『クラブハウスのケミストリー』セイバーメトリクスが発達するMLBで重要視されるもの

セイバーメトリクスの発達はメジャーリーグの野球を大きく変えることになりました。

打撃面も旧来からの打率、本塁打、打点、出塁率といった以外の詳細な数字が検討されるに至り、様々な角度から分析されるようになりました。

また選手への評価が打撃面にとどまらず、守備ではエラーの数、走塁も盗塁数という旧来からの数字以外に、より詳細に選手の能力が数値化されるようになりました。

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データ解析の発達とともに重要度が増しつつあるものとは?

セイバーメトリクスの発達により、選手の能力を攻撃面でなく、守備面や走塁面も含めて、多面的かつ詳細にチームの勝利に具体的に貢献しているのか、それともチームの勝利への妨げとなっているのかを評価できるようになりました。

そしてそれは選手の評価、スカウティングにも多大な影響を与えているのですが、数字には示すことができないものの、チームの成績に大きな影響を与える要素と考えられているのが「クラブハウスのケミストリー」です。

ニューヨークポストのKen Davidoff氏が“Behind MLB chemistry: How teams try to sniff out ‘bad guys’”というタイトルの記事で、そのことについて触れています。

Actually, in accordance with the dramatic evolution of statistical analysis, mastery of a player’s intangible and unquantifiable qualities may be more important than ever. Old-school detective work and, really, guesswork remain prominent as front offices try to determine not only a player’s value on the field, but also his assets and liabilities in the clubhouse.

「統計による分析が劇的に発展するに従い、選手の目に見えない、量的に測ることの出来ないクオリティが今まで以上に重要になっているかもしれない」「フィールドだけでなくクラブハウスでの財産になるか、それともリスクとなるかの判断においては、昔ながらの探偵のような調査や推測は、フロントオフィスにおいて重要なものだ」とKen Davidoff氏は述べています。

フィールドでのプレーの内容に関して、チームにとってプラスか、マイナスなのかは統計的に集計されたデータで評価できるのですが、クラブハウスでプラスなのか、それともマイナスなのかという評価においては、昔ながらの手法が重要なままだということです。

つまりMLB関係者や選手間における「その選手への評価」をより多く収集し、それをもとに自チームのカラーに合うかどうかを推測して、獲得するかどうかを判断するという方法論は昔と変わらないし、こういった面での選手の評価がより重要になりつつあるということです。

そのクラブハウスで選手がもたらす影響についてKen Davidoff氏はヤンキースのブライアン・キャッシュマンGMに取材をしています。

“I do believe that ? especially if you’re in a large market and you bring aboard someone that is a massive problem, that has a lot of issues ? those issues become everybody’s issues, and they do drain on you,” Yankees general manager Brian Cashman said. “They drain on the collective over the course of spring training and the 162-game regular season. Your teammates’ problems become your problems, which becomes an issue, a distraction and a fatigue factor that’s going to come with it.”

悪い影響を多く与える問題を抱えた選手をチームに加えると、それはみんなの問題となり、それにより疲弊してしまう。そしてそれはスプリングトレーニングからレギュラーシーズンの162試合に渡ることになり、チーム全体の問題となる、というような内容をブライアン・キャッシュマンGMは話しています。

問題がある選手を抱えることは、その選手の個人の問題にとどまらず、チーム全体に悪い影響が波及し、チーム全体が疲弊していしまう原因となるので、選手を評価する上で、人間性に関わる部分も重要になるということです。

さらにブライアン・キャッシュマンGMは、なぜそういった部分がより重要になるのかについても話しています。

ソーシャルメディアの発達がクラブハウスの雰囲気にも影響か

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以下は同じ記事からの引用です。

“I do think that prevents you from being the best you overall can be. I believe in that. Whereas 20 years ago, you can bring anybody in and survive that. Now I don’t think it’s as easy — with social media, TMZ and stuff like that. Because you’re too busy instead of talking about the game and the results and the competition, you’re too busy talking about something that’s going on off the field or not game-related constantly. It’s a pain. It’s a problem.”

以前はクラブハウスで選手たちが直接交わり、試合、成績、競争について話し合ったりしていたが、今はソーシャルメディアが発達したことにより、フィールド外の試合に関係ないことに費やす時間が多くなってしまった。それは痛手であり、問題だ、というようなことをキャッシュマンGMは指摘しています。

昔はスマホのようなものもなく、ソーシャルメディアもなかったため、同じクラブハウスにいる選手たちと交流し、野球について話すことが自然なことだったのですが、今はそうではなくなってしまったということです。

そのためチームの一体感や選手間の相互理解を深めるということを、より意識的に、より意図的にやっていかないといけない環境になっていて、それがしっかりできる選手かどうかが評価の重要な要素となっているということです。

それはどのチームのGMも認識しているため、“You won’t find a GM, no matter how analytically inclined, who doesn’t possess a strong interest in how a player interacts with others.(どんなに統計的な分析に傾倒していても、選手がどのように他の選手と関係を結ぶかに、強い関心を示さないGMを見つけることはできない)”とKen Davidoff氏は述べています。

この記事の中ではフィリーズのマット・クレンタックGMが同様の考えをもっていることが紹介されているのですが、それはドジャースのフロント陣も同様です。

ドジャースのフロントはレイズGM時代から統計的な分析で高い評価を得ていたアンドリュー・フリードマン社長、アスレチックス時代にマネーボールのビリー・ビーンGMの右腕として働いていたファルハン・ザイディGMが率いています。

この2人は当然ながらデータによる解析に長けている人物なのですが、それと同じくらい重要視しているのがクラブハウスの雰囲気です。

これを重視しているため、当時ワガママだとチーム内外で批判されていたマット・ケンプをトレード放出しています。

このシーズンオフにおいても、選手としての能力に加えて、クラブハウスでのリーダーシップで定評があったローガン・フォーサイスを獲得し、ポジションは埋まっている中でもクラブハウスでのリーダーシップを高く評価してチェイス・アトリーと再契約をしています。

MLBにおいてデータ解析で高い評価を得ている人物たちの結論が、「数字では測りきれないものがあり、それが勝敗を大きく左右する」というものは興味深いものがあります。

どれだけデータ解析が発達し、分析の技術が発展したとしても、多くの人間が集まって行われるものである限り、人間的な部分を完全に排除することができないことも、野球の面白さなのかもしれません。

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