31勝40敗と負け越し、地区首位の背中もワイルドカード圏内からも遠ざかりつつあり、さらには各スタッツの専門サイトではポストシーズン進出の確率が10%前後で推移しているレッドソックスです。
レッドソックスのフロント、首脳陣、選手ではデビッド・オルティズ、ダスティン・ペドロイアらの主力選手は諦めない姿勢であることを強調するも、トレード期限が近づくに連れて、地元メディアにはあきらめムードが漂い始めています。
そのような状況下でボストン・グローブの名物記者であるニック・カファード(Nick Cafardo)が6月21日付けの記事で”10 steps to fix the broken Red Sox(壊れたレッドソックスを修理する10ステップ)”と題して、チームの再建策を提案しています。
ニック・カファード(Nick Cafardo)が提案する再建への10ステップとは?
ニック・カファードが提案するチーム再建のための10ステップの要約は以下のとおりとなっています。
- エースがいない。2015年だけでなく来季以降も問題で補強が必要
Eduardo Rodriguezは素晴らしいがジャッキブラッドリーJr.、ムーキー・ベッツ、ブレイク・スワイハート、イグザンダー・ボガーツのように若い選手(フェリックス・ヘルナンデスやクレイトン・カーショーを除いて)はアジャストする時間が必要。
シーズンオフのFA市場を待った場合にはジョニー・クエト、ジョーダン・ジマーマン、デビッド・プライスにレスターの7年1億5500万ドルが必要になるだろう。しかも、一番ボストンにフィットすると考えられるデビッド・プライスはマックス・シャーザーの7年2億1000万ドルを越える可能性も。
ビクトリーノ(1300万ドル)、ナポリ(1600万ドル)、マスターソン(950万ドル)らがFAとなり、3850万ドルが削減できるが、ルスネイ・カスティーヨ、ヨアン・モンカダのキューバ選手2人に1億3500万ドルの契約している状況では、あまり予算のスペースがない。
コール・ハメルズ(4年1/2で1億1200万ドル)が有力な候補となる。フィリーズが年俸を負担する意志を示しているし、マニュエル・マーゴット、ブライアン・ジョンソン、デベン・マレロ、ブライス・ブレンツ、ジャッキ・ブラッドリー jr.らをフィリーズが気にっているので、これらの選手のパッケージでも成立するのではないか。
- クレイ・バックホルツのトレード
2016年は1300万ドル、2017年は1350万ドルのチームオプションで、行使しない場合のバイアウトも24万5000ドル、50万ドルとリーズナブル。マーケットの小さいツインズでも負担できるし、タイガースであれば問題ない規模の年俸。すでにロイヤルズ、パドレス、ブルージェイズが興味を示している。 - ルスネイ・カスティーヨのトレード
ヨアン・モンカダは19歳で発展途上でジャッジできないが、一方のカスティーヨは27歳。未だ7250万ドルの価値を発揮していないが、これが続くのであれば他に投資したほうが良い。ただ、トレードの相手を見つけるのは容易ではない。 - ダイヤモンドバックスのトニー・ラルーサのようにGMに疑問を呈せる人物が必要
あるベテランGMはラリー・ルキーノの果たす役割が減ったことが、レッドソックスの問題となっていると分析している。前オリオールズの野球運営部門の社長をしていたアンディ・マクフェイルが良いが、フィリーズがすでに動いている。 - ビル・ジェームズの正反対のタイプのアドバイザーを雇う
選手の評価・分析において精度を高めるために、現在アドバイザーを務めているビル・ジェームズの正反対のタイプの人物を雇ってバランスをとるべき。セオ・エプスタインがビル・ジェームズとともに、ビル・ラジョイーにもアドバイザーを務めさせていたときは、うまく機能していた。 - 数字の分析と人間の目によるスカウティングのバランスをとるべき
サンフランシスコ・ジャイアンツはこの面で長けている - プレーヤーがボストンに馴染めるようにしないといけない
カール・クロフォード、エイドリアン・ゴンザレスはフィットせず、ハンリー・ラミレスもそうなる可能性が。 - ブロック・ホルトを1つのポジションに固定する。
スーパーユーティリティの役割をこなしながら良いパフォーマンスを見せているが、シーズン後半でも維持させるためにライトに固定したほうが良い。 - トレード期限前に多くの選手を放出し、見返りを手にしておく
マスターソン、ナポリ、ビクトリーノ、クレイグ、ナバ、ハニガン、上原浩治、オガンドら優勝を争うチームが欲しがる選手をトレードに出してミドルレベルのプロスペクトを獲得しておく。 - チームが低迷し続け、ジョン・ファレルではまともらないなら監督を変える必要が
パドレスのバド・ブラック同様にジョン・ファレルの責任ではないものの、低迷が続けば変えざるを得なくなる。新しく監督に据えるとするならマリナーズとインディアンスで監督をしたア・リーグ最優秀監督なったエリック・ウェッジ、ラテン出身の選手への影響が大きいアレックス・コーラ、元レッドソックスの外野手でドジャースで選手育成の責任者を務めるゲーブ・キャプラーあたりが良いのではないか。
このうちルスネイ・カスティーヨとハンリー・ラミレスの件に関しては、やや具体性がかけますが、それ以外は実践が可能な方策と言えるのではないでしょうか。
レッドソックスは選手のスカウティングと評価・分析に問題があるのでは?
レッドソックスは昨年はプロスペクトたちが絶不調に陥り、主力選手たちも力を発揮できずに低迷しました。
そのチームのテコ入れとして主力選手を放出して、ヨエニス・セスペデス、アレン・クレイグ、ジョー・ケリーらをトレードで獲得し、さらにはルスネイ・カスティーヨと大型契約を結びました。
しかし、アレン・クレイグは大不振で3Aに降格し、ジョー・ケリーもいつ先発ローテ失格の烙印を押されてもしかたない状態で、ルスネイ・カスティーヨは27歳という一番良い年齢でありながら、あまり働いていません。
さらにシーズンオフのトレードでリック・ポーセロ、ウェイド・マイリーらを獲得し、シーズン開幕前に大型の契約延長しましたが、特にリック・ポーセロに関しては失敗の大型契約との声も出る状態となっています。
一方でトレードでリック・ポーセロのために放出したヨエニス・セスペデスが打率.308/本塁打10/打点39/出塁率.340/長打率.508/OPS.848と活躍し、ジョー・ケリーとアレン・クレイグのために放出したジョン・ラッキーが防御率3.41/6勝4敗/WHIP1.22とメジャーリーグ最低年俸(50万7000ドル)で好投しています。
またFAで大型契約を結んだハンリー・ラミレス、パブロ・サンドバルともに期待を裏切るパフォーマンスにとどまっています。
アンドリュー・ミラーのトレードで獲得したエドゥアルド・ロドリゲスこそ、その価値を発揮しつつありますが、この1年間に行われたそれ以外の補強の大半が失敗と言える状態となっているレッドソックスです。
また期待されていたプロスペクトもメジャーでスムーズにアジャストさせるノウハウを、カージナルス、レイズ、パイレーツのようには確立できていないなど、選手育成面での課題も抱えています。
レッドソックスの一連の補強の結果とプロスペクトたちの現状を見ると、スカウティングと選手の能力の評価・分析に大きな問題があると言わざるを得ません。
そのためベン・チェリントンGMにストップをかけることができるような野球に関する見識のある社長や選手の評価のバランスをよく出来るアドバイザーが必要というニック・カフォードの指摘は的を射ているように思われます。
もしこのスカウティングや選手評価の問題が解消されなければ、トレード期限前に上原浩治、ビクトリーノ、ナポリ、クレイグ、バックホルツらをトレードに出しても、昨年と同様の問題を生みだす可能性があります。
レッドソックスの立て直しはグラウンドよりもフロントから必要なのかもしれません。