なぜパワーヒッターが評価されなかったのか?スポーツ・イラストレイテッドが4つの理由を指摘

2016-17シーズンオフはFA市場の先発投手の人材が不足していることは一目瞭然でした。

その一方で、長打力のあるパワーヒッターとリリーフ投手に関しては、それなりに人材が揃っていて、FA市場の動きはそれらの選手が話題の中心になると思われました。

しかし、大型契約を手にしたのはリリーフ投手で、パワーヒッターたちは軒並み低い評価となり、シーズンオフ当初に予想されていたような契約は手にできませんでした。

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パワーヒッター・スラッガータイプの選手には受難のシーズンオフに

主なFAパワーヒッターの契約と2016年の本塁打数とOPSは以下のとおりとなっています。

  • ヨエニス・セスペデス(本塁打31/OPS.884)4年1億1000万ドル
  • イアン・デズモンド(本塁打22/OPS.782)5年7000万ドル
  • エドウィン・エンカーナシオン(本塁打42/OPS.886)3年6000万ドル
  • マーク・トランボ(本塁打47/OPS.850)3年3750万ドル
  • ホセ・バティスタ(本塁打22/OPS.817)1年1800万ドル
  • ブランドン・モス(本塁打28/OPS.784)2年1200万ドル
  • マイケル・ソーンダース(本塁打24/OPS.815)1年900万ドル
  • マイク・ナポリ(本塁打34/OPS.800)1年850万ドル
  • クリス・カーター(本塁打41/OPS.821)1年350万ドル
  • ペドロ・アルバレス(本塁打22/OPS.826)未契約

エドウィン・エンカーナシオンは近年5年間の本塁打数が193で、1シーズン平均で38.6本、OPSは.912とメジャーでも屈指の数字を残し続けていました。

さらに2016年には42本塁打、127打点という成績を残していましたので、1億ドルを越える契約は確実だとの見通しがありましたが、結果は3年6000万ドルとなりました。

インディアンスのワールドシリーズ進出に貢献したマイク・ナポリは34本塁打、101打点がキャリアベストの数字を残したのですが、1年600万ドルに2年目のオプションが破棄された場合のバイアウトの250万ドルを含めた1年850万ドルの契約しか手にすることができませんでした。

2016年の両リーグの本塁打王も契約がなかなか決まらず越年となり、マーク・トランボは3年3750万ドルと当初の予想を下回る金額となり、クリス・カーターにいたっては1年350万ドルとかなり低い金額で契約を結ばざるを得なくなりました。

このようにパワーヒッター、スラッガーには厳しいFA市場だったのですが、逆にリリーフ投手にお金が使われるシーズンオフとなりました。

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なぜパワーヒッターではなくリリーフ投手が価値視されたのか?

2016-17シーズンのFAリリーフ投手の契約総額順のランキングは以下のとおりとなっています。

  1. アロルディス・チャップマン:5年8600万ドル
  2. ケンリー・ジャンセン:5年8000万ドル
  3. マーク・マランソン:4年6200万ドル
  4. ブレット・セシル:4年3050万ドル
  5. マイク・ダン:3年1900万ドル
  6. ブラッド・ジーグラー:2年1600万ドル
  7. 田澤純一:2年1200万ドル
  8. サンティアゴ・カシーヤ:2年1100万ドル
  9. ダニエル・ハドソン:2年1100万ドル
  10. マーク・ゼプチンスキー:2年1100万ドル
  11. ホアキン・ベノワ:1年750万ドル
  12. グレッグ・ホランド:1年700万ドル
  13. ジェリー・ブレビンス:1年650万ドル
  14. ブーン・ローガン:1年650万ドル
  15. 上原浩治:1年600万ドル

リリーフ投手の価値が高まり、本塁打を多く打てるパワーヒッターの価値が下がっていることを感じさせる契約の動きとなっています。

このような動向になったことについてスポーツ・イラストレイテッドのBEN REITER氏が4つの大きな原因を指摘しています。

それは以下のとおりとなっています。

  1. 新労使協定でぜいたく税のラインが1億9500万ドルになった
  2. 本塁打数がMLB全体で上昇した
  3. オーラウンドのプレイヤーの価値が高まった
  4. 2018-19年シーズンオフのFA市場のために支出をセーブする傾向が強まった

新たな労使協定(CBA)ではぜいたく税の基準が大幅に上昇するのではないかとの予想がありましたが、実際には1億8900万ドルから1億9500万ドルと600万ドルしか上昇しませんでした。このことにより資金力のあるチームが資金をFA市場に多く投入するのを躊躇するようになりました。

ただ、FA市場のパワーヒッターへの投資は鈍った一方で、リリーフ投手はそうではありませんでした。そのような動きを生み出したのが急激な本塁打増だったとBEN REITER氏は指摘しています。

2016年のMLBでの本塁打数は5,610本で前年比12.5%増と大幅な増加で、2000年以降では最多のものとなりました。これは本塁打を多く打った選手が増えることになり、パワーヒッターの供給が増えることになりましたので、価値が下がってしまいました。

そして各球団はパワーヒッターを獲得することよりも、失点を少なくすることを選択するチームが多くなった結果、リリーフ投手の価値が相対的に上昇し、値段も上昇したとBEN REITER氏は述べています。

またMLB全体のロースター編成のトレンドも、このオフのパワーヒッターにとっては不利な材料となりました。

カブスに代表されるように複数ポジションを守れるような選手を多く抱えることが重視されるようになっています。さらに守備や走塁のメトリクスの発達により、それらの面でマイナスが大きければ本塁打数が多いことは意味をなさないと考えられるようになりました。

そのため攻撃面だけでなく、守備と走塁でも貢献できる選手がより好まれるようになっています。

それを反映して守備力に優れ、外野の3つのポジションを守れるセスペデスは年平均で2750万ドルの契約を手にしました。

シーズン後半に失速しましたが、センターを守れる守備力とショートもカバーでき、盗塁もできることなど走塁面も評価されて、イアン・デスモンドは5年7000万ドルと総額ではエドウィン・エンカーナシオンを上回る金額を手にしています。

このようなMLB全体のトレンドがスラッガータイプには不利に働きました。

加えてMLB全体の中長期的な展望も、このオフのFA市場の動きを左右したのですが、それが2018-19シーズンオフのFA市場でした。

2018-19シーズンオフにはブライス・ハーパー、マニー・マチャド、クレイトン・カーショー、マット・ハービー、クレイグ・キンブレル、ジョシュ・ドナルドソン、アンドリュー・ミラーなどがFAとなるなど、豪華な顔ぶれが揃います。

そこで資金を投入できるように、ヤンキース、レッドソックス、カブス、ドジャースなどは一旦年俸総額を削減することを方針としていて、長期の大型契約を敬遠するチームしか残っていないシーズンオフとなってしまったことが、パワーヒッター、スラッガータイプの選手の状況をより一層厳しくしました。

まとめると、2018-19シーズンオフに向けて年俸総額を抑制しようとしているところに、新労使協定でぜいたく税のラインが大きくは上昇しなかったため、予算の制約が多くなりました。

その限られた予算の配分においては、本塁打の急増による失点を減らせるリリーフ投手が重視されることになり、供給過多気味の攻撃面に偏ったパワーヒッターが値崩れしてしまったということです。

現在は、ユーティリティ性が高い選手を多く揃えること、強力なブルペンを整備することがワールドシリーズ制覇に向けて効果的なアプローチだと考えられています。

このシーズンオフにFAとなったスラッガーにはやや酷な市場動向となりましたが、数年後にはまたこのトレンドが変わっている可能性は否定できません。

このままパワーヒッター、スラッガータイプの価値は下がり続けるのか、それとも再評価されるようになるのか。今後のMLB全体のトレンドの推移が注目されます。

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