要員は抱えていません。ただ、若いメジャーレベルの選手を加えたパッケージにすることで魅力的なオファーを作りだすことができます。さらに大きいのが補強資金が柔軟に使えることです。2017年にぜいたく税の基準以下に年俸総額を抑えたことにより、ぜいたく税の税率がリセットされました。これを受けてオーナーは資金投入にゴーサインを出しています。
参考記事:レッドソックスが「ぜいたく税を回避」税率リセットで補強資金は潤沢に
レッドソックスも少なくとも1つは大型トレード、大型FA契約を結ぶ可能性が高いと予想されます。
サンフランシスコ・ジャイアンツは大きな補強を行う姿勢を見せていますが、ジャンカルロ・スタントンやJ.D.マルティネスらを獲得した場合には、年俸総額を削減して、ぜいたく税の問題を軽減する必要があります。そのため一つ目の大きな動きに続いて、大型契約のベテランの放出を模索することになるため、結果として大きな動きを連発する可能性があります。
アトランタ・ブレーブスは、ジョン・ハートがトップとして「選手育成によるチーム強化」を志向していましたが、ジョン・コッポレラ前GMのインターナショナル契約における重大な違反による影響もあり、チームを去ることを選んでいます。新しくGMとなったアレックス・アンソポロスはブルージェイズ時代にファームを薄くしてしまいましたが、メジャーレベルでの戦力を充実させて結果を残すという点においては大きな功績を残しています。アレックス・アンソポロスが編成の主導権を握ることになりますし、現時点では年俸総額にも余裕があるため、大きな動きがあっても驚きはない条件が揃っています。
シアトル・マリナーズは、大谷翔平以外で大きな動きができるほどの年俸総額の余裕があるとは言えない財政状態です。さらに、これまでのディポトGMが成立させたトレードの中では、タイファン・ウォーカーを放出し、ジーン・セグラを獲得したトレードが1番大きな動きだったと言えるもので、数は多いものの大型トレードと言えるようなものは見当たりません。細かくロースターの入れ替えを行うかもしれませんが、ヘッドラインを飾るような動きまでは微妙なところです。
退屈なGMミーティング、退屈なシーズンオフという感が強まりますが、FA市場とトレード市場でともに人材が多く残っていますので、これらのチームを中心として活発は動きが期待されます。